この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 出水市で通学路の倒壊した空き家がボランティアによる撤去に至った背景
- ボランティアで空き家解体が実施される条件と成立要件
- 倒壊した空き家が通行人や児童におよぼす具体的な危険性
鹿児島県出水市で通学路にある倒壊した空き家を、県解体工事業協会出水支部がボランティアで撤去しました。
本来、空き家の撤去は行政手続きを経て進められますが、今回は児童の安全確保を最優先に、県解体工事業協会出水支部との連携により迅速な対応が取られました。
本記事では、なぜボランティアによる解体が実施されたのか、その背景や行政代執行との違い、さらに倒壊した空き家の危険性と早期解体の重要性について、専門的な視点からわかりやすく解説します。
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ニュースの概要
- 発生場所:鹿児島県出水市
- 報道日:2026年3月29日
- 事案:鹿児島県出水市の通学路にある倒壊した空き家が危険と判断され、県解体工事業協会出水支部がボランティアで撤去した。
出水市の鶴荘学園です。子どもたちの通学路でもある国道3号沿いに倒壊したまま放置された空き家がありました。出水市は、この空き家を危険性が高いと判断し、県解体工事業協会・出水支部に解体を依頼。協会はボランティアで作業にあたりました。
倒壊した空き家の危険性
今回、教育現場からも倒壊した空き家について不安の声が上がっていました。
「こどもたちの登下校の際など不安がありましたので、今回ボランティアで対応していただき本当に感謝しています」
(出水市立鶴荘学園・橋野正毅校長)
このように、倒壊した空き家は単なる景観や管理の問題ではなく、安全に直結するリスクがあります。
空き家に興味本位で近づいたり遊び場として入った場合、以下のような危険性が考えられます。
- さらなる倒壊の恐れ 既に一部が崩れている建物は、支えとなる柱や梁が不安定でわずかな衝撃や風雨で残りの構造物が崩落し、下敷きになる恐れがある。
- 鋭利な破片による負傷 露出した釘、割れたガラス、腐食したトタン板などが散乱しており、重大な外傷を負う可能性が高い。
- 衛生上の問題 害獣の住処となっている場合や、カビ・害虫による健康被害のリスクがある。
運営者 稲垣倒壊した空き家は非常に不安定で危険な状態です。とくに木造は一部崩壊で全体のバランスが崩れ、突然の崩落リスクが高まります。空き家の立ち入りは危険であるため、速やかな立入禁止と早期撤去が不可欠です。
市が解体工事業協会に依頼した背景
出水市が県解体工事業協会に協力を要請したのは、迅速に通学路の安全を確保する必要があったためです。

通常、行政による空き家の撤去は、所有者への助言・指導・勧告・命令といった段階的な手続きがあり、着工までに時間を要します。
しかし今回は、国道沿いですでに建物が倒壊しており、通行人や児童に危険が及ぶ切迫した状況でした。そのため、法的手続きを進める時間の余裕がないと判断されています。
ボランティアで空き家解体が実行される状況・条件
地元業者がボランティアで解体を行うには、主に以下の条件が揃う必要があります。
- 公共性の高さ 通学路、避難路、または主要道路に面しており、不特定多数の市民に危害が及ぶ可能性が高い。
- 緊急性 倒壊済み、または倒壊直前であり、通常の行政手続きを待つ猶予がない。
- 所有者の同意(または不在) 法的なトラブルを避けるため、原則として所有者の同意が得られている、もしくは所有者が不明で行政が一定の手続きを完了している。
- 団体の組織力 重機や作業員の派遣、廃棄物の適正処理にかかる費用を分担・負担できる体制がある。
行政代執行・緊急代執行と今回の違い
| 項目 | 行政代執行 | 緊急代執行 | 今回のケース(ボランティア) |
|---|---|---|---|
| スピード | 遅い(数ヶ月〜年単位) | 速い(数日〜数週間) | 最速(数日) |
| 法的段階 | 助言・指導・勧告・命令・通知など、厳格な手順が必要。 | 手順を一部省略できるが、行政庁による認定が必要。 | 協会と市の連携により、複雑な行政手続きを省略。 |
| 費用の負担 | 自治体が立て替え、後に所有者へ請求。 | 自治体が立て替え、後に所有者へ請求。 | 地元の業者団体が全額負担。 |
| 主な実施条件 | 所有者が命令に従わず、放置が著しく公益に反する場合。 | 放置すれば生命・身体に重大な危害が及ぶ急迫した事態。 | 危険性が高く緊急を要し、業者が社会貢献として同意した場合。 |
今回の対応は、行政代執行や緊急代執行と比べて、解体されるまでの日数や行政手続き、費用負担の面で大きく異なります。
なお、行政代執行の手続きについては、以下の法律に規定されています。
出典:行政代執行法
第二条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法
(特定空家等に対する措置)
第十四条9 市町村長は、第三項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、自ら義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
また、行政代執行や緊急代執行について報道されたニュース記事もありますので、あわせてご覧ください。


まとめ
今回の事例は、通学路に面した倒壊した空き家と緊急性の高い状況で、行政と解体工事業協会が連携し、社会貢献として迅速に撤去を実現した点が大きな特徴です。市が単独で業者選定や執行するよりも、協会に協力を求めることで法的・財政的手続きを簡略化し、児童の安全確保を最優先に対応できました。
倒壊した空き家は追加崩落やケガ、衛生面のリスクを伴い、放置すれば重大事故につながる恐れがあります。本来はこのような緊急対応に頼る前に、所有者が早期に適切な管理・解体を行うことが重要です。
なお、空き家を放置した場合については、次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。


