この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 福井県あわら市で実施された「特定空き家」の略式代執行の概要
- 個人の空き家解体に税金が投入される理由と「略式代執行」の仕組み
- 空き家を放置することで所有者や周辺住民に生じる具体的なリスク
- 空き家解体で活用できる補助金制度や、早期に対策を行うメリット
2026年5月26日、福井県あわら市で、持ち主が亡くなり10年以上放置されていた「特定空き家」に対し、行政が解体費用を負担して撤去する「略式代執行」が行われました。
本記事では、あわら市の事例を深掘りし、略式代執行に至った背景、空き家放置のリスク、空き家所有者が取るべき対策について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
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ニュースの概要
- 発生場所:福井県あわら市次郎丸
- 報道日:2026年5月26日
- 対象:倒壊の危険性が極めて高い「特定空き家」
- 事案:空き家は所有者が亡くなってから10年以上放置され、相続人も不明な状態でした。2026年1月には敷地内の蔵が倒壊するなど、周辺住民の安全を脅かす事態に至ったため、市が「空家等対策特別措置法」に基づき、所有者に代わって強制的に解体する「略式代執行」に踏み切りました。
あわら市次郎丸で25日、持ち主がおらず崩れるなど危険性が高い「特定空き家」の略式代執行が行われました。行政が費用を負担する形で建物の解体が決まり、住民の安全確保のため、同市では今後も積極的に解体を進める方針です。
略式代執行が行われた住宅は、屋根や外壁が大きく崩れ、10年以上前に持ち主が亡くなって以降放置されていて、今年1月には雪によって蔵が倒壊しました。
(中略)
「略式代執行」とは、持ち主のいない建物を行政が解体するもので、費用は公費で賄われ、今回の事例であわら市は約430万円を負担します。
■あわら市 市民協働課 山口真代課長補佐
「この家と同じような感じで、危険性があるものが(市内に)5棟残っている。対応を強化して、特定空き家の認定物件を増やし、状態の悪い空き家を解体する方向で考えている」同市では、今年度中に5~6軒が「特定空家等」に追加認定される見込みです。
引用:「特定空き家」を略式代執行 あわら市 持ち主亡くなり10年以上放置 崩れる危険性高く1月には蔵が倒壊 解体費用は行政が負担 今後積極的に解体進める|FBC NEWS
あわら市の空き家に対する取り組み
通常、建物の解体は所有者の責任と負担で行われますが、本件は所有者不明(相続放棄等により確知できない状態)の物件であったため、行政が約430万円の解体費用を負担する形で撤去に踏み切りました。
解体工事は自治体が主体となって発注し、指名競争入札によって地域の解体業者が受注・施工する「公共工事」の枠組みで進められています。
【略式代執行】空き家解体に税金が使われる理由
ニュースを見て、個人の空き家解体に多額の税金が使われることに、疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。その理由を理解するには、「行政代執行」と「略式代執行」の違いを知る必要があります。
■行政代執行
所有者が判明しているにもかかわらず、行政の改善命令に従わない場合に行う強制措置です。解体費用は後日、所有者に請求されます。
■略式代執行
所有者の死亡や全員の相続放棄などにより、所有者が特定できない場合に行う措置です。費用の請求先が存在しないため、行政が負担します。
運営者 稲垣税金が投入されるのは、「所有者の逃げ得」を許容するためではありません。倒壊による近隣への被害や巻き込み事故を防ぐために、行政が「公共の安全を守る最終手段」としてやむを得ず介入している結果です。
空き家の解体や家財処分に対する補助金・特例措置
現在、多くの自治体が空き家の利活用や解体を促進するための補助金制度を設けています。今回のニュースの舞台となったあわら市の事例を見ると、以下のような手厚い支援が用意されています。
| 支援制度の名称 | 支援の目的と概要 |
| 空き家取得等支援補助金・リフォーム補助金 | 移住者や購入者が空き家を取得・改修する際の初期費用を軽減し、市場への流通を促す制度。 |
| 空き家家財処分支援補助金 | 空き家流通の最大の障壁となる「残置物の処理」に対し、清掃・処分費用を助成し、物件の市場投入を早める制度。 |
| 空き家情報バンク登録奨励金 | 所有者が自ら空き家バンクに登録し、物件を市場に出すという行為自体にインセンティブ(奨励金)を付与する制度。 |
あわら市は、今後も同様の危険な空き家に対して積極的に解体を進める方針を示しています。また、本年度中に5~6軒が「特定空家」などに追加認定される見込みです。
空き家を放置した場合のリスク
「誰も住んでいないから」「解体費用がもったいないから」といって空き家を放置することは、以下のように多くのリスクをもたらします。
- 物理的リスク:老朽化による家屋の倒壊、屋根瓦や外壁の飛散
- 衛生・環境リスク:庭木の越境、雑草の繁茂、害虫・害獣(ネズミやハクビシン等)の繁殖
- 防犯リスク:不法投棄の誘発、不審者の侵入や放火の標的
- 景観・経済リスク:地域の景観悪化、周辺の優良な不動産の資産価値低下
所有者や相続人のリスク
- 損害賠償責任の発生
空き家の放置により、建物の倒壊や枝折れ、看板の落下などで隣家や通行人に被害を与えた場合、民法第717条(土地工作物責任)に基づき、所有者(または占有者)が損害賠償責任を負います。管理の実態に関わらず、過失がなくても責任を問われる「無過失責任」が適用される場合もあり、多額の賠償金が発生するリスクがあります。 - 税金の支払増加
管理不全により「特定空き家」に指定され、自治体から改善勧告を受けると、固定資産税の優遇措置(住宅用地特例)の対象から除外されます。その結果、土地の固定資産税が最大6倍まで増額される可能性があります。 - 解体費用の強制徴収
自治体による「代執行」で建物が解体された場合、その費用は法に基づき所有者に全額請求されます。行政による執行はあくまで費用の「立て替え」に過ぎず、市町村は所有者に対して「求償権」を行使します。支払いが不可能な場合は、給与や不動産などの財産が差し押さえられることもあります。一般的な木造家屋でも100万円以上の費用がかかるケースが多く、所有者にとって重い負担となります。 - 相続放棄後も残る管理責任
2023年4月の民法改正により、相続人が相続放棄をしても、次の相続人や相続財産精算人が管理を始められるようになるまでは、引き続き不動産の管理義務(保存義務)を負うことになりました。「放棄したから無関係」と放置することはできず、適切な引き継ぎが行われるまでは責任を免れません。
特に問題となるのが、所有者が亡くなって相続人がわからなかったり、所有者に賠償するお金がなかったりするケースです。こうなると、被害を受けた近隣住民は正当な補償を受けられず、泣き寝入りすることになります。
運営者 稲垣自治体による「略式代執行」などの制度は、こうした個人の責任だけでは解決できない問題を解消し、近隣住民の安全を守るために必要な仕組みです。
出典:民法
(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。(相続の放棄をした者による管理)
引用:民法|e-Gov 法令検索
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
なお、スッキリ解体には空き家放置のリスクや費用相場、活用できる補助金まで、空き家の解体について徹底解説した記事もございます。よろしければあわせてご覧ください。

空き家を早期解体するメリット
【所有者のメリット】
- 解体費用の抑制:倒壊の危険が高まる前に解体することで、手作業による追加費用を防ぎ、トータルコストを抑えられます。
- 補助金の活用:行政の強制措置に至る前に自主的に解体すれば、自治体の補助金を受けられる可能性があります。
- 資産の有効活用:更地にすることで、早期売却や駐車場への転用などがしやすくなります。
- 精神的負担からの解放:倒壊や近隣トラブルへの不安、台風時の心配などから解放されます。
【周辺住民のメリット】
倒壊や火災、不法侵入などのリスクが解消され、地域の安全性や景観が向上します。
まとめ
福井県あわら市にて、「特定空き家」の略式代執行が行われたニュースを解説しました。
空き家が適切に管理されず放置される背景には、所有者の死亡や相続人の不在・不明などの問題があります。そして、放置を続けること以下のリスクが生じます。
- 建物の倒壊や部材の飛散による近隣住民への物理的被害
- 害虫・害獣の繁殖や不法投棄による衛生・防犯環境の悪化
- 被害発生時に問われる所有者への多額の損害賠償責任
- 「特定空き家」指定に伴う固定資産税の増額
- 行政代執行が行われた場合の高額な解体費用の強制徴収
運営者 稲垣空き家の放置は個人の問題だけでなく、地域住民の安全も脅かします。また、最終的には所有者自身に高額な費用負担としてのしかかるリスクもあります。問題が深刻化する前に、補助金制度などを活用しながら早めに対策しましょう。
空き家を所有している(または相続する予定の)方は、以下の流れを参考にしてみてください。
- 現状把握と親族間での話し合い
空き家の現状(建物の状態、権利関係など)を正確に把握しましょう。そして、親族間でその不動産を将来どうするのか(誰が相続するのか、売るのか、解体するのか)を早めに話し合っておくことが大切です。 - 自治体への相談
多くの自治体には空き家対策の専門窓口があります。解体費用の補助金制度や、活用に関する相談など、有益な情報が得られます。問題が深刻化する前に、まずは相談してみましょう。 - 専門家への相談
解体を検討する場合は、信頼できる解体業者に相談しましょう。業者選びの際は、自治体の補助金制度に詳しいか、アスベスト調査など法令遵守を徹底しているか、近隣への配慮をしっかり行うか、などを確認しましょう。
なお、解体業者の選び方については以下の記事で詳しく解説しています。よろしければあわせてご確認ください。

