【解体ニュース解説】行政代執行で「特定空き家」解体 所有者に180万円請求 宮崎市

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稲垣 瑞稀

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稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

この記事でわかること
  • 宮崎市の「行政代執行」での解体ニュースの概要
  • 行政代執行に至った背景と、費用負担の実態
  • 空き家所有者が行政代執行を回避するための具体的な対策

宮崎市で「特定空き家」が行政代執行によって解体されるというニュースが報道されました。

「遠方の実家は大丈夫かな」「行政代執行の対象になったらどうしよう」と、昨今の空き家ニュースに不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。

本記事ではこのニュースの事例を深掘り、「行政代執行」という最悪の事態を回避するために空き家所有者が行うべき「早めの対策」について解説します。

目次
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ニュースの概要

  • 発生場所:宮崎市街地の広島通り
  • 報道日:2026年2月19日
  • 対象:敷地面積180m2、延べ床面積84m2の木造平屋
  • 事案:2026年2月18日、宮崎市は中心市街地の広島通り沿いにある「特定空き家」について、空家対策特別措置法に基づく行政代執行による解体・撤去作業を開始しました。
行政代執行による建物の解体作業が始まった特定空き家

市によると、空き家は木造平屋(84平方メートル)で敷地180平方メートルが行政代執行の対象となる。老朽化が進んでおり、2015年頃から倒壊などを心配する声が寄せられ、24年8月には強風で建物の一部が道路上に飛散した。市は所有者に口頭と文書で計60回以上の行政指導を行い、特措法に基づく勧告や命令もしたが自主的な対応は見込めないと判断。老朽化で倒壊の危険性がある「特定空き家」として行政代執行により解体、撤去することにした。

引用:宮崎市中心部・広島通りの「特定空き家」、行政代執行で解体作業が始まる…費用180万円は所有者に請求へ|読売新聞オンライン

対象となった空き家は、屋根や外壁が剥がれ落ちるなど、倒壊の危険性が高く、周辺地域に著しい悪影響を及ぼす状態でした。市はこれまで所有者に対し、改善を求める指導や勧告・命令を行ってきましたが改善が見られなかったため、行政代執行に踏み切りました。解体にかかる費用約180万円は、全額が所有者に請求される予定です。

解体費用「180万円」の妥当性と回収について

ニュースで報じられた「180万円」という請求額について、「木造平屋ならもっと安いのでは?」と感じた方もいるかもしれません。しかし、現場の状況と行政代執行特有の事情を分析すると、この金額は行政代執行としては良心的な金額だと考えられます。

行政代執行での解体工事費用

今回対象となった木造建物の床面積84m2は、坪換算すると「約25坪」。

スッキリ解体を監修している「あんしん解体業者認定協会」の解体工事データ(2020年~2025年7月の30,000件以上によるデータ)によると、一般的な木造住宅20坪の解体相場は100万〜140万円程度、30坪で130万~180万円程度です。

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解体する建物の写真を見た見解ですが、以下の理由で今回の解体費用は通常でも相場より解体費用が高額になっていると予想されます。

  • 該当の建物は劣化がひどく、全体がツタや雑草に覆われた状態
    解体には、手壊し(重機でなく人の手で解体すること)等を含めた慎重な作業が必要。
    →手壊し解体をするための人件費や絡まったツタを分別するための作業費などが発生
  • 現場が宮崎駅からほど近く、人通りの多い市街地
    ガードマンの配置など安全対策が不可欠。大型トラックは入れない可能性あり。
    →ガードマンの人件費や作業看板、安全柵などの設置費用、廃材を分割して運ぶための小運搬費が発生

行政代執行で行われる解体工事では、民間工事以上に厳格な法令順守と安全管理が求められます。十分な安全対策と警備員の配置や、市職員立ち会いのもとでの記録作成など、目に見えない事務・管理コストが積算に含まれているため、一般の解体工事よりも費用が高額になりがちです。

運営者 稲垣

以上を踏まえると、「180万円」という一般的な解体費用相場と同等ぐらいの金額は、行政代執行での解体費用としては妥当、むしろ市街地で倒壊の可能性のある建物としては安い方だと考えられます。

しかし、行政代執行は、あくまで「行政が選んだ業者」が「行政の仕様」で行う工事です。所有者に価格交渉の余地はありません。
自分で解体業者を探して相見積もりを取れば、費用を抑える工夫(残置物の自分での処分など)が可能でした。「面倒だから」と放置した代償は、あまりにも大きかったと言えます。

解体費用の回収フロー

行政が行った解体工事費である180万円は、所有者に請求されます。

  1. 納入通知書の発行
    工事完了後、全額一括払いの請求書が届きます。分割払いは原則認められません。
  2. 督促状と延滞金
    期限を過ぎると督促状が届き、この時点から高利の延滞金(利息)が加算され始めます。
  3. 徹底的な財産調査
    支払わない場合、行政は本人の同意なしに銀行口座、勤務先(給与)、保険、不動産などを調査します。
  4. 差押え(強制徴収)
    民間とは違い裁判を起こす必要がなく、預金の凍結や給与の天引きが実行されます。
  5. 公売
    差し押さえた財産を強制的に売り払い、費用に充てます。

どうすれば行政代執行を防げたのか

今回の宮崎市広島通りの行政代執行は、突然行われたわけではありません。行政代執行は、行政にとっても「最終手段」であり、そこに至るまでには回避するチャンスが何度も、それも長期間にわたって存在しました。

なぜ、所有者は最悪の結末を迎えてしまったのか。その分岐点を振り返ることで、空き家所有者が取るべき正しい行動が見えてきます。

数十回に及ぶ指導・勧告

宮崎市がこの物件に対して最初の指導(助言・指導)を開始したのは2012年(平成24年)頃です。執行が行われた2026年までの約14年間、市は粘り強く所有者にコンタクトを取り続けていました。

行政の手続きは、以下のように段階を踏んで進みます。

  1. 助言・指導(2012年〜): 「このままでは危ないですよ」という注意喚起。この段階なら、自分のペースで業者を探し、解体や修繕を行えば何の問題もありませんでした。
  2. 特定空家等の認定: 状況が改善されないため、法的に「危険な空き家」として認定されました。
  3. 勧告: 「改善しないと税金の優遇を外しますよ」という警告。ここで固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が上がりました。
  4. 命令・戒告: 「解体しなさい。さもなくば市がやります」という最終通告。

宮崎市はこれまでに口頭で50回程度、文書で12回所有者に行政指導をしてきましたが改善されず、行政代執行に踏み切りました。

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所有者には、14年間で何度も改善の機会があったはずです。早い段階で指導を受け入れ、自身で解体工事を手配していれば、行政代執行による解体は防げました。

自治体の補助金制度

宮崎市には「危険な空き家等除却推進事業」という制度があります。
もし、所有者が早い段階で「自分ではどうにもできない」と市に相談し、自発的に解体を決断していれば、以下の支援を受けられた可能性があります。

  • 補助金額: 解体費用の1/2(上限40万円)
  • 条件: 市税の滞納がないこと、更地にすることなど
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もし、所有者が早い段階で自主的に解体を決断していれば、自身で解体業者を選定し、そこから40万円の補助を受けることで、180万円より解体費用を抑えられたかもしれません。

空き家を所有している場合は早めの対策を

ご自身が空き家を所有している、または将来相続する可能性がある場合、今回のニュースは決して他人事ではありません。選択肢の多いうちに以下の3つの点について確認し、準備しておきましょう。

  1. 現状を正確に把握する
    まずは、所有している(または引き継ぐ可能性のある)空き家がどのような状態にあるのかを確認しましょう。遠方であれば、近所の方に様子を尋ねたり、シルバー人材センターなどの見回りサービスを利用したりするのも一つの手です。建物の傾き、外壁や屋根の破損、庭の雑草の状態などを写真に撮って記録しておきましょう。
  2. 親族間で将来の方針を話し合う
    空き家はあなた一人の問題ではないかもしれません。兄弟姉妹など、他の相続人と「この家を将来どうするのか」について、早めに話し合いの場を持つことが重要です。「誰が管理するのか」「費用負担はどうするのか」「売却するのか、解体するのか、誰かが住むのか」。全員の意思を統一しておくことで、いざという時に迅速な対応ができます。
  3. 専門家の窓口に相談する
    少しでも不安や疑問があれば、一人で抱え込まずに専門家に相談してください。最初の相談窓口として最適なのは、空き家が所在する市区町村の役所です。「空き家対策課」などの専門部署で、地域の補助金制度や、相談できる専門家(司法書士、不動産業者、解体業者など)を紹介してもらえることもあります。

なお、スッキリ解体には空き家の解体について徹底解説した記事もございます。よろしければあわせてご覧ください。

まとめ

今回は、宮崎市の特定空き家行政代執行のニュースについて解説しました。最後にこの記事の要点をまとめます。

  • 空き家を放置し続けると、行政から助言・指導・勧告・命令を受け、最終的には所有者の意思に関わらず「行政代執行」で強制的に解体される可能性がある。
  • 行政代執行にかかった解体費用は全額所有者に請求され、自分で業者に頼むより高額になるケースが多い。
  • 行政代執行を避けるには「早期の現状把握」「親族間での話し合い」「専門機関への相談」の3つが大切。

空き家はあなたの大切な資産であると同時に、放置すれば地域の安全を脅かす存在になってしまうかもしれません。問題が深刻化してしまう前に、早めに対策しておけば安心です。

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この記事を書いた人

「一個人の責任と情熱で、本当に役立つ情報を発信したい。」

『スッキリ解体』運営責任者。解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』という現状を変えるため、全記事の企画・編集に携わり、責任を持って情報発信を行う。

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