【解体ニュース解説】全国初の「空き家税」条例案、6月議会に提出 大阪・寝屋川市

全国初の「空き家税」条例案、6月議会に提出 大阪・寝屋川市のサムネイル
稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、解体工事や空き家問題について全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

大阪府寝屋川市は2026年6月、「空き家税」の条例案を市議会に提出しました。可決されれば、市内全域を対象とした空き家税としては全国初の取り組みとなります。

本記事では、寝屋川市が進める「空き家税」の具体的な内容や課税対象空き家を放置するリスク空き家所有者が準備すべき対策について、専門的な視点で分かりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 寝屋川市が導入を目指す「空き家税」の概要と、課税対象
  • 全国で深刻化する空き家問題の現状と、寝屋川市の地域課題
  • 解体工事の「駆け込み需要」の推測と、空き家所有者が準備すべき対策
目次
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ニュースの概要

  • 報道日:2026年6月23日
  • 対象地域:大阪府寝屋川市
  • 事案:寝屋川市長は17日、空き家の流通を促す「空き家税」を導入するため、6月市議会に条例案を提出しました。

17日、寝屋川市議会の6月定例会が開会し、会期は7月9日までの23日間と決定。広瀬市長は冒頭のあいさつで、全国的にも注目される「空き家流通促進税」の導入に向けた強い意欲を語った。

引用:寝屋川市議会6月定例会が開会 全国初の「空き家税」導入へ|大阪日日新聞

寝屋川市が導入を目指す「空き家税」とは

「空き家流通促進税(通称:空き家税)」は、利用されていない空き家の売却や賃貸、解体を促し、市場への流通を活性化することを目的としています。寝屋川市では新たな住宅開発ができる土地が限られているため、既存住宅の有効活用が重要な課題となっています。

課税対象となる空き家には、固定資産税とは別に市独自の税金が課される予定です。

課税対象となる空き家

課税対象となるのは、居住実態がなく、賃貸や売却など市場に流通していない空き家です。

一方で、賃貸中・売却中の住宅や、近く事業用として活用予定の住宅などは対象外とされています。

主な対象・対象外を整理すると次のようになります。

区分課税対象
長期間利用されていない空き家
売却活動を行っている住宅×
賃貸募集を行っている住宅×
事業利用予定の住宅×
実際に居住している住宅×

寝屋川市によると、市内の空き家約1万5,000戸のうち、課税対象となる可能性があるのは約6,400戸です。

運営者 稲垣

「空き家そのもの」に課税するというより、「活用も流通もされず放置されている空き家」を減らすことが制度の狙いです。

寝屋川市の空き家の内訳(2023年)賃貸用8,120戸/売却用920戸/空き家税の対象6,410戸

なぜ空き家税が必要なのか

空き家税が注目される背景には、全国的に深刻化する空き家問題があります。

空き家は所有者個人の問題にとどまらず、防災・防犯・景観・地域活力など、まち全体に影響を及ぼすためです。

全国で増加する空き家問題

総務省が公表した最新の「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は約899万戸(約900万戸)に達し、過去最多を更新しました。空き家率も13.8%と過去最高水準となっています。

空き家が増えることで、次のような問題が発生します。

  • 建物の老朽化による倒壊リスク
  • 不法侵入や放火などの防犯リスク
  • 雑草や害虫による周辺環境の悪化
  • 地域の景観や資産価値の低下
  • コミュニティの衰退

特に管理されない空き家は、近隣住民とのトラブルや行政負担の増加につながる懸念があります。

空き家の現状と放置のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。よろしければあわせてご覧ください。

寝屋川市が抱える人口減少と住宅不足の課題

寝屋川市は高度経済成長期に大阪市のベッドタウンとして発展しましたが、当時の住宅取得世代が高齢化し、相続や施設入所などを機に空き家が増加しています。

一方で市域がコンパクトで、新たな住宅開発の余地は限られています。その結果、未利用の空き家が存在するにもかかわらず、子育て世帯向けの住宅確保が課題となっています。

こうした状況を受け、市は「空き家税」を単なる税収確保ではなく、空き家の管理や売却、賃貸、解体といった活用を促す制度と位置付けています。

具体的には、空き家をそのまま所有し続ける負担を増やすことで、

  • 適切に管理する
  • 売却する
  • 賃貸住宅として活用する
  • 老朽化した建物は解体する

といった対応を後押しすることが狙いです。

運営者 稲垣

寝屋川市が目指しているのは税金を集めることではなく、使われていない空き家の放置を減らし売却や賃貸などで活用される住宅を増やすことです。その結果として、子育て世帯などの新たな住民を呼び込み、人口減少の抑制につなげたい考えです。

考えられる解体工事への影響

空き家税の導入は解体工事の需要や進め方に大きな影響を与える可能性があります。

具体的には、以下の2つの変化が予想されます。

1. 解体を選択する所有者が増える可能性

空き家の活用が難しい場合、所有者は「維持するか」「売却するか」「解体するか」の判断を迫られます。特に次のようなケースでは、解体が選択肢になりやすいと考えられます。

  • 建物の老朽化が進んでいる
  • 修繕費用が高額になる
  • 賃貸活用が難しい
  • 相続したものの利用予定がない

空き家を放置する理由の一つに、「建物があると土地の固定資産税が最大6分に1に減額される(住宅用地特例)」という制度があります。

出典:地方税法

(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第三百四十九条の三の二 専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十一項を除く。)の規定の適用を受けるもの並びに空家等対策の推進に関する特別措置法(平成二十六年法律第百二十七号)第十三条第二項の規定により所有者等(同法第五条に規定する所有者等をいう。以下この項において同じ。)に対し勧告がされた同法第十三条第一項に規定する管理不全空家等及び同法第二十二条第二項の規定により所有者等に対し勧告がされた同法第二条第二項に規定する特定空家等の敷地の用に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条及び前条第十一項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
2 住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は、第三百四十九条、前条第十一項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
一 住宅用地でその面積が二百平方メートル以下であるもの 当該住宅用地
二 住宅用地でその面積が二百平方メートルを超えるもの 当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下この条及び第三百八十四条第一項において「住居の数」という。)で除して得た面積が二百平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地、当該除して得た面積が二百平方メートルを超えるものにあつては二百平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地

引用:地方税法|e-Gov 法令検索
運営者 稲垣

今後は空き家税による新たな負担が加わることで、「固定資産税の特例目的で維持するより、解体して更地にし、土地活用や早期売却を考えよう」と判断する所有者が増える可能性があります。

2. 施行前の「駆け込み需要」の可能性

寝屋川市は2029年度(令和11年度)からの課税開始を目指しており、直前の1〜2年は解体工事の「駆け込み需要」が発生すると予想されます。

しかし、解体工事は依頼してすぐに着工できるわけではありません。着工前に、以下のような多くの手続きや準備が必要なためです。

  • アスベスト(石綿)の事前調査・報告:法律により、全物件で資格者による事前調査と自治体への報告が義務付けられており、手続きに数週間を要する場合があります。
  • 建設リサイクル法の届け出:一定規模以上の解体では、着工の7日前までに都道府県などへの届け出が必要です。
  • ライフラインの停止や道路許可:電気・ガスなどの撤去申請のほか、工事で道路を使用する場合は「道路使用許可」の申請も必要です。

さらに、業界の人手不足や処分場の受け入れ制限もあり、急な増産が難しいのが実情です。

そのため、課税直前に「来月までに壊したい」と思っても、業者の予約が数ヶ月待ちになったり、人手不足で解体費用が高騰したりするリスクがあります。

運営者 稲垣

空き家を解体して処分する予定があるなら、税制度がスタートする前に余裕を持って見積もりを取り、計画を立てておくことが重要です。

まとめ

空き家問題は今後も全国で深刻化すると予想されています。

寝屋川市の取り組みが実現すれば、他の自治体にも影響を与える可能性があり、空き家の売却・賃貸・解体を促す新たな政策として注目されるでしょう。

国や多くの自治体では、放置を防ぐための手厚い補助金制度を用意しています。

  • 解体(除却)補助金: 危険な木造空き家の解体費用を支援(例:寝屋川市では最大50万円)
  • 改修(リフォーム)補助金: 子育て世帯向けの賃貸用などに改修する費用を支援(最大100万円以上の場合も)

これら公的支援の多くは「工事の契約・着工前」の申請が必須です。

運営者 稲垣

税制度や法改正が施行されてから慌てるのではなく、補助金が活用できる今のうちから「売却・賃貸・解体」の選択肢を検討し、まずは物件所在地の自治体への相談をおすすめします。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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