この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 古民家を移築する3つの方法と、それぞれの特徴がわかる
- 「新築より高い」と言われる移築費用の相場と、高額になる理由が把握できる
- 移築工事の流れや、建築確認申請など必要な手続きがわかる
古民家を所有している方のなかには、建物をどう残すか悩む方も多くいます。「親から相続した古民家を壊したくない」「残したいけれど、今の場所では住み続けられない」といった場合は、古民家を別の場所へ移す「移築」という方法があります。
ただし、古民家を移築するには建物の状態や移築先の条件など、事前に確認すべきポイントがあります。
この記事では、古民家を移築する3つの方法や費用相場、移築できるか判断するポイント、工事の流れや注意点をわかりやすく解説します。
監修者
現場解説一般社団法人あんしん解体業者認定協会 お客様窓口 マネージャー
辰巳 浩晃(たつみ ひろあき)
解体工事のご相談・現場調査の立会い・見積書説明など、お客様窓口としてお客様の不安解消と工事サポートに注力するマネージャー。「同じ解体でも、ひとつとして同じ現場はない」を信条に、一件一件の個性を大切にしながら、お客様が晴れやかな気持ちで工事当日を迎えられるよう伴走。お持ちの見積書が適正かどうかも、数分のお電話で判断できるよう、第三者目線でのアドバイスを心がけている。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。近年は解体の前段にある空き家問題(管理・解体・補助金・税制)にも取材領域を広げている。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
酒巻 久未子(さかまき くみこ)
「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」
数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。
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古民家の移築とは?

古民家の移築とは、釘などをほとんど使わない「伝統構法」の建物を、別の場所へ移す工事です。
一度解体して再び組み上げる方法のほか、建物を解体せずに移動させたり、クレーンで吊り上げて運んだりする方法もあります。古民家ならではの建築技術や古材を活かし、その価値を残すための方法です。
古民家とは
古民家には明確な法的定義はありません。一般的には、築50年以上の木造軸組構法による住宅を指し、伝統構法だけでなく在来工法も含まれます。
一方、一般社団法人全国古民家再生協会では、昭和25年(1950年)の建築基準法制定時にすでに建てられていた「伝統構法」の住宅を古民家と定義しています。
伝統構法では、柱や梁(はり)を「継手(つぎて)」や「仕口(しくち)」と呼ばれる木組みで接合し、釘や金物に頼らず建てられている点が特徴です。

長い年月を経た柱や梁には、新しい木材にはない独特の風合いや存在感があります。また、現在では伝統構法を扱える職人も限られているため、古民家と同じ建物を一から建てるのは簡単ではありません。
そのため、現存する古民家を移築し、古材や伝統的な建築技術を次の世代へ受け継ぐ方法が選ばれています。
古民家の移築は誰に依頼する?
古民家の移築は誰に依頼するのが一般的なのか、『あんしん解体業者認定協会』で11万件以上の相談対応実績を持つ中野理事に伺いました。
理事 中野達也古民家の移築は、移築・再生実績のある工務店や建築事務所などの専門業者に依頼するのが一般的です。
理事 中野達也移築には、建物の状態を確認して再利用する技術が求められます。古民家の構造や木材の扱いに詳しい業者を選びましょう。
また、古民家のリフォームに対応していても、移築まで手がける業者は限られます。依頼前に、移築実績や施工事例を確認し、調査から再建まで対応できるか確認しましょう。
どのような業者に依頼すべきか、伝統構法や古材を熟知し、解体・修繕から再建まで一貫して任せられる高い技術力と移築の実績を持つ、以下の企業・団体を参考にしてみてください。
移築する3つの方法
古民家の移築には、移動距離や敷地の条件に応じて「解体移築」「曳家(ひきや)」「吊り上げ」の3つの方法があります。
- 解体移築
- 曳家(ひきや)
- 吊り上げ
| 移築方法 | 内容 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 解体移築 | 建物を解体して運び、移築先で組み立てる方法 | 遠距離の移築や間取り変更にも対応しやすい | 解体・運搬・組み立てに手間がかかる |
| 曳家(ひきや) | 建物を解体せず、そのまま水平に移動させる方法 | 解体移築に比べて、費用や工期を抑えやすい | 平坦で障害物のない移動経路が必要 |
| 吊り上げ | 建物の骨組みをクレーンで吊り上げて移動させる方法 | 段差や障害物がある場所でも移動しやすい | クレーンを設置できる広いスペースが必要 |
それぞれの移築方法を詳しくご紹介します。
1. 解体移築

建物を部材ごとにバラバラに解体し、別の場所へ運んでから再び組み立てる方法です。3つの方法の中で、最も一般的です。
現住所から遠く離れた場所へ移住する場合に適した方法です。トラックで運べるサイズまで建物を分解するため、移動距離に制限がありません。
また、新しい土地に合わせて間取りを変更したり、傷んだ部材を新しい木材に交換したりしやすいメリットがあります。
2. 曳家(ひきや)

建物を解体せず、そのままの姿で水平に移動させる方法です。
同じ敷地内で建物の位置を少しずらしたい場合や、すぐ隣の土地へ移動させる場合に利用されます。
建物をジャッキと呼ばれる持ち上げ用の機械で浮かせ、下にレールや丸太を敷いて少しずつ移動させます。解体や組み立ての工程が発生しないため、建物の歴史的な価値をそのまま残せます。また、解体移築よりも費用や工期を抑えられます。
ただし、移動経路が平坦で障害物がない状態であることが条件となるため、遠方への移動には向きません。
3. 吊り上げ

建物の骨組みを大型クレーンで吊り上げて移動させる方法です。
曳家と同じく同じ敷地内や隣地など短距離の移動で使われます。敷地内に段差がある場合や、障害物を飛び越えたい場合に適します。屋根や壁、床などを一旦取り外し、建物の骨組みをクレーンで持ち上げて新しい基礎の上へ運びます。曳家では移動が難しい土地の条件でも対応できるのが特徴です。
ただし、大型クレーンが進入して作業できる広いスペースが必要です。また、移動後に屋根や壁を新しく作り直す費用が追加でかかります。
移築できるか判断するポイント
ここでは、古民家を移築できるか判断するポイントを解説します。
建物の構造・工法を確認する
「解体移築」を行うためには、木と木をパズルのように組み合わせて建てる「伝統構法」であることが前提となります。木製の栓(込栓)を抜くだけで建物を傷めずに分解し、再び組み直せるからです。
なお、建物を解体せずにそのまま動かす「曳家」や「吊り上げ」であれば、伝統構法以外の建物でも移築が可能です。
解体移築できる構造か判断する際は、以下のポイントを確認しましょう。
- 築年数の目安
昭和25年(1950年)の建築基準法制定以前に建てられた住宅か - 伝統的な木組み
太く曲がった丸太梁などが使われ、仕口や継手、込栓などを用いて木材同士を組み合わせているか - 基礎の造り(石場建て)
コンクリート基礎に固定せず、玉石などの上に柱を立てる「石場建て」か
運営者 稲垣見た目は古い家でも、過去のリフォームで強力な接着剤や金物が多用されていたりすると、解体移築は難しくなるケースがあります。
運営者 稲垣個人で判断せず、古民家鑑定士などの専門家に調査を依頼して見極めてもらいましょう。
部材の状態を確認する
大黒柱や梁など、建物を支える主要な構造材が再利用できる状態であるのも重要な条件です。
築100年を超える古民家では、多少の傷みや汚れがある場合が多いです。
しかし、表面的な劣化や一部の腐朽であれば、傷んだ部分を切り取り、新しい木材を接ぎ合わせる「根継ぎ(ねつぎ)」という修復技術で対応できます。
調査で、部材の強度が保たれている状態だと確認できれば、移築できる可能性が高まります。
移築が難しいケース
長年の思い入れがあっても、部材の状態によっては移築が難しくなります。次のような状態は、移築できない可能性があります。
- シロアリの食害
柱や土台が内部まで食害され、構造材としての強度を保てないため - 雨漏りによる腐朽
小屋組や梁の接合部が腐朽し、建物を支える強度を確保できないため - 改修による構造の変化
梁や柱の切断、補強金具の追加によって木組みが変わり、移築先で元の構造に組み直せないため
古民家を移築する流れ

ここでは、古民家を「解体移築」の方法で実施した場合の流れをご紹介します。
移築できる古民家か調査する

まず、対象となる古民家が移築できる状態かを専門家に確認してもらいます。
相談先は、主に古民家鑑定士や建築士などです。たとえば、住まい教育推進協会では「古民家移築価値鑑定」を5万円(税別)で実施しています。
移築先の土地を決める
移築が可能だと確認できたら、建物を再建する新しい土地を探します。
土地選びでは、以下の3点に注意しましょう。
- 古民家をそのまま建てられる広さがあるか
古民家はサイズが大きいため、建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)などの制限を満たせる広さが必要です。平屋造りの場合、現代の一般的な住宅よりも広い土地が求められます。 - 道路幅の基準を満たしているか
災害時の避難や緊急車両の進入のため、「敷地が幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していること」が建築基準法で義務付けられています。これを満たさない土地には原則として再建できません。 - 家を建てていい場所か
その土地の「用途地域(住居系、商業系など)」のルールに建物が合致しているかも確認が必要です。「市街化調整区域」など、建物の建築が制限されている地域への移築は困難です。
この他にも、電柱や近隣建物との距離など確認すべき点が多いため、土地探しの段階から建築基準法などに詳しい建築業者への相談がおすすめです。
出典:建築基準法
(建蔽率)
第五十三条 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。(用途地域等)
第四十八条 第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。(以下、用途地域ごとに規定)
古民家を移築する

見積もりや工事内容を確認したら、古民家の解体を始めます。
解体前には、柱や梁などの部材が建物のどこに使われていたかを記録する「番付(ばんづけ)」を行います。木材一つひとつに「いの一」「ろの二」などの目印を付け、建てる際に元の位置へ戻せるようにする作業です。
番付が終わったら、屋根瓦や土壁などを取り外し、柱や梁などの骨組みを解体します。取り外した部材は、再利用するものと処分するものに分け、傷つかないよう梱包して移築先へ運搬します。移築先の準備が整っていない場合は、一時的に倉庫などで保管する場合もあります。
移築先で再建する
移築先では、まず基礎を造ります。完成したら、番付をもとに柱や梁などの古材を組み上げていきます。
再建と同時に、傷んだ部材の修繕や耐震補強も行います。必要に応じて耐力壁を追加したり、金物で部材を固定したりして、現在の耐震基準に対応させます。
さらに断熱材を入れたり、キッチンや浴室などの設備を現代のものに交換したりします。古民家の趣を残しながら快適に暮らせる住まいへと仕上げます。
完了検査を申請し、完成
建物の組み立てや内外装などの仕上げ工事が完了したら、建築主が建築主事または指定確認検査機関に完了検査を申請します。
完了検査では、建物と敷地が建築基準関係規定に適合しているか、計画どおりに建てられているかを現地で確認します。検査に合格して検査済証が交付されれば、建築基準法上の手続きが完了し、古民家の移築も完了です。
出典:建築基準法
(建築物に関する完了検査)
第七条 建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事等の検査(建築副主事の検査にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。第七条の三第一項において同じ。)を申請しなければならない。
移築の費用相場
古民家を移築した場合の費用相場
移築は「解体移築」「曳家」「吊り上げ」の方法によって、それぞれ費用が異なります。
30坪程度の古民家を移築した場合の費用相場を、以下にまとめました。
| 移築方法 | 費用相場(30坪程度) | 作業の内訳 |
|---|---|---|
| 解体移築 | 約2,000万~2,500万円 | 解体・運搬・古材の洗浄や修繕・基礎・再建・内外装・設備など |
| 曳家 | 約500万~1,000万円 | 曳家工事・基礎新設・設備の切り離しと再接続・補修など |
| 吊り上げ(揚家) | 約400万~800万円 | 吊り上げ工事・基礎新設・設備工事・補修など |
解体移築
解体移築する場合、総額2,000万~2,500万円程度が目安です。一般的な注文住宅の新築と比べて、1.2~1.3倍ほど高くなる傾向があります。
曳家
曳家工事そのものは約300万~500万円、基礎新設や設備工事、補修などを含めた総額は約500万~1,000万円が目安です。
吊り上げ
吊り上げ工事そのものは約200万~400万円、基礎新設や設備工事、補修などを含めた総額は約400万~800万円が目安です。
実際の費用は、建物の大きさや状態、移動距離、移築先の条件、補修内容などによって大きく異なります。
移築費用が高額になる理由
古民家の移築費用が高くなる主な理由は、次の4つです。
- 手作業による解体と番付に手間がかかる
移築では、柱や梁などの木材を再利用するため、部材に傷をつけないよう手作業で解体します。さらに、再建時に元の位置へ戻すための番付も必要となるため、解体に時間と人手がかかります。 - 大型の古材を運ぶ費用がかかる
古民家の大黒柱や梁などは太く長いものが多く、大型トラックやクレーン車などが必要になる場合があります。さらに、古材を傷つけないよう梱包して運ぶため、運搬費も高くなります。 - 古材の洗浄や修復に手間がかかる
古材は、長年の汚れを落としたり、傷んだ部分を修復したりしてから再利用します。修復する部材が多いほど、作業時間と費用も増えます。 - 現代の基準に合わせた補強が必要になる
現在の建築基準法に適合させるため、基礎や壁、柱などを補強する場合があります。
移築工事の注意点
ここでは、移築工事前に知るべき注意点を解説します。
建築確認申請を行う
古民家を移築する場合、基本的に建築確認申請が必要です。
移築方法によって建築基準法上の扱いは異なり、建物を解体して別の敷地に移す解体移築は「新築」、同じ敷地内や隣接する場所へ移動する曳家や吊り上げは「移転」として扱われます。
| 移築方法 | 法律上の扱い | 概要 | 建築確認申請 |
|---|---|---|---|
| 解体移築 | 新築 | 建物を一度解体し、別の敷地で再び組み立てる | 原則必要 |
| 曳家 | 移転 | 建物を解体せず、同じ敷地内や隣地へ水平に移動する | 原則必要 |
| 吊り上げ | 移転(※) | 建物の骨組みをクレーン等で持ち上げ、同じ敷地内や隣地へ移動する | 原則必要 |
※別の敷地へ移動させる場合は「新築」、解体規模が大きい場合は「改築」扱いになることもありますが、いずれにせよ建築確認申請は必要です。
解体移築では、新築と同様に建築基準関係規定への適合を確認する必要があります。工事前に建築確認申請を行い、確認済証の交付を受けます。
建築確認申請は、施主が依頼した建築士などが代理で、移築先の自治体や指定確認検査機関へ必要書類を提出します。審査を通過して「確認済証」が交付された後に、移築工事へ着工します。
一方、曳家は、防火地域・準防火地域以外で、移転する建物の床面積が10m2以下の場合、建築確認申請は不要です。ただし、一般的な古民家は10m2を超えるため、曳家でも建築確認申請が必要になるケースがほとんどです。
出典:建築基準法
(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。2 前項の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるときについては、適用しない。
耐震補強を行う
昔の基準で建てられた古民家をそのまま組み直しても、現行の耐震基準を満たせないため、基準に適合する耐震補強工事が必要です。
昔の基準で建てられた構造をそのまま組み直すだけでは、現代の地震に耐えられません。以下のような改修・補強を行って安全性を確保します。
- 鉄筋コンクリート造の基礎を新設して土台と強固に連結し、地震に耐えられる構造にする。
- 補強材や頑丈な木の板を使った耐力壁をバランスよく配置し、地震の横揺れに強くする。
- 柱や梁などの接合部に頑丈な金属部品を取り付け、骨組み全体が抜けないよう補強する。
- 傷んだ木材の修繕や防腐・防蟻処理を行い、建物の耐久性を回復させる。
出典:建築基準法
(構造耐力)
第二十条 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。
解体時の部材破損を防ぐ
再利用する古い木材を破損させないように注意が必要です。
何十年も経った古材は、乾燥しきっていてとても割れやすい状態です。組み合わさっている木と木を分解したり、家を支えている大きな木材を外したりする際、わずかな衝撃だけでも木材が割れてしまう危険があります。
このようなリスクを避けるため、作業員が手作業で慎重に解体します。
古材の保管費用を事前に確認する
古材の保管場所によっては、移築費用とは別に保管費用がかかる場合があります。 解体した古材は、洗浄や修復作業を行った後、移築先の基礎工事が完了するまで保管する必要があるためです。
古材を長期間保管する場合は、雨風や直射日光による反りや腐朽を防ぐため、屋根のある倉庫など適切な環境を確保します。
建築業者の敷地内で保管してもらう場合は、保管費用が見積もりに含まれているか、別途いくらかかるのかを事前に確認しましょう。
よくある質問(FAQ)
- 移築工事の期間はどれくらいかかりますか?
-
例えば30坪程度の古民家を近県へ解体移築する場合、解体開始から完成まで約8ヶ月~1年程度が目安です。
一般的な新築住宅より工期が長くなるのは、古材を再利用するため、解体や部材の修繕に時間がかかるためです。
▼移築工事の主な工程と期間
スクロールできます工程 期間の目安 主な作業 調査・設計・建築確認申請 約1〜2ヶ月 移築可否の調査、設計、確認申請の審査 解体 約1ヶ月 手作業での解体、部材の番付 部材の洗浄・修繕 約1~2ヶ月 古材の洗浄、腐朽部分の修繕 基礎工事・組み立て 約2~3ヶ月 基礎工事、古材の組み立て 内外装・設備工事 約3~4ヶ月 屋根・外壁・内装、水回りなどの施工 特に、古材の状態や修繕内容、移築先の建物仕様によって工期は前後します。
- 古民家の移築とリフォーム・建て替えは何が違いますか?
-
移築とリフォーム・建て替えの大きな違いは、「建物の場所が変わるか」と「既存の部材を再利用するか」です。
▼移築とリフォーム・建て替えの比較表
スクロールできます比較項目 移築 リフォーム 建て替え 建物の場所 別の場所へ移動する 同じ場所 同じ場所 建物を解体するか 一度解体して再び組み立てる 基本的に解体しない(部分解体のみ) 完全に解体する 主要な部材 柱・梁などを再利用する 既存の骨組みを活かす 基本的に新しい建材を使用 工事内容 解体・運搬・再組立 内装・設備・間取りなどを改修 新しく建物を建築 建築確認申請 原則必要 工事内容による 原則必要 向いているケース 古民家や歴史ある建物を残したい 建物を活かして住みやすくしたい 老朽化が進み新築したい それぞれの主な工事内容は、以下のとおりです。
- 移築 建物を一度解体し、柱や梁などの主要な部材を新しい敷地へ運んで再び組み上げる
- リフォーム 建物を現在の場所に残したまま、既存の骨組みを活かして内装や設備を改修する
- 建て替え 同じ敷地内で既存の建物を解体し、新しい建材を使って一から建築する
まとめ
ここまで、古民家の移築にかかる費用や工期、注意点などを解説してきました。
伝統的な技術や趣のある古材を次の世代へ残せる古民家の移築は、とても魅力的な方法です。ただ、実際に移築するには建物の状態や費用など、いくつかのハードルがあります。
また、専門家による調査の結果、条件が合わず全面的な移築を断念する場合でも、諦める必要はありません。
建物全体を移築できなくても、思い入れのある大黒柱や梁、建具などを新しい住まいに取り入れる「古材の再利用」という方法があります。この方法なら、移築先の敷地条件や建築確認申請の制約を受けず、費用も「解体費用+古材の取り外し費用」の範囲に抑えられます。
理事 中野達也移築を検討したものの、条件が合わずに解体へ切り替えるというご相談はよくいただきます。その際によくあるのが「柱と梁だけは残したい」というご要望です。
理事 中野達也事前にご相談いただければ、古材の取り外し実績がある業者をお探しできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
古材の一部を再利用したい場合は、次の記事にて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

