【解体ニュース解説】解体で出た「産業廃棄物の山」に近隣住民困惑 京都市

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稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、解体工事や空き家問題について全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

京都市伏見区の住宅街で、高さ10メートルを超える「産業廃棄物の山」が放置され、市が行政代執行による強制撤去を検討する事態となっています。

本記事では、適正に処理されるべき廃材が放置されてしまった原因を推測し、解体工事の依頼主が知っておくべき「正しい廃棄物処理の仕組み」「信頼できる業者の見極め方」を専門家の視点で解説します。

この記事でわかること
  • 京都市伏見区で発生した「産廃の山」問題の概要と、行政代執行が検討されるまでの経緯
  • 「積替え保管(一時保管)」のルールを悪用した、不適切な廃棄物管理の実態
  • 解体工事の廃棄物が最終処分されるまでの正しい流れと、それを監視するマニフェスト制度の仕組み
  • 不法投棄トラブルに巻き込まれないために、依頼主が確認すべき「業者選びのチェックポイント」
目次
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ニュースの概要

  • 発生場所:京都市伏見区
  • 報道日:2026年6月17日
  • 事案:京都市伏見区の住宅街に、産業廃棄物が高く積み上げられた「がれきの山」が出現しました。この影響で、近隣住民は騒音や粉塵、さらには廃棄物の一部が崩れて自宅敷地に流れ込むなどの被害を受けています。

京都市伏見区の住宅街の一角にある私有地に大量の産業廃棄物が積み上げられ、周辺住民を悩ませている。市はこの私有地を使用する業者に撤去を繰り返し求めているが、改善されていない。

 私有地があるのは、名神高速道路沿いの南側の住宅街。少し離れた場所から見ると、積み上げられた産廃物は、まるで小さな山。周囲の一部をトタン板のような柵で覆っているが、産廃物の山の高さは柵をはるかに超えている。近くの2階建てマンションや一軒家の屋根よりも高く、崩れれば建物などへの被害も出そうだ。

引用:住民悩ます産廃の山 伏見の住宅街 京都市、何度も行政指導/京都|毎日新聞

「がれきの山」は、高さ10m超の産業廃棄物

京都市伏見区の住宅街の現場には、解体工事で発生したと思われる木くずやプラスチック、がれきなどが混ざり合った「産業廃棄物の山」が築かれました。

  • 規模:高さ10メートルを超え、近隣の建物の2階を優に超える高さ
  • 内容物:木材、プラスチック、金属くず、コンクリート片など
  • リスク:崩落の危険性、悪臭、害虫の発生、火災時の延焼リスク
運営者 稲垣

報道によると、近隣住民からは「いつ崩れてくるかわからない」「風が吹くとゴミが飛んでくる」といった切実な声が上がっています。

京都市が是正指導と行政代執行を検討している

京都市によりますと、この土地は宇治市に本社を置く建設業者のもので、2021年11月から民家やビルなどの解体工事で発生した木くずやがれきなどの産業廃棄物を一時保管しているということです。

 業者はおととし(2024年)5月、市に対し保管する量を25メートルプール2杯分ほどの容量である1000立方メートルまでとする届け出を出していましたが、京都市によりますと、2025年の秋ごろから明らかにその量を超え始めたということです。

引用:「気が付いたら『あっ』って!」住民ら困惑!突如現れた“謎の山”…一体、何が?|ytv

京都市はこれまで、当該の業者に対して何度も「廃棄物を撤去するように」と是正指導や措置命令を出してきました。しかし、改善が見られなかったため、最終手段である「行政代執行(ぎょうせいだいしっこう)」を検討する段階となっています。

項目内容
是正指導・命令行政が業者に対し、法律違反の状態を解消するよう命じること。
行政代執行業者が命令に従わない場合、行政が強制的に撤去を行い、その費用を業者に請求する制度。
費用の懸念撤去費用は数億円にのぼる可能性があり、業者が支払えない場合は公費(税金)が投入されることになります。

なぜ産業廃棄物が山のように積み上がってしまったのか

なぜ、これほどまでのゴミが放置されてしまったのでしょうか。そこには制度の隙間を突いた運用と、コスト削減という身勝手な理由があると推測されます。

「一時保管」の届け出と実際の運用の違い

産業廃棄物を運搬する際、積み替えのために一定期間保管することは法律(廃棄物処理法)で認められています。これを「積替え保管」と呼びますが、これには厳しいルールがあります。

  • 本来のルール:保管できる高さや量、期間が厳格に決まっている。
  • 今回のケース:「一時保管」の名目でゴミを持ち込みながら、実際には処理施設へ運ばずに溜め込み続けた(=実質的な不法投棄・放置)と考えられます。
出典:廃棄物処理法

(産業廃棄物処理業)
第十四条 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov 法令検索

解体工事の廃材が適正処理されなかった可能性

解体業者にとって、大きなコストの一つである「廃棄物の処分費用」。
通常、解体工事で出たゴミは処分場にお金を払って引き取ってもらいますが、今回のケースでは、「解体依頼主から処分費用を受け取りながら、実際には処分場へ運ばず、自社の敷地に積み上げて経費を浮かせていた」という構造も推測されます。

解体工事で発生した廃棄物の適正な処理過程

本来、解体工事で発生した廃棄物は、以下のステップで適正に処理されます。

解体現場から最終処分までの流れ

解体工事は「壊して終わり」ではなく、壊した後の「分別」と「運搬」作業も重要です。

  1. 分別解体:現場で木、鉄、コンクリートなどを手作業で細かく分ける。
  2. 収集運搬:許可を持った業者が、専用のトラックで中間処理施設へ運ぶ。
  3. 中間処理:焼却、破砕、選別を行い、再利用できるものとできないものに分ける。
  4. 最終処分:再利用できないカスを、管理された埋立地(最終処分場)へ運ぶ。

マニフェスト制度が果たす役割

不法投棄を防ぎ、廃棄物が最後まで適正に処理されたかを確認するための仕組みが「マニフェスト制度」です。解体業者が発行するマニフェストは7枚綴りの複写式になっており、処理の工程が進むごとに各業者で控えを保管し、最終的に依頼主(排出事業者)の手元に「正しく終わりました」という報告が戻る仕組みになっています。

マニフェストの流れと役割

種類名称役割(いつ、誰が保管するのか)依頼主が確認すべきポイント
A票排出事業者控え廃棄物を引き渡した際、解体業者がその場で切り離して保管するもの。運搬業者の氏名や、廃棄物の種類・数量が正しく記載されているか。
B1票運搬業者控え運搬業者が、自分が運んだ証明として保管するもの。
B2票運搬終了報告運搬業者が処分場へ届けた後、解体業者へ戻されるもの。「運搬が完了したこと」の証明。
C1票処分業者控え処分場(中間処理施設)が、受け取った証明として保管するもの。
C2票処分終了報告処分場から運搬業者へ戻されるもの。運搬業者が「無事に処分場へ渡した」という控え。
D票中間処理終了報告中間処理(分ける・砕くなど)が終わった後、解体業者へ戻されるもの。「中間処理が完了したこと」の証明。
E票最終処分終了報告最終処分(埋め立てやリサイクル)が終わった後、解体業者へ戻されるもの。「すべての処理が完了したこと」の最終的な証明。

依頼主がチェックすべき「3つの戻り」

解体工事を依頼した際、専門的な7枚すべてを把握する必要はありませんが、解体業者から以下のコピーを見せてもらう(または原本を確認する)ことで、不法投棄のリスクを回避できます。

  1. B2票: 現場から運び出されたか?
  2. D票: 中間処理(リサイクルなど)がされたか?
  3. E票: 最終的にゴミとして残ったものが正しく処理されたか?
運営者 稲垣

特にE票は、最終処分が完了しない限り発行されません。これ(または写し)が手元に届けば、自宅の廃材が適切に処理された確かな証拠となり、京都市のニュースのような「産廃の山」として不法投棄される心配はありません。

解体工事を依頼する人が知っておきたいチェックポイント

1. 業者選びのチェックポイント

業者選びの際は、見積もりの安さだけで判断せず、以下の点を確認しましょう。

  • 許可証の確認
    解体工事で出た廃棄物を運搬するには「産業廃棄物収集運搬業許可」が必要です。必ず許可証の写しを提示してもらいましょう。許可番号や事業範囲(どの品目をどこへ運べるか)が記載されています。許可は都道府県ごとに出されるため、工事現場と処分場の両方が許可エリアに含まれているかの確認が必要です。
  • マニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行
    マニフェストは、廃棄物が適正に処理されたことを証明する「伝票」です。契約前に「マニフェストを発行し、最終処分が完了した後にE票の写しを必ず渡してくれるか」を明確に確認し、その旨を契約書にも記載してもらいましょう。
  • 詳細な見積書の確認
    「解体工事一式」「廃棄物処理費一式」といった大雑把な見積書を出す業者は危険です。木くず、コンクリートがら、金属くず、石膏ボードなど、廃棄物の種類ごとに数量と単価、処理費用が細かく記載されているかを確認しましょう。透明性の高い見積書は、優良な業者の証です。

2. 信頼できる情報の収集方法

  • 自治体のWebサイト:各都道府県の産業廃棄物担当部署のウェブサイトでは、許可を持つ業者の一覧や、過去に行政処分を受けた業者の情報が公開されています。契約前の確認をおすすめします。
  • 優良産廃処理業者認定制度:環境省が設けている制度で、遵法性や事業の透明性など厳しい基準をクリアした業者を認定しています。この認定を受けている業者は、信頼性が高いと言えます。

3. 契約から工事完了後のポイント

  • 契約書の確認:廃棄物処理に関する項目(マニフェストの発行義務など)が明記されているかを必ず確認してください。口約束は避け、すべてを書面に残すことが重要です。
  • マニフェストの確認:工事完了後、業者からマニフェストの写しを受け取り、解体で発生した廃棄物が適正に処理されているのを確認します。

まとめ

今回は、京都市伏見区の「産業廃棄物の山」についてのニュースを解説しました。最後にこの記事の要点をまとめます。

  • 保管ルールの逸脱:本来、運搬の過程で認められている「積替え保管」の基準(高さや量)を無視し、処理施設へ運ばずに溜め込み続けたことが原因と推測しました。
  • 不適切なコスト削減:依頼主から処分費用を受け取りながら、実際には処分場へ運搬・搬入せず、自社敷地に積み上げることで経費を浮かせていた可能性があります。
  • マニフェストの重要性:廃棄物が「現場から運び出され(B2票)」「中間処理され(D票)」「最終処分が完了した(E票)」ことを確認できる7枚綴りのマニフェスト制度が、適正処理のポイントです。

解体工事は建物を壊して終わりではなく、発生した廃棄物が法に基づき最後まで適正に処理されて初めて完了します。安価すぎる見積もりに惑わされず、許可証の確認やマニフェスト(E票)の受け渡しを徹底する業者を選ぶことが、依頼主として「不法投棄のトラブル」に巻き込まれないための防衛策です。

なお、以下の記事では優良業者の選び方についてより詳しく解説しています。よろしければあわせてご確認ください。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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