この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 道路使用許可なしで解体工事を行った場合に発生するリスクがわかる
- 解体工事で道路使用許可が必要なケースと不要なケースの判断基準がわかる
- 道路使用許可・道路占用許可・特殊車両通行許可など、工事内容ごとに必要な許可の種類がわかる
「家の解体をするけれど、前の道路にトラックを停めても大丈夫なのか」「道路使用許可は必要と聞いたが、自分で申請するのか、それとも業者が行うのか」と不安に感じる方は少なくありません。
結論から言うと、住宅街で行う解体工事では前の道路を使用するケースが多く、その場合は道路使用許可が必要です。また、申請は基本的に解体業者が行います。
ただしルールを正しく理解していないまま工事が進み、「許可が必要だったことに後から気づく」「業者任せで状況を把握していなかった」といった形でトラブルになるケースも少なくありません。
そこで本記事では、『あんしん解体業者認定協会』で11万件以上の相談対応実績を持つ初田マネージャーの知見をもとに、道路使用許可の基本ルールを解説します。
監修者
現場解説一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。近年は解体の前段にある空き家問題(管理・解体・補助金・税制)にも取材領域を広げている。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
馬場 美月(ばば みづき)
「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」
「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。
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解体工事の道路使用許可とは?

解体工事の道路使用許可とは、道路を本来の目的である「通行」以外の用途で使用する際に、管轄の警察署長から取得する許可のことです。例えば敷地内に重機やトラックを停めるスペースがない場合に道路へ車両を停車したり、足場や養生が道路にはみ出したりするケースでは交通の妨げとなる可能性があるため、事前に許可を取得する必要があります。
無許可で解体工事を行うとどうなる?
道路使用許可が必要な場合に取得せずに解体工事を行うと、業者には「3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科される可能性があります。
依頼主には直接の罰則こそありませんが、工事の一時中断・再申請に伴う追加費用・近隣住民からのクレームや信頼低下などの不利益を被ることがあります。さらに解体工事の遅れはその後の新築工事にも影響し、着工遅れやスケジュール変更に伴う人件費・資材費の増加など、トータルで大きな損失につながるケースも少なくありません。
出典:道路交通法
第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。
一 道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人
二 道路に石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者
三 場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者
四 前各号に掲げるもののほか、道路において祭礼行事をし、又はロケーシヨンをする等一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者(中略)
第百十九条
2 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三月以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金に処する。
七 第七十六条(禁止行為)第三項又は第七十七条(道路の使用の許可)第一項の規定に違反したとき。
道路使用許可の区分
道路使用許可は行為内容によって1号〜4号に分かれています。解体工事では主に1号許可と2号許可が関係し、工事内容に応じてどちらか一方または両方の許可が必要です。
なお、住宅街などで解体工事を行う際は、道路使用許可が必要な場合がほとんどです。
1号許可
1号許可は、道路上で工事や作業を行う場合に必要な許可です。解体工事では最も多く関係し、以下のようなケースが該当します。
- ガードマンを配置し通行規制を行う場合
- ダンプやクレーン車を道路に停車して作業する場合
- 重機のアームが道路上空を通過する場合

道路使用許可を取得し、路上駐車を伴う作業を行っている現場の様子です。車両の駐車にあたっては所轄警察署の許可条件に基づき、保安設備として車両前方に赤いカラーコーンを設置しています。
2号許可
2号許可は、道路上に足場・仮囲い・広告板などの工作物を設置する場合に必要な許可です。解体工事では、以下のようなケースが該当します。
- 足場や養生シートが道路にはみ出す場合
- 防護棚を道路側に設置する場合
- 仮設フェンスや工事看板を道路に設置する場合
3号許可
3号許可は、道路上に露店や屋台などを設置する場合に必要な許可です。お祭りやイベント出店、キッチンカーなどが該当します。解体工事では通常該当しません。
4号許可
4号許可は、祭礼行事やロケ撮影など、道路の通行に大きな影響を与える行為に対する許可です。解体工事では通常該当しません。大規模な搬入出や交通規制が必要な場合でも、実務上は1号許可の範囲で警察と協議のうえ対応されます。
解体工事で道路使用許可が不要なケース
道路使用許可が不要となるのは作業・車両・仮設物のすべてが敷地内で完結し、道路に一切影響が及ばない場合です。具体的には、以下のような条件をすべて満たしている必要があります。
- 工事車両(ダンプ・重機・クレーン車など)が敷地内に収まり、道路上に駐車しない
- 廃材の積み込み・搬出作業を敷地内で行える
- 重機のアームや作業範囲が道路上空に出ない
- 足場・養生・仮囲いなどの仮設物が道路にはみ出さない
- 交通誘導や通行規制を必要としない

解体工事の道路使用に関連するその他の許可
解体工事では「道路使用許可」以外にも、現場状況や搬入経路によって複数の許可が必要な場合があります。ここでは代表的なものをご紹介します。
道路占用許可
道路占用許可は、道路上に足場や仮設物などを一定期間設置する場合に必要となる許可です。道路使用許可が一時的な通行や作業に関するものであるのに対し、道路占用許可は継続的に道路空間を使用する場合に必要です。管轄は道路の種類によって異なり、市区町村・都道府県・国土交通省などの道路管理者が担当します。
解体工事では、以下のようなケースが該当します。
- 足場や仮囲いが敷地を越えて歩道や車道にはみ出す場合
- 工事期間中に防護棚を道路上空に設置する場合
出典:道路法
第三十二条 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。
一 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物
二 水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件
三 鉄道、軌道、自動運行補助施設その他これらに類する施設
四 歩廊、雪よけその他これらに類する施設
五 地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設
六 露店、商品置場その他これらに類する施設
七 前各号に掲げるもののほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの
特殊車両通行許可
特殊車両通行許可は、道路の幅・高さ・重量などの基準(幅2.5m、長さ12m、総重量20tなど)を超える車両が公道を通行する場合に必要な許可です。

管轄は道路の種類によって異なり、国道事務所・都道府県・市区町村などの道路管理者が担当します。解体工事では、以下のようなケースが該当します。
- 大型ショベルカーや圧砕機をトレーラーで搬入・搬出する場合
- ラフタークレーンなどの大型クレーン車が公道を移動する場合
- 長さのある鉄骨(H鋼など)や大型建材をトレーラーで運搬する場合
- ポールトレーラーなど特殊形状の車両で長尺物を運搬する場合
- 分割できない大型の機械や構造物を積載し、制限値を超えて通行する場合
出典:道路法
第四十七条 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。第四十七条の五第三号及び第四十七条の六第一項第一号を除き、以下この節及び第八章において同じ。)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。
2 車両でその幅、重量、高さ、長さ又は最小回転半径が前項の政令で定める最高限度をこえるものは、道路を通行させてはならない。
道路工事施工承認
道路工事施工承認は、道路の構造を一時的に変更・加工する工事を行う場合に必要となる承認です。管轄は道路の種類によって異なり、市区町村・都道府県・国土交通省などの道路管理者が担当します。
解体工事では、以下のようなケースが該当します。
- 敷地への車両乗り入れのために歩道の縁石を切下げる場合
- 既存のガードレールや街路樹を撤去・移設する場合
- 敷地と道路の段差を解消するために出入口を改修する場合
- 工事車両の進入路を確保するために道路構造物を一時的に変更する場合
出典:道路法
第二十四条 道路管理者以外の者は、第十二条、第十三条第三項、第十七条第四項若しくは第六項から第八項まで、第十九条から第二十二条の三まで、第四十八条の十九第一項、第四十八条の二十二第一項又は第四十八条の二十九の五第一項の規定による場合のほか、道路に関する工事の設計及び実施計画について道路管理者の承認を受けて道路に関する工事又は道路の維持を行うことができる。ただし、道路の維持で政令で定める軽易なものについては、道路管理者の承認を受けることを要しない。
道路使用許可の窓口申請
解体工事の道路使用許可の申請は解体業者が代行するケースが多く、基本的に依頼主が直接手続きを行う必要はありません。ただし、必要書類や申請の流れなど全体を把握しておくと安心して工事を進められます。
申請手順
- 必要な許可の確認
まず、1号許可・2号許可のどちらが必要か、または両方必要かを判断します。2号許可が必要な場合は、あわせて管轄の自治体へ「道路占用許可」の申請も必要です。 - 警察署への事前相談
管轄警察署の交通課で作業時間や安全対策を協議します。 - 申請書提出
書類を揃えて警察署へ提出します。 - 審査・許可証の発行
通常3日〜1週間程度で発行されます。
理事 初田秀一道路使用許可と道路占用許可の申請の順番は自治体によって異なる場合があります。事前に管轄の警察署や自治体の窓口に確認しておきましょう。
申請書類
道路使用許可の申請には「道路使用許可申請書」が必要です。

申請書のフォーマットは警視庁のホームページからダウンロードできます。
記入例は以下の通りです。
また、1号許可・2号許可の区分に応じて、必要な書類をあわせて添付します。
1号許可
- 工事概要
- 現場案内図(工事・作業実施場所周辺の見取図)
- 緊急時の連絡先
- 道路使用状況図(作業帯図)
- 交通量調査結果 など
※工事・作業の内容によっては、上記すべての提出が必要とは限りません。詳細は申請先の警察署へ確認しましょう。
2号許可
- 現場案内図(工作物の設置場所周辺の見取図)
- 設置する工作物の設計図(寸法等記載のもの) など
理事 初田秀一現場案内図や道路使用状況図の作成方法は解体業者によって異なり、Yahoo!マップやゼンリン地図をベースに作成する場合もあれば、Excelで図を作成する場合、手書きで簡易的にまとめる場合もあります。
以下は、道路使用状況図を手書きで作成した例です。


申請費用
道路使用許可の申請では警察署へ審査手数料を支払います。金額は都道府県によって多少異なりますが、目安は以下の通りです。
- 1号許可:2,700円
- 2号許可:2,100円
理事 初田秀一解体業者に道路使用許可の申請を代行してもらう場合、申請時にかかる審査手数料や代行手数料は「諸経費」や「申請代行費」として見積書に含まれることが一般的です。
なお、道路使用許可は警視庁の案内ページからオンラインでも申請できます。
【FAQ】解体工事の道路使用許可に関するよくある質問
道路使用許可の申請は、工事の何日前に行えばいいですか?
工事の2週間前までに行いましょう。
申請内容の確認や修正が発生する場合もあるため、審査には7日〜10日程度かかるのが一般的です。
道路使用許可の有効期限はどのくらいですか?
1号許可の場合は最長3ヶ月以内、2号許可の場合は道路占用許可の期間と同一であることが一般的です。
なお、許可期間を超えて作業を行う場合は再申請による延長が必要です。
解体工事でガードマンの配置は義務ですか?
すべての現場でガードマンが必要なわけではありません。
交通量の多い道路や指定路線、警察から配置を求められた現場では必要です。一方で公道を使用しない現場では必須ではありません。ただし、安全確保のために業者が自主的に配置するケースもあります。
解体工事におけるガードマンの配置については、詳しくは以下の記事で解説しています。あわせてご覧ください。

まとめ
住宅街の解体現場ではトラックの停車や重機作業のために道路を使用する場面が多く、実務上は道路使用許可が必要な場合が大半です。
また、現場条件によっては道路使用許可に加えて道路占用許可や特殊車両通行許可などが必要な場合もあり、これらを整理できていないと工事の遅延やトラブルにつながるおそれがあります。
そのため、見積もり前の現地調査の段階で「道路使用許可が必要か」「申請は代行してもらえるか」を業者に確認しておくことが重要です。


