【解体ニュース解説】入管庁と国交省が解体業の不法就労を合同調査へ

不法就労 合同調査のサムネイル
稲垣 瑞稀

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稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、解体工事や空き家問題について全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

出入国在留管理庁と国土交通省は、建物の解体工事業者を対象とした合同での立ち入り調査を実施する方針を固めました。近年、解体現場や金属・自動車の解体・保管作業場(ヤード)で外国人の不法就労が確認されていることなどを受け、省庁が連携して不正行為の実態解明と取り締まりを進めます。

解体業界では深刻な人手不足が続いており、多重下請け構造の中で雇用管理が行き届かないケースもあります。また、無許可での工事や不適切な廃棄物処理なども問題となっており、業界全体で法令遵守の徹底が求められています。

本記事では、今回の合同調査が実施される背景や関連する法令、安全に解体工事を任せられる業者を見極めるためのポイントについて、専門的な視点からわかりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 入管庁と国交省が「合同立ち入り調査」に踏み切った背景と狙いがわかる
  • 解体現場やヤードが不法就労の温床となる構造的な要因がわかる
  • 入管法・建設業法などの関係法令と違反業者に対する行政処分がわかる
  • 解体工事の依頼時にトラブルを避けるための「業者選びの3ステップ」がわかる
目次
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ニュースの概要

  • 発生場所:全国各地域
  • 報道日:2026年9月9日
  • 対象:建物の解体工事業者
  • 事案:出入国在留管理庁が不法就労の摘発強化に向け、10月にも国土交通省と合同で解体工事業者を対象とした立ち入り調査を実施する方針を固めた。 建物解体業や金属・廃車ヤードが外国人不法就労の温床になっているとの指摘を受け、省庁連携による不正行為や無許可営業、在留資格の確認・取り締まりを本格化させる。

出入国在留管理庁は、外国人の不法就労の摘発を強化するため、今秋から他省庁と合同で立ち入り調査を行う方針を固めた。現在は通報などで不法就労の疑いが判明した場合のみ調査を実施しているが、所管する省庁による調査に入管庁の職員も同行する。まず国土交通省と10月にも解体業者を対象に行う予定だ。

引用:入管庁、「不法就労」摘発強化へ他省庁と合同で立ち入り調査…10月にも国交省と解体業者対象に実施へ|Yahoo!ニュース

外国人の不法就労が増加している背景

解体業界では、職人の高齢化などを背景に深刻な人手不足が続いています。特に建物の内装解体や廃材の仕分け・運搬などは重労働で、必要な人材を確保することが大きな課題となっています。

人手不足のなかでも工事を受注するには、限られた予算のなかで必要な作業員を確保しなければなりません。さらに価格競争が激しくなると、工事費を抑えるために人件費の削減を迫られる場合もあります。

こうした状況に加えて多重下請けが重なると、元請け業者が実際に現場で働く作業員の雇用状況を把握しにくくなります。その結果、在留資格の確認が十分に行われないまま外国人が雇用され、不法就労につながるリスクが高まります。

解体現場で外国人の不法就労が起こる大きな背景には、こうした人手不足・価格競争・多重下請けによる雇用管理の難しさがあります。

人手不足・価格競争・多重下請け構造が重なることで、解体現場で外国人の不法就労が発生しやすくなる環境を示した解説図

なぜ合同での立ち入り調査が行われるのか?

今回の合同調査の大きな目的は、解体現場やヤードにおける外国人の不法就労を把握し、摘発や抑止につなげることです。

解体現場での不法就労は、作業員の雇用関係や在留資格などを個別に確認する必要があるため、1つの行政機関だけでは実態を把握しにくい面があります。そこで、入管庁と国交省が連携して現場を調査する体制が取られます。

単独の調査では「不法就労」を把握しにくい理由

現在行われている調査では、それぞれの機関が担当する分野に応じて現場を確認しています。

  • 国交省・自治体 → 工事や業者を確認
    国土交通省や自治体は、解体工事の許可や施工体制などを確認します。一方、外国人作業員の在留資格は入管庁などが確認するため、国土交通省や自治体の調査だけでは不法就労まで把握できません。
  • 入管庁・警察 → 外国人の在留資格を確認
    入管庁や警察は、外国人作業員の在留資格や不法就労について確認します。一方、不法就労の通報や情報提供などを端緒に調査するケースが中心で、個別の工事現場を直接調査する機会は限られています。

さらに解体現場では元請けと複数の下請け業者が関わることがあり、作業員の雇用関係や施工体制が複雑になりやすいことも不法就労の実態を把握しにくくする要因です。

運営者 稲垣

このように、単独の調査では確認できる範囲に限界があるため、工事の実態と外国人作業員の在留資格を一体的に確認するための合同調査が行われます。

違反した事業者にはどのような罰則があるのか?

外国人を不法に働かせた場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金、もしくはその両方が科される可能性があります。また、無許可で解体工事を請け負った場合や、廃材を不法投棄・不適正処理した場合なども違反内容に応じて刑事罰や行政処分の対象となります。

問題・違反内容根拠となる法律・条文主な罰則(刑事罰)
外国人の不法就労出入国管理及び難民認定法 第73条の23年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
無許可での建設業建設業法 第47条3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
無登録での解体工事建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第48条1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
産業廃棄物の不法投棄廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第25条・第32条など5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金
※法人には3億円以下の罰金が科される場合がある
届出義務違反建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第51条など20万円以下の罰金など、違反内容によって異なる
ヤードの無届・無許可営業自治体のヤード適正化条例など自治体によって異なる
出典:出入国管理及び難民認定法、建設業法、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律

第七十三条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の禁固刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
二 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
三 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者

引用:出入国管理及び難民認定法|e-Gov法令検索

第四十七条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだとき。

引用:建設業法|e-Gov法令検索

第四十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第二十一条第一項の規定に違反して登録を受けないで解体工事業を営んだ者

(中略)

第五十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
一 第十条第一項又は第二項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

引用:建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律|e-Gov法令検索

第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第七条第一項若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは第六項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行つた者

(中略)

第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第二十五条第一項第一号から第四号まで、第十二号、第十四号若しくは第十五号又は第二項 三億円以下の罰金刑

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov法令検索

合同立ち入り調査の今後の動き

合同立ち入り調査をはじめ、解体業界やヤードを取り巻く監視体制は強化されています。今後は行政機関の連携・ヤードへの規制・外国人材の適正な雇用など、業界全体の適正化に向けた取り組みが進んでいくと考えられます。

省庁・自治体による合同立ち入り調査が進む

出入国在留管理庁・国土交通省・警察・自治体などが連携し、建設業の許可状況や施工体制、廃棄物の処理、作業員の在留資格などを同じ現場で確認する取り組みが進んでいます。

複数の機関が一緒に調査することで、1つの行政機関だけでは確認できなかった違反も調査しやすくなります。今後も、こうした連携による取り締まりが続くことで事業者にはより厳格な法令遵守が求められます。

「ヤード適正化条例」による規制が広がる

千葉県・茨城県・愛知県などでは独自の「ヤード適正化条例」などを制定し、ヤードの設置に関する届出や立入検査などの規制を設けています。こうした条例が広がれば、無届で営業するヤードや周辺環境に問題のある事業者への監視が強まり、ヤードの適正な運営がより重視されるようになります。

特定技能制度などによる外国人材の適正雇用が進む

建設業では人手不足が続いており、外国人材の受け入れも重要です。そのため今後は不法就労に頼るのではなく、特定技能制度などの適正な制度を利用して外国人材を雇用することが重要です。

在留資格の確認や社会保険への加入など必要な労務管理を徹底することで、外国人材を適正に受け入れられる雇用体制の整備が求められます。

解体工事を依頼する際に注意すべきこと

では、不法就労や法令違反を行う悪質業者を避け、安心して工事を完了させるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、トラブルを避けるための業者選びを3つのステップに分けて解説します。

ステップ1:許認可の有無と施工体制を確認する

見積もりを依頼する際は、業者が「解体工事業登録」または「建設業許可(解体工事業)」を取得しているか確認しましょう。許可・登録番号を聞き、自治体などの公的な情報と照合することも大切です。

運営者 稲垣

併せて「自社で施工するのか」「下請け業者に依頼するのか」を確認し、誰が工事を担当するのか明確な業者を選びましょう。

解体工事に必要な許可や資格については、以下の記事で詳しく解説しています。

ステップ2:極端に安い見積もりは避け、内訳を確認する

他社と比較して極端に安い見積もりには注意が必要です。正規の人件費や産業廃棄物の処理費用などが十分に計上されていない可能性があります。特に「養生費」や「産業廃棄物の運搬・処分費」などが具体的に記載されているか確認し、工事に必要な費用が適切に含まれているか確認しましょう。

見積書のチェックポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ステップ3:産業廃棄物の処理方法を事前に確認する

解体工事で発生した木くずやコンクリートくずなどが適正に処理されるよう、契約前に「どの業者が収集・運搬し、どの処分先で処理するのか」を確認しておきましょう。また、「マニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付しているか」「処理が完了したことをどのように確認できるか」を業者に聞いておくと安心です。

なお、優良業者の選び方の全容は、以下の記事からご確認いただけます。

まとめ

今回は出入国在留管理庁と国土交通省が連携して実施する「解体工事業者への合同立ち入り調査」について、その背景や業界の構造的な課題、今後の動きを解説しました。

本記事の重要ポイントを改めて整理します。

  • 合同立ち入り調査の実施
    入管庁と国交省が連携し、外国人の不法就労を摘発・抑止するための合同立ち入り調査が10月にも実施される予定です。
  • 不法就労が起きる背景
    深刻な人手不足・価格競争・多重下請け構造により、現場での適切な雇用管理や在留資格の確認が行き届きにくい現状があります。
  • 合同調査の狙い
    現在の調査方法から国交省と連携して現場へ直接立ち入る体制へシフトすることで、不法就労の温床を根本から断つ狙いがあります。
  • 解体工事を依頼する際の注意点
    不法就労などの不正を行う業者を避けるため、解体工事を依頼する際は「許認可の有無」「見積もり内訳」「産業廃棄物の処理体制」を事前に確認します。
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今回の合同立ち入り調査を受け、解体業界では法令に沿った事業運営がより求められます。こうした動きを踏まえて、解体工事の依頼主も許認可や施工体制を確認したうえで適切な業者を選ぶことが大切です。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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