この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 更地渡しの意味や現況渡しとの違いがわかる
- 売主側から見た更地渡しのメリット・デメリットがわかる
- 更地渡しの解体費用の負担や固定資産税への影響がわかる
- 更地渡しに向いているケースと契約前の注意点がわかる
「更地渡しで売却したいけれど、庭木やブロック塀まで撤去する必要があるの?」「更地にすると本当に売れやすくなるの?」と疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、更地渡しでどこまで解体するかに一律の決まりはなく、売買契約で定めた内容に従います。また、更地渡しによって売却しやすくなるケースはありますが、その効果は土地の条件によって異なります。
本記事では、11万件以上の解体ユーザーからの相談実績を持つ『あんしん解体業者認定協会』の監修のもと、更地渡しのメリット・デメリットや契約前の注意点、向いているケースなどを解説します。
監修者
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。近年は解体の前段にある空き家問題(管理・解体・補助金・税制)にも取材領域を広げている。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
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更地渡しとは?
更地渡しとは、土地を売買する際に土地上の建物などを解体・撤去し、建物のない状態で買主に引き渡すことです。主に古家付き土地の売却で用いられ、売買契約で定めた引き渡し日までに解体工事を行います。

更地渡しではどこまで撤去する?
更地渡しで撤去する範囲に一律の決まりはなく、売買契約の内容によって異なります。
一般的には、建物本体だけでなく基礎・物置・カーポート・庭木・庭石・ブロック塀なども撤去します。ただし買主がそのまま利用するものや、売主と買主の間で残すことを合意したものは撤去せずに引き渡す場合もあります。
そのため契約時には何を撤去し、何を残すのかを明確にしておくことが大切です。
現況渡しとの違い
更地渡しと現況渡しの違いは、土地を引き渡す時点での状態です。更地渡しは、建物などを解体・撤去した状態で引き渡します。一方で現況渡しは、売買契約時の土地の状態を基本として引き渡します。例えば建物が建っている土地を現況渡しで売買する場合は、建物を残した状態で買主に引き渡します。

更地渡しの2つのメリット
ここからは、更地渡しで土地を売却する売主側のメリットを解説します。
- 買主が見つかりやすくなる
- 建物などの不具合をめぐるトラブルを避けやすい
メリット1:買主が見つかりやすくなる
更地渡しにすると購入後の解体工事が不要なため、土地を探している買主から検討されやすくなります。新築住宅などの建築計画も立てやすく、古家付き土地と比べて売却につながりやすくなります。
メリット2:建物などの不具合をめぐるトラブルを避けやすい
建物を解体してから引き渡すことで、雨漏りやシロアリ被害など建物の不具合に加え、老朽化したブロック塀や物置など外構物をめぐる売却後のトラブルも避けやすくなります。特に古い建物は売主が把握していない不具合が見つかることもあるため、建物を残したまま売却するよりもトラブルのリスクを抑えられます。

更地渡しの3つのデメリット
一方で、更地渡しには売主側が注意したいデメリットもあります。
- 引き渡しまでに解体工事を終える必要がある
- 解体工事で追加費用が発生する可能性がある
- 解体範囲などをめぐってトラブルが発生する可能性がある
デメリット1:引き渡しまでに解体工事を終える必要がある
更地渡しでは、買主への引き渡しまでに建物を解体して更地の状態にする必要があります。そのため売却活動と並行して解体工事の準備や業者の手配を進めなければならず、売却スケジュールに余裕を持つことが大切です。また、解体工事にはまとまった費用がかかるため、売却価格や資金計画も含めて事前に検討しておく必要があります。
デメリット2:解体工事で追加費用が発生する可能性がある
更地渡しでは、解体工事の途中で想定外のものが見つかると追加の撤去費用が発生する可能性があります。例えばアスベストや古い基礎・浄化槽などの地中埋設物のほか、見積もり時には把握できなかった残置物が見つかるケースです。こうした追加工事によって、当初の見積もりより解体費用が高くなることがあります。
運営者 稲垣実際に以下の見積もりでは残置物の撤去が追加工事となり、13万5,000円の費用が発生しました。

デメリット3:解体範囲などをめぐってトラブルが発生する可能性がある
更地渡しには明確な定義がないため、契約時に解体後の状態を具体的に決めておかないと引き渡し時に買主との認識が食い違う可能性があります。例えば整地の仕上がりや残すものの扱いなどについて意見が分かれる場合があります。
【専門家に聞いた】更地渡しの解体費用は誰が負担する?
『あんしん解体業者認定協会』で11万件以上の相談対応実績を持つ中野理事に、更地渡しの解体費用の負担について伺いました。
売主負担のケースが多い
一般的に更地渡しの解体費用は売主が負担します。ただし、契約内容によっては買主が負担する場合もあります。
また、売主が解体費用を負担する場合でも、その費用を考慮して売却価格を設定することがあります。つまり解体費用を売主が支払うものの、売却価格に上乗せする形で買主が実質的に負担するケースもあります。
理事 中野達也実際の相談事例を見ると、私の体感では7〜8割程度が売主負担です。残りは買主が解体することを条件に価格を調整するなど、個別の契約内容に応じて決まります。
なお、古家の解体費用については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

更地にすると固定資産税はどうなる?
『あんしん解体業者認定協会』の中野理事は、建物を解体する際は解体後の固定資産税についても考慮しておくことが大切だと話します。
固定資産税は平均3~4倍程度になる
理事 中野達也建物を解体して更地にすると、固定資産税は平均3~4倍程度に上がります。ただし、実際の税額は土地の評価額・面積・現在の課税標準額などによって異なるため、増額幅は一律ではありません。
これは、建物を解体すると原則として住宅用地特例が適用されなくなるためです。住宅用地特例が適用されている土地では、固定資産税の課税標準が200m2以下の部分は評価額の6分の1、200m2を超える部分は3分の1に軽減されています。

建物を解体して更地にすると住宅用地特例が適用されなくなり、原則として商業地等として扱われます。商業地等には負担調整措置があるため、課税標準額は評価額の70%が上限です。こうした仕組みにより、住宅用地特例が適用されていた土地と比べて、固定資産税が3~4倍程度に上がるケースがあります。
理事 中野達也例えば200m2以下の土地を更地にした場合、住宅用地特例による6分の1の軽減がなくなり、評価額の70%が上限となります。
理事 中野達也税額の調整などを考慮せずに計算すると「70% ÷ 6分の1 = 4.2倍」で、固定資産税は最大で約4.2倍になる計算です。
出典:地方税法
第三百四十九条の三の二 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十一項を除く。)の規定の適用を受けるもの並びに空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等(同法第五条に規定する所有者等をいう。以下この項において同じ。)に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条及び前条第十一項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
2 住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条、前条第十一項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
一 住宅用地でその面積が二百平方メートル以下であるもの 当該住宅用地
二 住宅用地でその面積が二百平方メートルを超えるもの 当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下この条及び第三百八十四条第一項において「住居の数」という。)で除して得た面積が二百平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地、当該除して得た面積が二百平方メートルを超えるものにあつては二百平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地(中略)
四 商業地等 宅地等のうち住宅用地以外の宅地及び宅地比準土地(宅地以外の土地で当該土地に対して課する当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき価格が、当該土地とその状況が類似する宅地の固定資産税の課税標準とされる価格に比準する価格により決定されたものをいう。)をいう。
(中略)
5 商業地等のうち当該商業地等の当該年度の負担水準が〇・七を超えるものに係る令和六年度から令和八年度までの各年度分の固定資産税の額は、第一項の規定にかかわらず、当該商業地等に係る当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき価格に十分の七を乗じて得た額(当該商業地等が当該年度分の固定資産税について第三百四十九条の三又は附則第十五条から第十五条の三までの規定の適用を受ける商業地等であるときは、当該額にこれらの規定に定める率を乗じて得た額)を当該商業地等に係る当該年度分の固定資産税の課税標準となるべき額とした場合における固定資産税額(以下「商業地等調整固定資産税額」という。)とする。
固定資産税は1月1日時点の状態で決まる
建物を解体して更地にした場合は原則として翌年度から住宅用地特例が適用されなくなり、固定資産税が上がります。固定資産税は、毎年1月1日時点の土地の状態を基準に課税されるためです。
例えば2026年中に建物を解体して更地にした場合、2027年1月1日時点で更地となっているため、原則として2027年度分から住宅用地特例が適用されなくなります。そのため、2027年度分の固定資産税の負担を抑えたい場合は、2027年1月1日時点で建物が残っている状態にしておく必要があります。

固定資産税については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

更地渡しの契約前の3つの注意点
ここでは、更地渡しの契約前に押さえておきたい3つの注意点を解説します。
- 契約不適合責任の範囲を確認する
- 解体範囲と整地の仕上がりを明確にする
- 契約解除の条件と解体のタイミングを確認する
注意点1:契約不適合責任の範囲を確認する
契約不適合責任とは、引き渡された土地や建物が契約で定めた内容と異なる場合に、売主が買主に対して負う責任のことです。例えば更地にして引き渡した後でも、地中埋設物や土壌など土地に関する問題が見つかると売主が責任を問われる可能性があります。
そのため、契約時には「どのような問題を売主の責任とするか」「責任を負う期間をいつまでとするか」を明確にしておきましょう。特に地中埋設物は新築工事の際に見つかることも多いため、契約時に撤去費用の負担などを具体的に決めておくことが大切です。
出典:民法
第五百六十二条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
引用:民法|e-Gov法令検索
注意点2:解体範囲と整地の仕上がりを明確にする
買主と更地の状態について認識が合っていないと、引き渡し前に追加工事が必要になったりトラブルにつながったりする可能性があります。そのため契約時に、解体する範囲や解体後の仕上がりを具体的に決めておくことが大切です。
運営者 稲垣例えば「ブロック塀はどこまで撤去するのか」「庭木や物置は残すのか」「整地方法は何にするか」など細かい部分まで確認しておきましょう。
整地の種類については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

注意点3:契約解除の条件と解体のタイミングを確認する
買主が住宅ローンを利用する場合、融資が承認されなければ売買契約を解除できる「ローン特約」が付いていることがあります。融資の承認前に解体すると、契約が解除された場合でも解体費用だけが売主の負担として残る可能性があります。売買契約の解除条件を確認し、解体を始めるタイミングを決めましょう。

更地渡しに向いている4つのケース
建物付きでの売却が難しい場合は、更地渡しを選択することで売却しやすくなる可能性があります。特に以下の4つのケースでは、更地渡しを検討するとよいでしょう。
- 建物の老朽化が進み、居住や活用が難しい場合
- 事故や事件があった場合
- 立地条件が悪い場合
- 買主が新築を希望している場合
ケース1:建物の老朽化が進み、居住や活用が難しい場合
築年数が古く、雨漏り・腐食・シロアリ被害などによって建物の状態が悪い場合は更地渡しが向いています。修繕やリフォームに高額な費用がかかる建物は買主にとっても活用しにくいため、建物を残したまま売却するより土地として売り出したほうが検討されやすくなる可能性があります。
老朽化した実家の解体事例

Aさんは埼玉県内にある築45年、延床面積46坪の木造2階建ての実家を相続しました。相続後は数年間維持管理を続けていましたが、老朽化に伴い修繕や草刈りなどの負担が増えたため売却を検討しました。しかし建物付きでは購入後の解体が必要で、買い手がなかなか見つかりません。そこで約220万円をかけて解体し、更地として売り出したところ、約4ヶ月で1,700万円で売却できました。
ケース2:事故や事件があった場合
事故や事件などがあった物件は、建物が残っていることで心理的な抵抗を感じる買主もいます。建物を解体して更地にすることで、土地として検討する買主を見つけやすくなる可能性があります。ただし解体して更地にしても、事故や事件などの告知義務がなくなるわけではありません。
ケース3:立地条件が悪い場合
「駅から遠い」「周辺に商業施設が少ない」など、立地条件によって買主が見つかりにくい場合は更地渡しが有効です。建物を残したままでは買主が購入後の解体費用まで負担する必要がありますが、更地にすることで土地そのものを検討してもらいやすくなります。ただし解体によって立地条件が改善するわけではないため、費用をかけることで売却につながるかを慎重に判断しましょう。
高台にある古家の解体事例

Bさんは神奈川県内の高台にある築50年、延床面積約38坪の木造2階建て住宅の売却を検討していました。敷地には既存不適格の擁壁があり、高台という立地も含めて買主が見つかるか不安を感じていました。擁壁の解体には数百万円かかる可能性があったため、まずは約180万円をかけて建物だけを解体し、更地として売り出しました。その結果、約3ヶ月で買主が見つかり、1,500万円で売却。擁壁は残したまま売却できたため、追加の解体費用もかかりませんでした。
ケース4:買主が新築を希望している場合
買主が購入後に新築住宅を建てることを希望している場合は、更地渡しが向いています。建物が残っていると解体してから新築工事を始める必要がありますが、更地で引き渡せば購入後すぐに建築計画を進められます。特に古家を利用せず土地として購入したい買主にとっては、更地のほうが希望する住宅を建てやすく、売主にとっても購入希望者の選択肢を広げられます。
【FAQ】更地渡しに関するよくある質問
更地渡しと現況渡し、どちらで売る方が得ですか?
一概にどちらが得とは言えません。
ただし売却を急いでいないのであれば、まずは解体せずに売り出してみるのも一つの方法です。買主が決まってから更地渡しにすれば、売れる前に解体してしまうリスクを抑えられます。
更地渡しでは、いつ解体しますか?
一般的には売買契約を結んだ後、引き渡しまでの間に解体します。
売却前に解体すると売れないまま更地の状態が続き、固定資産税の負担が増える可能性があるためです。
まとめ
更地渡しでは、解体工事の品質・費用・工期がその後の売却にも影響します。追加費用をできるだけ防ぎ、契約どおりの状態で引き渡すためには更地渡しの実績がある解体業者に依頼することが大切です。
解体費用や対応範囲は業者によって異なるため、複数社から見積もりを取り、内容を比較したうえで依頼先を決めましょう。信頼できる業者を選ぶことが更地渡しをスムーズに進める第一歩です。
