この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 能登半島地震の公費解体で発生した不法投棄事件の概要がわかる
- 被災地で災害廃棄物処理が進められている現状と現場の課題がわかる
- 不法投棄に科される罰則と施主が知っておきたい注意点がわかる
能登半島地震の公費解体現場で発生した廃棄物の不法投棄事件で、自称建設業の男が逮捕されました。
本記事では、事件の概要や被災地で進められている災害廃棄物処理の実態、不法投棄の法的責任について専門的視点から解説します。
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ニュースの概要
- 発生場所:石川県七尾市、羽咋郡志賀町
- 報道日:2026年6月9日
- 対象:住居不定の自称建設業の男(62)
- 事案:石川県七尾市の公費解体現場で発生したコンクリート・木くず・畳など約5.38tの廃棄物を七尾市と志賀町に不法投棄したとして、自称建設業の男(62)が廃棄物処理法違反の疑いで逮捕された。男は容疑を認め、「廃棄物の分別が煩わしかった」と供述している。
道路に投棄した廃棄物はおよそ5380キロに上ります。石川県七尾市の公費解体現場で発生した廃棄物を不法投棄したとして、5月、自称建設業の男が逮捕されました。
引用:震災の公費解体を不法投棄 コンクリートや畳など5380キロを道路に 62歳の男を逮捕「分別が煩わしかった」|Yahoo!ニュース
今回の事件が発生した背景
不法投棄は決して許される行為ではありませんが、事件の背景には能登半島地震の被災地で進められている膨大な量の災害廃棄物処理があります。
約375万tに及ぶ災害廃棄物への対応

石川県が公表した「災害廃棄物の処理状況(令和7年12月末・暫定値)」によると、公費解体等に伴う災害廃棄物の総発生推計量は約375万tに達しています。国の災害廃棄物対策指針に基づき木造住宅1棟(約30坪)から発生する廃棄物量を約50tとすると、約7万5,000棟分に相当する規模です。
処理終盤でも続く現場の負担
令和7年12月末時点では累計345万tが処理されており、処理率は92.2%に達しています。一方で、同月の処理実績は約11万tで、計画値16万tに対する達成率は65.5%でした。
運営者 稲垣復興は最終段階に入りつつありますが、廃棄物の処理や解体工事への対応など現場には引き続き大きな負担がかかっています。
複雑化する災害廃棄物の分別作業
災害廃棄物は建築資材や家財道具が混在しているため、平時の解体工事よりも分別に手間がかかります。
例えば倒壊した住宅から搬出された廃棄物には、木材・コンクリート・金属・畳・断熱材・家財道具などが混在しています。そのため、まずは解体現場で大まかに分別し、その後中間処理施設でさらに細かく選別します。
このように災害廃棄物は通常の解体工事以上に分別工程が多く、適正処理には多くの手間と時間を要します。
実際の見積書から分かる分別・処理コスト
運営者 稲垣分別工程が増えるほど作業員の人件費・重機の稼働時間・運搬コストも増加するため、事業者の金銭的負担も大きくなります。
画像は、実際の火災家屋の解体工事で作成された見積書です。

この見積書では、「廃火災建物材・家庭ごみ選別積込み運搬処分」という項目だけで280万円(単価7万円/m3)が計上されています。この事例からも、適正な分別や処理には相応のコストが必要であることが分かります。
容疑者にはどのような責任が問われる?
5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金
廃棄物の不法投棄は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」第16条で禁止されています。同条では「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と定められており、違反した場合は第25条第1項第14号に基づき、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその双方が科されます。
今回の事件でも不法投棄の事実が認定されれば、こうした刑事責任を問われる可能性があります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
十四 第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者
会社ぐるみの不法投棄には法人への罰則もある
不法投棄が法人の業務として行われた場合は、実行者だけでなく法人も処罰対象です。廃棄物処理法第32条の両罰規定により、法人には最大3億円以下の罰金刑が科される可能性があります。また、不法投棄は実際に廃棄物を捨てた場合だけでなく、投棄を目的として廃棄物を運搬していた場合にも処罰対象となる場合があります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第二十五条第一項第一号から第四号まで、第十二号、第十四号若しくは第十五号又は第二項 三億円以下の罰金刑
まとめ
今回の事件は、災害復旧の現場であっても適正な廃棄物処理を徹底することの重要性を改めて示した事例です。
不法投棄の責任は原則として実行した業者にあります。一方で、依頼先の業者による不法投棄が発覚した場合には行政や警察から工事内容の確認を求められるなど、施主がトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
そのため解体工事を依頼する際は工事費の安さだけで判断せず、廃棄物の処理方法や処分先について具体的に説明できる業者を選ぶことが大切です。
なお、優良業者の選び方については以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

