この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 解体工事で家が揺れる原因と、特に揺れが大きくなりやすいタイミングがわかる
- 解体工事の振動による周辺住宅への影響や、振動規制法による基準がわかる
- 揺れがひどいときや自宅に不具合が生じたときの具体的な対処法がわかる
「隣の家で解体工事が始まってから、地震のように家が揺れて落ち着かない」「このまま自宅にヒビが入ったり、壊れたりするのでは?」と、不安を感じてこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、解体工事で近隣の家が揺れることは珍しくなく、その多くは基礎を撤去する際の振動です。通常の解体工事の振動だけで、近隣の家が倒壊するような大きな損傷が生じることは基本的にありません。
ただし、揺れがひどい場合や長時間続く場合は放置せず状況を記録しておきましょう。解体工事の振動や作業時間には「振動規制法」による基準が設けられているため、記録をもとに施工業者や自治体への相談も可能です。
記事では、11万件以上の解体工事に関する相談実績を持つ『あんしん解体業者認定協会』の監修のもと、揺れが発生する原因やピークの時期、法律上の基準、被害を感じたときの対処法まで解説します。
監修者
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。近年は解体の前段にある空き家問題(管理・解体・補助金・税制)にも取材領域を広げている。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
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解体工事で揺れが発生するのはなぜ?
『めざまし8』をはじめ各種メディアへの出演実績を持つ「あんしん解体業者認定協会」の中野理事に、解体工事で揺れが発生する原因や特に揺れが大きくなる作業について伺いました。
理事 中野達也解体工事で揺れが発生するのは、重機や工具による破砕・掘削の衝撃が地盤に伝わるためです。
揺れの主な原因は「基礎の撤去」
解体工事の中でも、特に揺れを感じやすいのが基礎の撤去です。基礎コンクリートは地盤と接しているため、重機に取り付けた「ブレーカー」というアタッチメントで破砕する際の衝撃が直接地盤に伝わります。地上部分の解体よりも大きな力が地盤に加わるため、周囲に振動が広がりやすくなります。

理事 中野達也特に鉄筋コンクリート製の厚い基礎や地中深くまで設けられた基礎は撤去に強い力が必要なため、振動が発生しやすくなります。
また、基礎解体の一環で行う杭抜きも振動が発生しやすい工程です。杭は建物を支えるため地中深くまで打ち込まれた柱状の部材で、解体後に引き抜いて撤去することがあります。杭を抜く際は周囲の土をほぐしたり引き上げたりするため、大きな力が加わり、地盤を通じて周囲に揺れが伝わります。

その他の要因
基礎の解体以外にも、次のような作業によって振動が発生・伝達します。
- 重機の走行
建物の解体作業中や資材・廃材の搬出時に大型重機が敷地内を走行すると、車体の重量や走行時の衝撃によって振動が発生します。 - 重機による躯体解体
柱や壁などを重機で取り壊す際は、部材をつかむ・引き倒す・破砕するといった動作によって振動が発生します。 - 地中の埋設物の撤去
配管や地中梁などを撤去する際は周囲の土を掘り起こしたり、埋設物を切断・破砕したりすることで振動が発生します。
解体工事の揺れで家が壊れることはある?
続いて、中野理事に解体工事の揺れによる周辺住宅への影響について伺いました。
理事 中野達也私の経験上、通常の解体工事で発生する振動だけで近隣住宅が倒壊するほどの損傷が生じるケースは1度もありません。
地震のように建物全体を大きく揺らすものとは異なり、解体工事の振動は作業による衝撃が地盤を通じて断続的に伝わるため、建物への負荷は限定的です。
ただし、もともと老朽化が進んでいる場合は振動をきっかけにヒビ割れが広がったり、外壁やタイルが剥がれたりする可能性があります。特に築年数が古い住宅では、工事前に外壁や基礎などの状態を写真で記録しておくと工事による影響を確認しやすくなります。
解体工事の揺れで自宅の外壁にヒビが入った事例

Aさん宅は築50年以上で、外壁には塗膜の劣化が見られていました。隣家の解体工事による影響が心配だったため、事前に外壁の状態を写真に残しておきました。工事後、玄関ドア横の外壁に縦方向のヒビ割れを発見。Aさんは施工業者に工事前の写真を見せ、工事後の状態と比較してもらいました。経年劣化もあったため振動だけが原因とは断定できませんでしたが、話し合いの結果、補修費用の一部を業者が負担することで合意しました。
理事 中野達也このように工事前に建物の状態を記録しておくと、工事後の変化を確認し、原因や補修費用について話し合う際に役立ちます。
解体工事の揺れのピーク
解体工事の揺れは、一般的な木造住宅では着工から5~7日目頃がピークです。建物本体の解体が終わり、基礎の撤去に入る時期にあたります。
| 日数 | 主な工程 |
|---|---|
| 1日目 | 足場・養生 |
| 2~4日目 | 内装解体 |
| 3~5日目 | 躯体解体 |
| 5~7日目 | 基礎解体 |
| 7~9日目 | 整地・清掃 |
基礎の撤去にかかる工期は、一般的な木造住宅で2~3日程度です。ただし建物の構造・規模・基礎の状態によって工期は異なるため、揺れのピークも現場によって前後します。
解体工事の揺れを感じやすい3つの条件
解体工事の揺れは、建物の構造・地盤・解体現場との距離などによって感じ方が異なります。ここでは、揺れを感じやすくなる3つの条件を解説します。
- 解体する建物の規模が大きい
- 地盤が柔らかい
- 自宅と解体現場の距離が近い
条件1:解体する建物の規模が大きい
解体する建物の規模が大きいほど作業量が増えるため、周囲に振動が伝わりやすくなります。例えば延床面積が30坪程度の一般的な木造住宅より、数百坪に及ぶマンションなどは大型重機を使用することが多く、周囲に伝わる振動も大きくなる傾向があります。

条件2:地盤が柔らかい
地盤が柔らかい場所では解体工事の振動が遠くまで伝わりやすく、現場から離れた住宅でも揺れを感じることがあります。特に粘土質の地盤では振動が波のように広がりやすい傾向があります。
一方、締まった砂礫層では振動が遠くまで広がりにくく、短い時間で伝わる傾向があります。このように、同じ解体工事でも地盤の性質によって振動の伝わり方は異なります。
条件3:自宅と解体現場の距離が近い
自宅が解体現場に近いほど、振動の影響を受けやすくなります。例えば解体現場から10m以内の住宅では、揺れを感じることがあります。ただし20~30m程度離れている場合でも、地盤の性質や解体方法によっては振動が伝わることがあります。

振動規制法による規制
解体工事などの建設作業による振動には、「振動規制法」による規制があります。著しい振動を発生させる「特定建設作業」が対象で、敷地境界線における振動の基準値は75dB以下です。
また、振動の大きさだけでなく、作業時間や休日の作業などにも規制があります。
第1号区域(住宅地など)では午前7時〜午後7時の時間帯に作業でき、1日の作業時間は10時間以内、連続作業は6日以内とされています。第2号区域(商業地域など)では午前6時〜午後10時、1日14時間以内、連続6日以内です。いずれの区域も、日曜・休日の作業は原則として禁止されています。
| 振動の制限項目 | 第1号地域(住宅地など)※ | 第2号地域(商業地域など)※ |
|---|---|---|
| 作業可能時間帯 | 午前7時〜午後7時 | 午前6時〜午後10時 |
| 1日の作業時間 | 10時間以内 | 14時間以内 |
| 連続作業期間 | 同一場所で6日以内 | 同一場所で6日以内 |
| 日曜休日の作業 | 原則として禁止 | 原則として禁止 |
運営者 稲垣自分の敷地や近隣がどの区域に該当するかは、各自治体の公式ホームページの「環境保全」や「都市計画」に関するページで確認できます。
出典:振動規制法
第十五条 市町村長は、指定地域内において行われる特定建設作業に伴つて発生する振動が環境省令で定める基準に適合しないことによりその特定建設作業の場所の周辺の生活環境が著しく損なわれると認めるときは、当該建設工事を施工する者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な限度において、振動の防止の方法を改善し、又は特定建設作業の作業時間を変更すべきことを勧告することができる。
解体工事の揺れがひどいときの対処法
ここでは、解体工事の揺れがひどいときの対処法を3つのステップでご紹介します。
- 記録を残す
- 施主・解体業者に伝える
- 自治体に相談する
ステップ1:記録を残す
揺れが発生したら、日時・揺れの程度・続いた時間・そのときの作業内容などを記録します。ヒビ割れ・傾き・ドアや窓の建て付け不良など、建物に異変が見られた場合は写真や動画に残し、工事前の写真があれば比較できるよう保管しておきましょう。揺れの大きさを客観的に確認したい場合は、専門業者に振動測定を依頼する方法もあります。
ステップ2:施主・解体業者に伝える
記録した内容をもとに、まずは施主や解体業者へ揺れがひどいことを伝えましょう。連絡先が分からない場合は現場に設置されている看板を確認し、施工業者を特定します。

そのうえで、作業時間の調整や振動の大きい作業方法の見直しなどの対策を相談しましょう。伝える際は「朝8時頃の作業で揺れを感じるため、少し時間をずらしていただけませんか」など、困っている状況と要望を具体的に伝えることが大切です。
運営者 稲垣交渉の際は感情的にならず、記録した内容をもとに相談することで、トラブルを避けながら対応してもらいやすくなります。
ステップ3:自治体に相談する
業者に伝えても改善されない場合や、著しい振動が続く場合は自治体の担当窓口(環境保全課など)に相談しましょう。相談する際は、揺れの記録や被害箇所の写真・動画、施工業者が分かる資料を揃えておきましょう。また、工事前の写真や業者に相談した日時・回答内容なども用意しておくと状況を説明しやすくなります。
自治体は相談内容を確認したうえで必要に応じて現場の状況を調査し、業者への改善勧告や作業の一時停止を求めることがあります。
解体工事による揺れで被害を受けたときの対応
解体工事によって家にヒビ割れや建て付けの不具合などが生じた場合は、工事との因果関係を確認したうえで、施工業者と補修や損害賠償について話し合う必要があります。ここでは、実際に建物への被害が生じた場合の対応を3つのステップで解説します。
- 工事との因果関係を確認する
- 補修や損害賠償について協議する
- 専門機関へ相談する
ステップ1:工事との因果関係を確認する
まずはヒビ割れや建て付けの不具合などが、解体工事によって生じたものかを確認します。工事前の写真や家屋調査の記録があれば前後の状態を比較でき、工事による被害かどうかを判断する資料になります。
一方で工事前の記録がなければ、不具合が解体工事で生じたものかを判断するのは容易ではありません。建物の損傷状況などから原因を推測できる場合もありますが、工事との因果関係まで明らかにするには専門的な調査が必要です。判断が難しい場合は、施工業者ではなく建築士など第三者への調査を依頼しましょう。
ステップ2:補修や損害賠償について協議する
解体工事が原因と考えられる不具合は、まず施工業者に状況を伝えましょう。工事による被害と認められ、施工業者に過失がある場合は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償を請求できる可能性があります。補修方法や費用負担に加え、ヒビ割れなどが再発した際の再補修についても確認しておきましょう。
運営者 稲垣後のトラブルを防ぐため、話し合った内容は書面に残しておくことが大切です。
出典:民法
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:民法|e-Gov法令検索
ステップ3:専門機関へ相談する
施工業者と話し合っても解決しない場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。「損害賠償を求められるか」「施工業者とどのように話し合えばよいか」など今後の対応について助言を受けられます。なお、自治体によっては無料法律相談を利用できるほか、日本司法支援センターの「法テラス」などでも法律相談を受け付けています。
解体業者に頼める3つの振動対策
解体工事では、作業方法や時間帯を工夫することで近隣への振動を抑えられる場合があります。ここでは、解体業者に頼める3つの振動対策をご紹介します。
- 作業時間を調節する
- 近隣への事前説明を行う
- 低振動の工法を採用する
対策1:作業時間を調節する
振動の大きい作業は、近隣住民への影響を考慮して作業時間を調節しましょう。特に早朝や夜間の作業は避け、日中に行うことが基本です。また、振動を伴う作業を特定の曜日に集中させない、複数の重機を同時に稼働させないなど、工程を調整することも振動の抑制につながります。特定建設作業に該当する場合は、振動規制法などで定められた作業時間や休日の規制にも従う必要があります。
対策2:近隣への事前説明を行う
解体工事の内容・期間・振動が発生する可能性のある作業について、近隣住民に説明しておきましょう。工事全体の予定だけでなく、基礎の撤去など振動が大きくなりやすい作業は工程ごとに実施する時期や時間帯も伝えておくと丁寧です。
近隣挨拶については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

対策3:低振動の工法を採用する
振動の発生を抑えるには、低振動型の建設機械や工法を選ぶことが有効です。例えば油圧圧砕機などを使用したり、住宅の近くでは小型の建設機械を選んだりすることで周辺への振動を抑えられます。また、重機を住宅からできるだけ離れた位置で使用する、急発進や急操作を避ける、工事用車両は低速で走行するなど操作方法を工夫するだけでも振動を抑えられます。
さらに現場の状況によっては、重機を使わずに人の手で建物を解体する「手壊し解体」を取り入れる方法もあります。重機による振動を抑えやすい一方で作業に時間がかかるため、周辺環境や建物の状況に応じて工法を選択することが大切です。

【FAQ】解体工事の揺れに関するよくある質問
解体工事の揺れがひどい場合、工事を止めてもらえますか?
解体工事の揺れがひどい場合、工事を止めてもらえる可能性はあります。
振動規制法などの基準を超えている場合は自治体が施工業者に改善を求め、状況によっては作業の一時停止などの措置が取られることがあります。
解体工事は土日も行われますか?
解体工事は土曜日は行われることが多い一方、日曜・祝日は休工とする業者が一般的です。
ただし地域によって作業できる曜日や時間が異なるため、詳しくは自治体のルールを確認しましょう。
解体工事の土日・祝日の作業ルールについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

解体工事の騒音がうるさい場合、どうすればいいですか?
まず施主や解体業者に、「朝8時以前の作業は控えてほしい」「13時〜15時は子どもの昼寝時間のため、大きな音が出る作業を避けてほしい」など具体的な要望を伝えましょう。
直接伝えにくい場合や申し入れても改善されない場合は、工事現場のある市区町村の環境担当部署などに相談します。
騒音の対処法については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

まとめ
解体工事で揺れを感じても、すぐに「家が壊れるのでは」と心配する必要はありません。
ただし揺れが長時間続いたり、これまでになかった建物の不具合が見つかったりした場合は放置せずに対応しましょう。工事との関係を後から確認できるよう、気づいた時点で記録を残し、施工業者にも早めに伝えておくことが大切です。
運営者 稲垣トラブルに発展しそうな場合は自分だけで解決しようとせず、必要に応じて専門家や自治体など第三者に相談することも検討しましょう。
