この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 病院解体の費用相場と、構造別の坪単価の目安がわかる
- 医療廃棄物・レントゲン室・医療機器など、病院解体で費用が加算される主な要因がわかる
- 病院解体の流れと、医療機関の廃止届など必要な行政手続きがわかる
- 信頼できる解体業者を選ぶために確認すべき許可・実績・保険のポイントがわかる
病院の解体費用は、平均坪単価43,098円/坪が目安で、50坪の場合は約155万〜260万円が一般的な相場です。
ただし、医療施設にはレントゲン室の鉛や医療ガス配管、大型医療機器などの設備があるため条件によっては費用が大きく変わる場合があります。
この記事では、病院解体の費用相場や費用が加算される主な要因、必要な行政手続き、実際の解体事例や費用を抑えるためのポイントについて分かりやすく解説します。
監修者
現場解説一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー
初田 秀一(はつだ しゅういち)
解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。
運営責任者「スッキリ解体」編集長
稲垣 瑞稀(いながき みずき)
解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。
執筆「スッキリ解体」専属ライター
酒巻 久未子(さかまき くみこ)
「解体工事でお悩みの方に、同じ主婦の立場から実用的な情報をお届けします。」
数多くのお客様や業者様へのインタビューを通じて、お客様が抱えるリアルな悩みに精通。実際の解体工事現場での取材を重ね、特に「お金」や「近隣トラブル」といった、誰もが不安に思うテーマについて、心に寄り添う記事を執筆。子育て中の母親ならではの、きめ細やかな視点も大切にしている。
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病院解体の費用相場

病院解体の平均坪単価相場は、43,098円/坪です。
この坪単価をもとにすると、50坪の病院の解体費用は約155万~260万円が目安で、平均相場は約215万円です。
なお内装解体の場合は、50坪で約171万円が目安となります。
構造別の坪単価と50坪換算の費用目安は次の通りです。
| 構造の種類 | 坪単価の目安 | 平均坪単価 | 50坪の場合の費用目安 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 25,677円~66,546円/坪 | 38,693円 | 約193万円 |
| 木造(病院兼住宅) | 25,000円~39,762円/坪 | 31,076円 | 約155万円 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 21,962円~107,201円/坪 | 52,061円 | 約260万円 |
| 鉄骨造 | 29,812円~85,284円/坪 | 50,560円 | 約253万円 |
| 内装解体 | 8,933円~78,316円/坪 | 34,162円 | 約171万円 |
※上記の坪単価データは、監修の「あんしん解体業者認定協会」が保有する2023年~2024年の全国約1,200社の見積もりデータを基に算出した独自のものです。
医療設備の撤去や特殊な内装がある場合は、上記の相場より高くなる場合があります。
病院解体で費用が加算される要因
医療施設特有の設備や有害物質、特殊な廃棄物の処理が必要になるため、病院の解体費用は一般的なビルや住宅より高くなる傾向があります。
通常の産業廃棄物のように一括処分できず、専門業者による分別・撤去・処理が求められるため、解体費用が増える要因となります。
ここでは、病院解体で費用が上がりやすい主な要因を解説します。
医療廃棄物の処理

病院では、次のような感染リスクのある医療廃棄物が発生します。
- 注射針
- メス
- 血液が付着したガーゼ
- 使用済みの薬品
これらは感染性があるため、「特別管理産業廃棄物」として厳格な処理が必要です。
解体前には建物内の医療廃棄物を専用容器に密閉して認可運搬業者が回収し、焼却施設または滅菌施設で処分します。
通常の産業廃棄物より処分単価が高く、運搬費やマニフェスト(管理票)の管理費用も発生するため、解体費用が増える要因になります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第二条 5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。
レントゲン室(X線室)の鉛撤去

レントゲン室には、放射線を遮蔽するため壁や扉の内部に鉛シートが埋め込まれています。解体時にはこの鉛を分別・回収する作業が必要です。
鉛は重金属のため、コンクリート殻と混合して処分できません。壁の内部に貼られた鉛シートを手作業で剥がして回収する工程が必要になり、人件費が増加します。
また、回収した鉛は有害物質を含む廃棄物として処理されるため、処分費用が高くなる傾向があります。
大型医療機器の搬出

MRIやCTなどの大型医療機器の撤去は、専門業者やメーカーの立ち会いが必要な作業です。主な理由は次の通りです。
- 機器の重量が数トンにおよぶ
- MRIには強力な磁石が使われている
- 冷却用のヘリウムガスが含まれる場合がある
そのため、撤去作業ではメーカーの専門エンジニアによる解体や大型クレーン車による搬出、特殊車両での運搬などが必要です。
さらに、搬出経路を確保するために外壁を一部解体して機器を取り出す工事が必要になる場合もあるため、仮設工事費が追加される可能性があります。
医療ガス配管の撤去
医療ガス配管は残留ガスの処理が必要です。病院には、酸素・吸引・笑気ガス・窒素などを供給する医療ガス配管が設置されています。
解体前に医療ガス設備の専門業者が事前処理を行う必要があり、その費用が通常の解体工事とは別に加算されます。
具体的には、まず配管内のガスを完全に抜き取り、窒素などで洗浄します。次に、供給源との接続を遮断する閉塞処理を行い、安全に撤去できる状態にします。
この工程を経て、配管が安全な金属管の状態になってから、解体業者が建物の解体とあわせて撤去する流れになります。そのため、見積もりでは医療ガス設備の専門業者への外注費として計上されるのが一般的です。
出典:高圧ガス保安法
(廃棄)
第二十五条 経済産業省令で定める高圧ガスの廃棄は、廃棄の場所、数量その他廃棄の方法について経済産業省令で定める技術上の基準に従つてしなければならない。
引用:高圧ガス保安法|e-Gov法令検索
地下タンクの撤去と土壌汚染調査
一定規模以上の病院には、非常用発電機の燃料を保管する地下タンクが設置されているケースがあります。停電時でも医療機能を維持するために自家発電設備が必要であり、その燃料を安全に保管する目的で設置されるものです。
解体時には、この地下タンクが消防法上の「危険物施設」に該当するため事前に届け出を行い、残っている燃料の抜き取りやガス抜きなどの安全処理が必要になります。
さらに、病院では薬品などを扱っていることが多いため、土壌汚染の有無を調査する必要が生じる場合があります。汚染が確認された場合は、土壌の除去など追加対応が必要となり、費用が増加する要因となります。
また、地下タンクは建物本体ではなく付帯設備として扱われます。そのため、図面や現地調査で初めて判明する場合も多く、費用に大きく影響するポイントのひとつです。
出典:消防法
第十二条の六 製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の用途を廃止したときは、遅滞なくその旨を市町村長等に届け出なければならない。
引用:消防法|e-Gov法令検索
出典:土壌汚染対策法
第三条 使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設(第三項において単に「特定施設」という。)であって、同条第二項第一号に規定する物質(特定有害物質であるものに限る。)をその施設において製造し、使用し、又は処理するものをいう。以下同じ。)に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)であって、当該有害物質使用特定施設を設置していたもの又は第三項の規定により都道府県知事から通知を受けたものは、環境省令で定めるところにより、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、環境大臣又は都道府県知事が指定する者に環境省令で定める方法により調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。ただし、環境省令で定めるところにより、当該土地について予定されている利用の方法からみて土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の都道府県知事の確認を受けたときは、この限りでない。
引用:土壌汚染対策法|e-Gov法令検索
強固な基礎の撤去
病院の解体では、通常よりも強固な基礎の撤去が必要になる場合があります。MRIやCTなどの重量機器を支えるため、床下に厚くて硬いコンクリートや高密度の鉄筋が使用されています。
その結果、費用が高くなる主な要因は以下の通りです。
- コンクリートが厚く硬いため、破砕に時間がかかる
- 廃材(コンクリート殻)の量が多く、処分費が増える
- 防振・除振構造により、分別しながらの撤去が必要になる
- 騒音・振動対策として、低振動工法などの追加対応が必要になる
強化基礎の有無や構造は見積もりに大きく影響するため、事前の図面確認や現地調査が重要なポイントになります。
アスベスト調査と撤去工事
古い病院では、防火・断熱材としてアスベスト(石綿)が使用されている場合があります。2022年4月の法改正により、一定規模以上の解体工事では事前調査と自治体への報告が義務化されました。
アスベストが確認された場合は、作業場所の隔離や飛散防止対策を行いながら専門業者が除去する必要があるため、数十万~数百万円程度の追加費用が発生する可能性があります。
なお、アスベストの詳細については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

病院解体の施工事例
【事例1】愛知県春日井市の病院解体事例
見積書の書き起こしを表示する
| 品名 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 単管足場+養生シート設置 | 200 | m2 | 900 | 180,000 |
| 散水設備設置 | 1 | 式 | 5,000 | 5,000 |
| 屋根材・内部照明・住基設備撤去 | 165 | m2 | 1,500 | 247,500 |
| 躯体工事(機械解体・手解体) | 165 | m2 | 3,500 | 577,500 |
| 基礎解体工事 | 84 | m2 | 2,000 | 168,000 |
| 発生廃材運搬処分 | 165 | m2 | 3,000 | 495,000 |
| 看板 | 1 | 式 | 5,000 | |
| 近隣対策費用・管理費用(近隣挨拶粗品含む) | 1 | 式 | 5,000 | |
| 特定建設作業・書類作成及び申請代行 | 1 | 式 | 5,000 | |
| 重機回送(往復) | 2 | 回 | 30,000 | 60,000 |
| 調整値引き | 1 | 式 | -48,000 | |
| 消費税 | 170,000 | |||
| 合 計 | 1,700,000 | |||
「屋根材・内部照明・住基設備撤去」など、医療施設特有の設備を撤去する工程が計上されています。一般的な住宅に比べて設備の種類や廃材が多いため、病院解体では設備撤去費と廃材処理費が分けて記載されます。
【事例2】神奈川県藤沢市の病院解体事例
見積書の書き起こしを表示する
| 品名 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 諸官庁届出 | 1 | 式 | 25,000 | |
| 業務用エアコンフロンガス回収破壊 | 6 | 台 | 20,000 | 120,000 |
| アスベスト検体調査 | 1 | 検体 | 35,000 | 35,000 |
| 共用部養生 | 1 | 式 | 50,000 | |
| 搬出時交通誘導員 | 5 | 日 | 20,000 | 100,000 |
| 内装解体工事 | 154.5 | m2 | 6,000 | 927,000 |
| レントゲン室解体 | 6.5 | m2 | 11,000 | 71,500 |
| 廃材場内小運搬及び積込 | 161 | m2 | 1,800 | 289,800 |
| 廃材運搬費 | 161 | m2 | 2,200 | 354,200 |
| 廃材処分費 | 161 | m2 | 6,000 | 966,000 |
| 外部袖看板・平外看板撤去 | 1 | 式 | 80,000 | |
| 現場管理費 | 1 | 式 | 80,000 | |
| 現場経費 | 1 | 式 | 150,000 | |
| 端数調整 | 1 | 式 | -8,500 | |
| 消費税 | 324,000 | |||
| 合 計 | 3,564,000 | |||
医療施設特有の設備である「レントゲン室解体」の項目が個別に計上されています。また、解体で発生した廃材は工程ごとに管理され、「廃材運搬費」と「廃材処分費」が分けて記載されています。
【事例3】兵庫県神戸市の病院解体事例
見積書の書き起こしを表示する
| 品名 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 内装解体撤去 | 100 | m2 | 6,000 | 600,000 |
| レントゲン室 | 1 | 式 | 100,000 | 100,000 |
| 建具、棚、収納 | 1 | 式 | 50,000 | 50,000 |
| 天井解体 | 80 | m2 | 6,000 | 480,000 |
| 床解体 | 80 | m2 | 4,000 | 320,000 |
| 諸経費 | 1 | 式 | 20,000 | 20,000 |
| 消費税 | 157,000 | |||
| 合 計 | 1,727,000 | |||
医療設備がある「レントゲン室」の解体費用が、個別の項目として計上されています。また設備が多い医療施設では、「建具、棚、収納」などの撤去費用も別途記載される場合が多いです。
病院の解体工事の流れ
病院の解体工事は、住宅の解体と異なり医療機関としての行政手続きや有害物質の除去が必要です。
建物を取り壊す前にこれらの工程を行わなければ、法令違反や追加費用の原因になります。そのため、解体までの準備期間が長くなる傾向があります。
一般的な病院解体の流れは次の通りです。
1. 医療機関としての閉鎖・行政への届け出
解体前に、医療機関としての廃止手続きを行います。主な届け出は次の通りです。
- 保健所への医療機関の廃止届
- レントゲン室など放射線設備の使用廃止届
これらは医療法に基づく手続きで、病院解体では必ず先に行う必要があります。
出典:医療法
第九条 病院、診療所又は助産所の開設者が、その病院、診療所又は助産所を廃止したときは、十日以内に、都道府県知事に届け出なければならない。
2. 残置物の分別と搬出
解体前に、建物内に残る医療関連廃棄物を撤去します。特に次のものは特別管理産業廃棄物として専門業者が回収します。
- 注射針・メスなどの医療器具
- 血液が付着したガーゼ
- 医薬品や薬剤
これらはマニフェスト(管理票)に基づき、認可業者が回収・処分します。住宅解体で行う一般的な家財処分とは、管理基準が大きく異なります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第十二条2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
3. 有害物質の除去
建物解体の前に、病院特有の有害物質を除去します。主な対象は次の通りです。
- アスベスト(石綿)
- レントゲン室の鉛シート
- 医療設備に関わる放射線源
これらの有害物質は、飛散や環境への流出を防ぐため、作業エリアを完全に隔離し、専用の保護具を着用したうえで除去作業を行う必要があります。
適切な処理を行わないまま建物の解体を進めると、近隣住民や作業員の健康被害につながるおそれがあり、施主側も法令違反による罰則を受けるリスクがあります。
4. 建物本体の解体
有害物質の除去が完了した後、建物本体の解体を行います。病院はRC造や鉄骨造などの強固な構造が多いため、大型の重機を使用します。
また、この工程では次の作業も行われます。
- MRIなど重量機器の基礎撤去
- 地中にある補強基礎や埋設物の撤去
5. 土地の安全確認と工事完了
解体後は土地を整地し、安全性を確認して工事が完了します。特に次の点を確認します。
- 地下タンク周辺の油漏れ
- 土壌汚染の有無
問題がなければ、最終確認を行い解体工事は完了です。
病院解体で必要な行政手続き
病院の解体工事では、通常の建物解体に必要な手続きに加えて医療機関特有の行政手続きが必要です。特に「病院の廃止」や「放射線設備の廃止」などの届け出を行わないと、解体工事を開始できない場合があります。
主な行政手続きは次の通りです。
病院・診療所の廃止届

病院を解体する場合、まず医療機関としての事業を廃止し、廃止から10日以内に管轄の保健所を通じて都道府県へ「廃止届」を提出する必要があります。
病院や診療所は行政の許可に基づいて開設されているため、建物を解体する前に医療機関としての機能を停止したことを公的に届け出る必要があります。
診療用放射線発生装置の廃止届

レントゲン室やCT室などがある場合は、放射線発生装置の廃止届を提出します。
放射線設備は厳格に管理されているため、装置を廃棄または移設した場合は廃止から10日以内に届け出を行う義務があります。
この手続きが完了するまで、レントゲン室の壁(鉛板など)を含む解体作業は認められません。
その他の届け出
病院特有の手続きに加え、通常の解体工事で必要となる行政手続きも行う必要があります。主なものは次の通りです。
- 建設リサイクル法の届出
延べ床面積が80㎡以上の建物を解体する場合、着工の7日前までに自治体へ工事計画を届け出る義務があります。
病院はコンクリートや鉄筋などの資材が多いため、分別解体の方法や廃材のリサイクル計画を事前に報告します。 - 道路使用許可申請
工事車両が公道に駐停車したり足場や養生が道路にはみ出したりする場合は、管轄の警察署へ道路使用許可の申請が必要です。
これらの手続きは施主の義務とされていますが、実務では解体業者が委任を受けて代行するケースが一般的です。
なお、届け出については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

アスベスト事前調査結果の報告
解体工事では、アスベストの有無を事前調査し、その結果を自治体へ報告する義務があります。
2022年の法改正以降、床面積80㎡以上の解体工事では結果報告が義務化されており、調査結果は着工前に提出しなければなりません。病院は築年数の古い建物が多いため、解体前に必ず調査を行います。
解体業者選びのポイント
病院の解体工事は、一般的な住宅解体と比べて医療廃棄物の処理や有害物質の管理など高い専門性が求められます。
価格だけで業者を選ぶと、不適切な処理や不法投棄などのトラブルにつながる可能性があるため、許可・実績・管理体制を確認したうえで業者を選ぶことが重要です。
医療廃棄物の収集運搬許可を確認する
解体業者または提携業者が「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」を持っているか確認しましょう。
病院解体では、注射針・薬品・感染性廃棄物などの特別管理産業廃棄物が発生する可能性があります。
見積もり時には、許可証の写し・有効期限・対応エリアを確認することが重要です。適切な許可を持たない業者に依頼すると、排出事業者である施主側が責任を問われる可能性があります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
(特別管理産業廃棄物処理業)
第十四条の四 特別管理産業廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、特別管理産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその特別管理産業廃棄物を運搬する場合に限る。)その他環境省令で定める者については、この限りでない。
有害物質処理の実績を確認する
病院の解体では、有害物質の処理実績がある業者を選ぶことが重要です。
病院には、次のような特殊な資材や有害物質が使用されている場合があります。
- レントゲン室の鉛シート
- 古い建物に使用されたアスベスト(石綿)
これらは法令に基づいた手順で撤去する必要があります。
また見積もり時には、業者の経験や工事の進め方を具体的に確認するため、次のような資料を見せてもらうと判断材料になります。
- 病院や大型施設の解体実績
- 有害物質調査の報告書サンプル
- 作業計画書の例
近隣への対応と損害賠償保険を確認する
大規模工事に伴う騒音・振動トラブルを未然に防ぐため、近隣への事前説明や配慮の取り組みと、万が一の事故に備えた「損害賠償保険」への加入状況を確認してください。
病院の解体は鉄筋コンクリート造などの強固な構造が多いため、解体時の振動や騒音が長期間続きます。
近隣住民への丁寧な事前説明会の実施や、防音・防振対策の具体的な計画を提示できる業者が信頼に値します。
また、作業中に隣接する建物へ損害を与えた場合に備え、十分な補償額の賠償責任保険に加入していることを証明する「保険証券の写し」を必ず確認してください。
なお、賠償責任保険については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

病院の解体費用を抑えるための対策
補助金制度を活用する
解体費用を抑える方法として、まず検討したいのが自治体の補助金制度です。多くの自治体では、地域の安全確保や景観維持を目的に、空き家や老朽建物の解体費用の一部を補助しています。
特に長期間使用されていない病院建築は、倒壊リスクや衛生面の問題から、「特定空家等」などの助成対象となる可能性があります。
補助金は解体工事の着工前に申請が必要なため、事前に自治体へ確認しておくことが重要です。
なお、病院の解体工事のみを対象とした国の補助金制度はありません。
ただし、耐震化に伴う建て替えや病院の再編・統合などを予定した施設整備では、旧施設の解体費用が補助対象に含まれる厚生労働省の「病床機能再編支援事業」があります。
なお、補助金制度については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

医療機器を売却・譲渡する
解体前に医療機器を売却することで、処分費用を削減できる場合があります。病院には中古市場で需要のある設備が多く、専門業者へ売却すれば解体費用の一部に充てられます。
売却対象になりやすい機器の例は次の通りです。
- MRI・CT
- 内視鏡装置
- 手術台
- 医療モニターなどの診療機器
これらを解体業者に処分依頼すると産業廃棄物として高額な処分費が発生しますが、売却できれば「廃棄物」ではなく資産(有価物)として扱われ、処分費の削減につながります。
分離発注を行う
解体業者へ直接依頼する「分離発注」を行うことで、中間マージンを削減し解体費用を抑えられる可能性があります。
建て替え工事の際、建設会社やハウスメーカーに解体工事もまとめて依頼するケースが一般的です。しかし、その場合は下請けの解体業者へ再委託されることが多く、10~20%程度の中間マージンが上乗せされる場合があります。
解体業者に直接見積もりを依頼すれば、中間マージンを省いた価格で工事を依頼できるケースが多いです。また、契約内容が明確になり、費用の透明性が高まる点もメリットです。
病院の解体に関するよくある質問
閉院予定ですが、カルテの処分はどうしたらいいでしょうか?
医師法に基づき閉院後も5年間の保管義務があり、開設者が責任を負います。
自宅保管が難しい場合は、専門の外部保管サービスや承継先への引き継ぎを検討しましょう。保存期間経過後は、情報漏洩を防ぐため専門業者による溶解や裁断処理が必要です。通常のゴミに出さず、法律に則り適正に管理・処分してください。
出典:医師法
第二十四条 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
2 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。
近隣住民や他の医療機関への挨拶はどのようにするべきですか?
着工の少なくとも2週間前までに、騒音・振動の影響や車両の動線、作業時間を明記した書面を持参して丁寧な説明を行う必要があります。
特に近隣に他の医療機関がある場合、解体工事の振動が精密医療機器(顕微鏡やCTなど)の精度に影響を与えたり、騒音が静養中の患者に負担を強いたりするリスクがあります。
周辺施設に対しては、工事期間の周知だけでなく、振動が激しくなる工程のスケジュール調整や、緊急時の連絡体制の構築を事前に行うことで、大きなトラブルを未然に防げます。
病院解体の跡地を活用する場合、危険ではないですか?
法律に基づき特別管理産業廃棄物を適正に処理し、土壌汚染調査と浄化を完了させていれば、安全性に問題はありません。
病院の跡地で懸念されるのは「医療廃棄物の残存」や「薬品による土壌汚染」ですが、これらは法律によって厳格な管理が義務付けられています。特に、検査室などで薬品を使用する「有害物質使用特定施設」に該当する病院を廃止・解体する際は、土壌汚染対策法第3条に基づき、指定調査機関による汚染状況調査が必須です。
また、注射針などの感染性廃棄物についても、廃棄物処理法第12条の2により、認可業者による完全な処理が定められています。これらの工程を経て、基準値を超える有害物質が検出されないことが証明されれば、一般の住宅用地と同様の安全性が確保されます。
出典:土壌汚染対策法
第三条 使用が廃止された有害物質使用特定施設(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第二項に規定する特定施設(第三項において単に「特定施設」という。)であって、同条第二項第一号に規定する物質(特定有害物質であるものに限る。)をその施設において製造し、使用し、又は処理するものをいう。以下同じ。)に係る工場又は事業場の敷地であった土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)であって、当該有害物質使用特定施設を設置していたもの又は第三項の規定により都道府県知事から通知を受けたものは、環境省令で定めるところにより、当該土地の土壌の特定有害物質による汚染の状況について、環境大臣又は都道府県知事が指定する者に環境省令で定める方法により調査させて、その結果を都道府県知事に報告しなければならない。ただし、環境省令で定めるところにより、当該土地について予定されている利用の方法からみて土壌の特定有害物質による汚染により人の健康に係る被害が生ずるおそれがない旨の都道府県知事の確認を受けたときは、この限りでない。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法
第十二条 2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
MRIやCTなどの大型医療機器が残っていますが、解体業者に処分を任せても良いでしょうか?
解体業者に任せず、中古医療機器の買取専門業者への売却がオススメです。
解体業者に処分を依頼すると、大型医療機器は「産業廃棄物」として高額な処分費用がかかります。
しかし、医療機器買取業者へ売却すれば、処分費用をゼロにできるだけでなく、売却益を解体費用に充てられます。
レントゲン室の壁に使用されている鉛は、解体後にそのままリサイクルできますか?
コンクリートから完全に剥離・分別されていれば有価物としてリサイクル可能ですが、混ざった状態では高額な処分費がかかります。
レントゲン室の遮蔽材である鉛シートは、解体作業員による手作業での剥離・分別が必要です。
コンクリート殻に鉛が混入した状態では、有害物質を含む廃棄物として最終処分費用が大幅に加算されます。適切に分別された鉛は専門業者が買い取る場合があるため、見積もり時に「鉛の分別と買取の有無」を業者へ確認してください。
まとめ
病院の解体工事は、一般的な住宅解体と比べて専門性が高く、医療廃棄物の処理や有害物質の管理、行政手続きなど多くの工程が必要になります。
とくに次のような要素は、病院の解体費用が加算される要因になります。
- 医療廃棄物や感染性廃棄物の処理
- レントゲン室の鉛シート撤去
- MRI・CTなど大型医療機器の搬出
- 医療ガス配管の安全処理
- アスベスト調査・除去工事
また、病院解体では医療機関の廃止届や放射線設備の廃止届などの行政手続きも必要になります。これらの手続きを行わないと工事が進められないため、事前準備を十分に行うことが大切です。
費用を抑えるためには、次のような対策を検討してみましょう。
- 自治体の解体補助金を確認する
- MRI・CTなどの医療機器を売却する
- 解体業者へ直接依頼する「分離発注」を検討する
病院解体では医療廃棄物の処理許可や有害物質処理の実績を持つ業者を選ぶことが重要です。見積もり時には解体実績や作業計画書、保険加入状況なども確認し、信頼できる業者に依頼しましょう。









