この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 小型ショベルカーの転落事故が発生した背景
- 事故に至った複合的な要因とリスク
- 再発防止に向けた具体的な安全対策と現場管理のポイント
香川県三豊市の県立高校旧校舎の解体現場で、小型ショベルカーが2階から転落し、作業員が死亡する事故が発生しました。解体工事では重機による作業が日常的に行われる一方で、作業環境や現場判断のわずかな違いが重大な事故につながるリスクを伴います。
この記事では、事故の背景や発生要因を整理するとともに、労働安全衛生規則に基づく問題点や、今後求められる具体的な再発防止策について解説します。
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ニュースの概要
- 発生場所:香川県三豊市豊中町笠田竹田の県立笠田高校の旧校舎
- 報道日:2026年3月20日
- 事案:香川県三豊市の県立高校旧校舎の解体現場で、小型ショベルカーが2階ベランダの開口部から約4m転落。運転していた36歳男性作業員が死亡。廃棄物集積作業中にバランスを崩したとみられ、当時は約20人で作業中だった。
20日午前8時35分ごろ、香川県三豊市豊中町笠田竹田の県立笠田高校の旧校舎で、解体作業をしていた小型ショベルカーが2階から転落しました。この事故で、ショベルカーを運転していた香川県三木町の土木作業員の男性(36)が救急搬送されましたが、病院で死亡が確認されました。
【背景】なぜ開口部付近で重機を使用したのか
解体現場では、次のような理由で小型ショベルカーが使用されたと推測されます。
- 廃棄物搬出の効率化
2階以上で発生したコンクリートガラや撤去設備は、ベランダなどに設けた開口部から地上へ直接落とす方法が最も効率的です。小型ショベルカーを使えば、人力では困難な重量物もまとめて開口部まで運搬し、そのまま搬出できます。 - 労働負荷の低減と工期短縮
エアコンなどの廃棄物集積は手作業では時間がかかるため、重機の使用が一般的です。作業員が20人の場合でも、重機を使った方が大幅な省力化と工期短縮につながるため、リスクのある場所でも使用される判断になりやすい状況でした。 - 作業スペースの確保
校舎内部は壁や柱で重機の可動域が制限されますが、ベランダ付近は開放的で旋回や投下作業が行いやすい環境です。ただし、ベランダは本体構造に比べて耐荷重が低く、重機の使用場所としては本来不適切であり、安全面で大きなリスクを伴います。
転落事故の要因
1. 動作に伴う重心の移動

小型ショベルカーは、停止時よりも作業中の方が転倒リスクが大きく高まります。アームを伸ばして廃棄物を集めると重心は前方へ移動し、さらに荷を持った状態で旋回すると遠心力と重心の偏りが生じます。
こうした動作を開口部の際で行うと、重機がわずかに動いただけでも重心が支点(開口部の端)を越え、一気にバランスを崩して転落につながります。
2. 縁の損壊と耐荷重不足
2階ベランダの端部は、重機による作業を想定した構造ではない可能性があります。端に寄ることで局所的に大きな荷重(点荷重)がかかり、コンクリートにせん断破壊が生じたのかもしれません。特に解体中の建物では、振動や既存の作業によって亀裂が入っていることも多く、重機の荷重に耐えきれず縁が崩れたと考えられます。
3. 物理的な抑止措置の欠如
本来、開口部付近で重機を使用する場合は、機体の進入を物理的に制限する「車止め」などのストッパーを設置する必要があります。こうした安全対策が講じられていなかった可能性があります。
4. 作業員配置と安全管理体制の不備
当時、現場には約20人の作業員がいましたが、それぞれが担当作業に集中しているため、特定の重機の動きを全員で監視できる状況ではありません。
重機の作業指揮者や誘導員が適切に配置され、危険箇所への接近を制止する体制が十分に機能していなかったことも、事故を防げなかった要因と考えられます。
運営者 稲垣今回の事故は、「重機の重心移動」と「建物端部の構造的弱さ」を十分に考慮せず、開口部付近まで接近したことが主因と考えられます。
また、労働安全衛生規則第151条の6に基づく転落防止措置をとらず、約20名体制でも危険を抑止できない現場管理の不備も要因といえます。
出典:労働安全衛生規則
(転落等の防止)
第百五十一条の六 事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路について必要な幅員を保持すること、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行う場合において、当該車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させなければならない。
3 前項の車両系荷役運搬機械等の運転者は、同項の誘導者が行う誘導に従わなければならない。
再発防止のポイント
今後このような事故を防ぐためには、以下の徹底が必要です。
- 作業計画の策定と周知: 重機の走行経路や作業範囲を事前に決め、開口部付近などの危険区域には絶対に近づかない計画を立てる。
- 物理的な転落防止措置: 開口部や端部には、重機の重さに耐えうる強固な車止めを設置する。
- 誘導員の専従配置: 重機が移動・旋回する際は、周囲に作業員を入れず、必ず誘導員が安全を確認しながら合図を送る。
- 構造確認: 2階以上の床面で重機を使用する場合、その床の耐荷重が十分であるか事前に計算・確認を行う。
まとめ
今回の事故は、作業の効率化や工期を優先し、建物の構造的に不適切な開口部付近で重機を使用したことが主因です。重心移動や端部の耐荷重不足に加え、車止めや誘導員の不備など安全対策が不十分だったと考えられます。
今後は作業計画の明確化と物理的防止措置、管理体制の徹底が不可欠です。

