この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 雪の中で解体工事を行う際のリスクや注意点が具体的にわかる
- 雪の中での解体工事の流れと追加費用が把握できる
- 冬でも解体を今すぐ進めるべきケースと、待ってもよいケースの判断基準がわかる
「雪が降っている中でも解体工事はできるのか」「雪の中での工事は危険ではないか」「追加費用はかかるのか」など、雪が降る時期の解体工事に不安を感じていませんか。
雪の日でも解体工事は可能ですが、通常とは異なるリスクや追加費用が発生するため、状況に応じた判断が重要です。特に、長年放置された空き家は雪による倒壊のリスクが高いため、時期を待たずに早めの解体が求められます。
この記事では、雪の中で解体工事を行う流れや注意点、適切な時期の判断基準について分かりやすく解説します。
監修者
現場解説一般社団法人あんしん解体業者認定協会 お客様窓口 マネージャー
辰巳 浩晃(たつみ ひろあき)
解体工事のご相談・現場調査の立会い・見積書説明など、お客様窓口としてお客様の不安解消と工事サポートに注力するマネージャー。「同じ解体でも、ひとつとして同じ現場はない」を信条に、一件一件の個性を大切にしながら、お客様が晴れやかな気持ちで工事当日を迎えられるよう伴走。お持ちの見積書が適正かどうかも、数分のお電話で判断できるよう、第三者目線でのアドバイスを心がけている。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
酒巻 久未子(さかまき くみこ)
「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」
数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。
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雪の中でも解体工事は可能

雪が降る日でも、解体工事は実施できます。
建物の老朽化が進み、雪の重みで倒壊する可能性が高い場合は、被害が出る前に速やかに着工すべきです。
雪の中で解体工事をする場合の注意点
積雪や悪天候の中での解体工事は、通常時には起こりにくい事故やトラブルが発生しやすくなります。
- 建物の崩壊リスクが高まる
凍結と融解の繰り返しによって建物の強度が低下し、解体中の崩れ方が予測しにくくなります。その結果、建物が想定外の方向へ崩れ、隣接する建物や構造物を損傷するリスクがあります。 - 重機の操作ミスが起こりやすい
寒冷環境では重機の操作性が低下し、事故リスクが高まります。凍結した路面ではキャタピラ※が滑りやすくなるため、重機が制御を失って塀や電柱へ衝突する恐れがあります。
また、低温で油圧オイルが硬くなることで細かな操作が難しくなり、作業効率の低下にもつながります。 - 廃材が雪に埋もれる危険性がある
解体した木材や金属片などは、通常であれば目視で確認しやすいですが、冬場は雪に埋もれて見えなくなります。踏み抜きや転倒、ケガの原因になりやすく、現場内の安全確保が難しくなります。 - インフラ破損や復旧トラブルが起こりやすい
積雪によって地中設備の位置が分かりにくくなり、ガス管や水道管、境界杭を誤って破損するケースがあります。
さらに、雪に覆われて状況確認が難しいため、責任の所在を巡るトラブルに発展しやすく、復旧までの間は近隣住民に影響が出る可能性もあります。 - 作業員の事故や工期遅延につながりやすい
厳しい作業環境により、安全管理と工程管理の難易度が上がります。足場や昇降設備の凍結によって滑落事故のリスクが高まり、墜落・転落につながる恐れがあります。
また雪や氷の除去が必要となるため、工期が予定より大幅に遅れる場合があります。 - 基礎確認や整地不良が起こりやすい
雪が積もると基礎部分や地盤の状態が見えにくくなり、撤去作業や整地作業がスムーズに進みません。基礎の取り残しや地盤確認の遅れにつながる場合があります。
また、雪と土が混ざった状態で整地すると雪解け後に地面が凸凹になりやすく、土地の状態が安定するまで時間がかかる可能性があります。次の土地活用や新築工事に影響するかもしれないため注意が必要です。
※キャタピラ
重機の一部で、タイヤの代わりについている帯状の足回りを指す。
雪の日に行われる解体工事のポイント
ここからは『あんしん解体業者認定協会』で11万件以上の相談対応実績を持つ辰巳マネージャーの経験談を交えながら、雪の日に行われる解体工事のポイントを解説します。
現場解説
一般社団法人あんしん解体業者認定協会 お客様窓口 マネージャー
辰巳 浩晃 (たつみ ひろあき)
解体工事のご相談・現場調査の立会い・見積書説明など、お客様窓口としてお客様の不安解消と工事サポートに注力するマネージャー。「同じ解体でも、ひとつとして同じ現場はない」を信条に、一件一件の個性を大切にしながら、お客様が晴れやかな気持ちで工事当日を迎えられるよう伴走。お持ちの見積書が適正かどうかも、数分のお電話で判断できるよう、第三者目線でのアドバイスを心がけている。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
マネージャー 辰巳浩晃雪が降る地域のお客様から、「雪の重みで空き家が崩れそうなので、できるだけ早く解体したい」などのご相談を多くいただきます。実際に、10年放置した空き家の瓦が落下したと市から指摘を受けたため、急いで解体したケースもあります。
マネージャー 辰巳浩晃しかし、現場では12月~2月頃に問い合わせがあっても、着工は4月以降に調整する場合がほとんどです。安全面のリスクが高いため、急ぐ必要がない限り、雪が降る時期の解体工事は避けるのが一般的です。
実際にあった珍しいケース
山形県で11月上旬に解体工事を開始したところ、想定よりも早く雪が降ったケースがありました。
マネージャー 辰巳浩晃工事中だったため建物本体だけを急いで取り壊し、基礎の部分は雪解け後に持ち越しとなりました。結果、解体工事が完了したのは翌年のゴールデンウィーク頃でした。
このように、雪の影響で工期が大幅に延びるケースは珍しくありません。そのため、雪が降り始めてから「すぐに解体してほしい」と依頼があっても、雪のない時期まで着工を見送る業者が多いのが実情です。
雪が降る地域で空き家を放置するリスク
ここまで、雪の中でも解体工事は可能ですが、その際の注意点やポイントについて解説しました。
ここでは、雪が降る地域で空き家を放置する危険性について解説します。
建物が倒壊するリスク
寒冷地では、屋根に積もった雪の重さによって建物が耐えきれず倒壊する恐れがあります。
特に空き家は雪下ろしなどの管理が行われないため、倒壊するリスクが高まります。
2026年の新潟県では、積雪の重みによる建物の倒壊で、死亡事故が2件報告されています。
柏崎市では2月3日、雪の重みで倒壊した車庫の下敷きになった54歳の男性が死亡。上越市でも68歳の男性が住宅の下敷きになり死亡している。
引用:空き家・アーケード…雪の重みで“建物倒壊”相次ぐ 住民・業者は除雪作業に疲弊「もうヘトヘト」|FNNプライムオンライン
また、令和6年11月1日から令和7年4月30日までの冬季期間中、雪の影響により全国で多くの住宅被害が報告されています。被害は「全壊」「半壊」「一部破損」に区分され、合計446件にのぼりました。
▼令和6年度冬季(11月~4月)の雪害による住宅被害件数
| 被害区分 | 件数 |
|---|---|
| 全壊 | 8件 |
| 半壊 | 23件 |
| 一部破損 | 415件 |
| 合計 | 446件 |
損害賠償を請求されるリスク
建物の管理が不十分である場合に事故が発生すると、所有者は過失の有無にかかわらず賠償責任を負う可能性があります。
万が一、放置された空き家が倒壊し、近隣家屋の損壊や通行人への負傷を招いた場合は民法第717条に基づく「工作物責任」が問われます。この責任は管理不備が認められる限り免れず、結果として損害賠償につながる恐れがあります。
出典:民法
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。引用:民法|e-Gov法令検索
※これらの法的な見解は一般的なものであり、個別ケースの判断は弁護士等の専門家にご相談ください
行政代執行が実施されるリスク
空き家を放置し、積雪により倒壊の危険が高まると、自治体が「行政代執行」により強制的に解体を実施します。
行政代執行で建物を解体された場合、解体費用の支払い義務が免除されるわけではなく、原則として所有者に全額請求されます。
自治体主導で解体業者が選定されるため、自ら比較・契約する場合より費用が高くなりやすく、数十万円規模の差が生じるケースがあります。代執行費用は税金と同様に扱われ、未払いの場合は財産の差し押さえに進む可能性があります。
出典:行政代執行法
第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
引用:行政代執行法|e-Gov法令検索
2026年2月に青森市では、雪の重みで一部が崩れ、倒壊の危険性が増した空き家に対し、行政代執行よりも緊急性のある「緊急代執行」による解体が実施されました。

そちらについては、次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

雪の日の解体工事の流れと費用
解体工事の流れ
無雪期と比較し、除雪や凍結対策の工程が追加されるため工事の進捗は緩やかになります。具体的な流れは以下の通りです。
現場除雪と搬走路の確保

毎朝、作業開始前に敷地内および周辺道路の除雪を実施します。重機やダンプカーが安全に通行できない状態では、資材の運び出しができないため、この作業に数時間を要する場合があります。
足場設置と防雪養生
建物の周囲に足場を組み、防音・防塵のための養生シートを設置します。積雪期はシートに付着した雪の重みで足場が歪む危険があるため、支柱の補強や雪が溜まりにくいメッシュタイプのシートを選定など状況に適した対策を行います。
手作業による内装解体
重機を投入する前に、建物内部で作業員が壁紙、断熱材、畳、建具などを分別・撤去します。外壁が残っているうちに内部作業を進めれば、吹雪による視界不良や作業員の体温低下を抑えやすくなります。
重機による建物本体の解体

屋根から順に、重機で建物の構造部分を解体していきます。凍結した屋根材は滑りやすく、周囲へ飛散する危険も高まるため、散水で粉じんを抑えながら慎重に取り壊します。路面には鉄板を敷き、重機の転倒やスリップを防ぎます。
廃棄物の分別・搬出

解体で発生した廃材を、木くず、鉄くず、コンクリート殻などに分別し、ダンプカーで処分場へ運びます。雪道では運搬車両の走行速度が制限されるほか、処分場側の除雪状況により搬出作業が中断される事態も想定されます。
地盤の粗整地

建物撤去後、基礎コンクリートを取り除き、地面を平らにならします。
地面が凍結・積雪している状態では、細かな整地が困難なため、冬季は「粗整地(おおまかな整地)」に留め、融雪後に改めて仕上げの整地を行う二段階の工程を採る場合が多いです。
追加費用の内訳
積雪時の現場では、安全対策や作業効率の維持に追加対応が必要なため、費用が1~3割ほど上乗せされるケースがあります。
主な内訳は以下のとおりです。
- 除雪費
敷地内に積もった雪を、重機を使って除去するための費用。 - 運搬費
敷地内に雪を置けない場合、指定された雪捨て場まで搬出するための費用。 - 人件費
厳しい作業環境に対応するための手当や、作業員を増員する分の人件費。 - 防寒・養生強化費
足場への防雪シート設置や、凍結防止のための暖房器具の使用・維持にかかる費用。
なお、これらの項目は見積書で別途設けず、諸経費や管理費などに含まれる場合が多いです。
解体の時期を冬か春、どちらを選ぶべき?
解体の時期のメリット・デメリットを比較
解体工事の時期に迷った場合は、以下の比較表を参考にしてください。
ご自身の状況に当てはめながら、違いや特徴を整理する目安として活用できます。
| 判断基準 | 冬の解体(12月~3月頃) | 春以降の解体(3月~11月頃) |
|---|---|---|
| コスト | △ 除雪費等の追加費用が発生しやすい | 〇 追加費用は少ない傾向 |
| 工期 | △ 天候により中断・延長する可能性がある | 〇 比較的スケジュール通り進みやすい |
| 業者選定 | 〇 優良業者を確保しやすい | △ 繁忙期で予約が取りにくい |
| 近隣への影響 | 〇 雪が粉塵の飛散を抑制 | △ 散水等の対策が必要 |
| 所有リスク | 〇 建物の倒壊や特定空家に指定されるリスクを回避 | △ 待機中に倒壊等のリスクが増大 |
【ケース別】解体時期の判断ポイント
今すぐ検討すべきケース
- 倒壊の危険性が非常に高い場合
「隣人から危険を指摘されている」「建物が明らかに傾いている」など、物理的な危険が迫っている場合は安全を最優先すべきです。 - 自治体から「管理不全空家」や「特定空家」に指定されている場合
行政代執行のリスクを避けるため、早急な対応が求められます。 - 新年度の補助金制度を活用する場合
追加費用をカバーできる額の補助金が期待できる場合は、冬の段階から準備を始めるのが有効です。
なお、空き家の補助金制度については次の記事にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

春まで検討しても良いケース
- 建物の状態が比較的良好な場合
築年数が浅く、雪の重みにも十分耐えられる構造であれば急ぐ必要はありません。 - 解体後の土地活用計画が具体的に決まっていない場合
更地にすると固定資産税が高くなるため、土地の活用計画とあわせてタイミングの見極めが重要です。 - 費用を少しでも抑えたい場合
除雪費などの追加費用を避けたい場合は、雪の影響を受けにくい春以降に解体するのがおすすめです。
【FAQ】雪の降る地域 解体に関するよくある質問
豪雪で工事が中断した場合、費用はどうなりますか?
天候の悪化によって工事が中断した場合でも、現場を維持するための費用は原則として施主側の負担となるケースが多いです。
中断期間中に建物の倒壊を防ぐための除雪や補強作業が必要になった場合、その費用が追加されるケースもあります。
契約内容にもよりますが、標準的な請負契約では天災などの不可抗力によって生じた損害や追加費用は施主が負担すると定められている場合が多いため、事前に契約書の「危険負担」や「不可抗力」の条項を確認するのが重要です。
なお、契約書については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

雪の重みで空き家が倒壊しそうな場合、どう対処したらいいですか?
倒壊の兆候がある場合は、速やかに除雪の専門業者へ連絡してください。
まずは建物から十分な距離を取り、近隣住民や通行人が近づかないよう注意喚起を行い、安全を確保してください。
雪の重みで歪んだ建物は非常に不安定なため、屋根に登るなどの行為は危険です。自身の重みがきっかけで崩落する恐れがあるため、高所作業車や重機を使用できる業者に雪下ろしを依頼する必要があります。
屋根の雪が落ちて被害が出た場合、こちらの責任になりますか?
屋根からの落雪で第三者に被害が出た場合、民法第717条に基づき建物の所有者が賠償責任を負います。
これは建物の管理不備による損害とみなされるためで、過失の有無に関わらず責任を問われるケースが一般的です。
たとえば、雪下ろしを怠ったため隣家や車を壊したり、通行人にけがをさせた場合は所有者が対応する必要があります。工事中であっても、事前の管理不足が原因であれば責任を免れない可能性があります。
出典:民法
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。引用:民法|e-Gov法令検索
まとめ
雪の日でも解体工事は可能ですが、工期や費用に影響が出やすいため状況に応じた判断が重要です。
特に以下に当てはまる場合は、早めの検討をおすすめします。
- 相続した空き家が豪雪地帯にあり、倒壊の危険性が高い
- 自治体からの空き家に関する指導・通知が届いている
- 少しでも早く土地を売却・活用したい計画がある
これらに当てはまる場合は、多少の追加費用があってもリスク回避やスケジュール面でのメリットが大きいといえます。一方で、建物の状態に余裕があり、コストを優先したい場合は春以降の解体も検討するとよいでしょう。
なお、優良な解体業者の選び方については、次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。


