擁壁解体の費用相場と手順 平米単価や除却届の申請、補助金まで解説

擁壁 解体費用のサムネイル
稲垣 瑞稀

この記事の案内人・編集長

稲垣 瑞稀

解体業界で6年間働く中で感じた『正しい情報が届かない』というもどかしさから、全記事の企画・編集に責任を持っています。専門家への直接取材を通じ、業界経験者として分かりやすい情報提供をお約束します。

「家の擁壁にひびが入っているけれど、これってすぐに直さないとまずいの?」
「古い擁壁がある土地を相続したけれど、もし崩れたら誰の責任になるんだろう……」

ご自宅や所有地に擁壁(ようへき)がある方は、このような不安を一度は抱いたことがあるのではないでしょうか。特に近年の大型台風や地震のニュースを見るたびに、隣家や道路に面した壁の強度が心配になりますよね。

この記事では擁壁を所有している方に向けて、点検のポイントや法的責任、修繕・解体の判断基準をわかりやすく解説します。国土交通省の安全診断基準や2026年2月現在の法規制、擁壁の解体費用相場まで必要な情報を整理してまとめました。

結論からお伝えすると、擁壁の安全を維持することは所有者の「法的義務」であり、万が一の崩落時に周囲へ被害が及んだ場合は所有者がその責任を負うことになります。まずはご自身の擁壁の種類と、目視で確認できる劣化のサインを正しく把握しましょう。現状を冷静に判断することが将来的な事故を防ぎ、結果として無駄な出費を抑えることにつながります。

この記事でわかること
  • 擁壁の種類と、危険性を見分けるポイントがわかる
  • 崩落した場合に所有者が負う法的責任と2026年2月現在の法規制がわかる
  • 擁壁解体の費用相場と、見積もりで確認すべき重要項目がわかる

この記事の制作チーム

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中野 達也監修者

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事

中野 達也(なかの たつや)

解体工事業の技術管理者であり、解体工事施工技士を保有。2011年に解体業者紹介センターを鈴木佑一と共に創設。2013年に一般社団法人あんしん解体業者認定協会を設立し、理事に就任。めざまし8(フジテレビ系列)/ひるおび(TBS系列)/ 情報ライブ ミヤネ屋(日本テレビ系列)/バイキングMORE(フジテレビ系列)など各種メディアに出演。

初田 秀一現場解説

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー

初田 秀一(はつだ しゅういち)

解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

稲垣 瑞稀運営責任者

「スッキリ解体」編集長

稲垣 瑞稀(いながき みずき)

解体業界専門のWebメディアでWebディレクターとして6年以上、企画・執筆・編集から500社以上の解体業者取材まで、メディア運営のあらゆる工程を経験。正しい情報が届かず困っている方を助けたいという想いから、一個人の責任と情熱で「スッキリ解体」を立ち上げ、全記事の編集に責任を持つ。

馬場 美月執筆

「スッキリ解体」専属ライター

馬場 美月(ばば みづき)

「解体工事の準備から完了まで、初めての方でも迷わないよう、一つずつ丁寧に解説します。」

「初心者にもわかりやすく」をモットーに、解体工事の全工程をステップバイステップで解説する記事を得意とするライター。毎週の専門勉強会で得た知識や業者様へのインタビューを元に、手続きの流れや専門用語を図解なども交えながら、読者が迷わずに理解できる記事作りを心がけている。

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目次
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擁壁(ようへき)とは

擁壁とは、高低差のある土地で背面の土が崩れないように支えるために設置される構造物です。土地そのものの安全を守る役割を持ち、構造計算に基づいて設計されます。

よく混同されがちなブロック塀との違いは、土地が崩れないように支える役割を持っているかどうかにあります。

  • 擁壁
    高低差のある土地で土砂の崩壊を防ぎ、土地の安全を確保するための構造物です。
  • ブロック塀
    敷地の境界を示したり目隠しをしたりすることが主な役割で、土地の崩壊を防ぐ目的はありません。

擁壁の種類

国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」では、擁壁を構造・積み方の違いによって以下の6種類に分類しています。

スクロールできます
擁壁の種類主な構造・見分け方安全性の評価
練石積み・コンクリートブロック積み擁壁石材・間知ブロックをモルタル等で固めて積んだ構造。壁が斜めで、表面に目地が見える。基準どおりに造られていれば、安全性は比較的高い
鉄筋コンクリート擁壁(重力式コンクリート・L型)鉄筋とコンクリートを一体化した構造。天端が厚いと重力式コンクリート、薄く垂直だとL型。現在の安全基準に適合しやすく、安全性は高い
空石積み擁壁モルタルを使わず、石のみを積み上げた構造(玉石・野面石など)。現在の安全基準を満たしていない可能性が高く、注意が必要
増積み擁壁既存の擁壁の上に、ブロック等を継ぎ足した構造。現在の安全基準を満たしていない可能性が高く、注意が必要
二段擁壁段差を設け、上下2段に擁壁を設置した構造。現在の安全基準を満たしていない可能性が高く、注意が必要
張出し床版付擁壁擁壁の上部から、コンクリートの床版が張り出した構造。条件次第で危険性が高く、注意が必要

① 練石積み・コンクリートブロック積み擁壁

練石積み擁壁やコンクリートブロック積み擁壁は、石材や間知ブロックを積み上げ、その隙間をモルタルやコンクリートで固めた構造です。基準どおりに施工されている場合は、比較的安全性が高い擁壁です。壁は斜めに立ち、表面に目地が見えるのが特徴で、水抜き穴が適切に設けられているかどうかが長期的な安定性を左右します。

② 鉄筋コンクリート擁壁(重力式コンクリート・L型擁壁)

鉄筋コンクリート擁壁はコンクリートと鉄筋を一体化させた現在の標準的な構造で、安全性が高いとされています。コンクリート擁壁は、「重力式コンクリート擁壁」と「L型擁壁」の2種類に分けられます。

▼重力式コンクリート擁壁

▼L字擁壁

  • 重力式コンクリート擁壁
    擁壁そのものの重さによって、背面の土の圧力(土圧)を支える構造です。
  • L型擁壁
    L字型の壁体と底版から成り、底版の上に載る土の重さも利用して土圧を支える構造です。

構造上、重力式は無筋コンクリート造、L型は鉄筋コンクリート造です。ただし、いずれも背面が土に埋まっているため、正面から見ただけでは判別が難しいのが実情です。そのため、見分ける際は擁壁上部の厚み(天端幅)背面形状を目安にします。

  • 重力式コンクリート擁壁
    天端幅は40cm前後と厚く、背面には緩やかな勾配があります。
  • L型擁壁
    天端幅は20〜30cm程度と比較的薄く、背面はほぼ垂直で壁厚も薄いのが特徴です。

③ 空石積み擁壁

空石積み擁壁は、石を積み上げただけでモルタルやコンクリートを使用していない構造です。ガンタ石積・玉石積・野面石積などがこれに該当し、現在の安全基準を満たしていない可能性が高いため注意が必要です。地震や大雨の影響を受けやすく、石が崩れたり隙間から土砂が流出したりするなど危険性が高い擁壁です。

④ 増積み擁壁

増積み擁壁は、既存の擁壁や古い石積みの上にブロックなどを積み増した構造で、現在の安全基準を満たしていない可能性が高いです。下の擁壁は追加の荷重を想定して設計されていないため、継ぎ目部分から折れるように崩壊する危険があります。

⑤ 二段擁壁

二段擁壁は擁壁の上に段差を設けて、さらに別の擁壁を重ねた構造です。上下の擁壁が一体化していないため上部の荷重が下部に過度な負担をかけやすく、安定性に問題が生じやすくなります。築年数が古いものなどは、現在の安全基準を満たしていない可能性もあります。

⑥ 張出し床版付擁壁

張出し床版付擁壁は、擁壁の上部からコンクリートの床版が空中に張り出した構造で、斜面地の敷地を有効活用する目的で造られます。ただし、張り出した部分に建物や重い車両などの荷重がかかると、根元から倒れる危険があります。構造計算が複雑なため、築年数が古い擁壁は現在の安全基準を満たしていない場合もあります。

擁壁が崩落した場合の法的責任

万が一擁壁が崩落して隣家や通行人に被害が生じた場合、所有者は民法第717条に基づき法的責任を負う可能性があります。これは「知らなかった」「わざとではなかった」といった事情があっても、責任を免れないケースがある点に注意が必要です。

出典:民法

第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

引用:民法|e-Gov法令検索

擁壁の崩落に関しては、主に次のような考え方で責任が判断されます。

  • 過失がなくても責任を負う場合がある
    擁壁の設置や管理に「瑕疵(欠陥)」があると判断された場合、所有者に過失がなくても賠償責任を負う可能性があります。
  • 自然災害が原因でも責任を問われる場合がある
    地震や台風がきっかけであっても、事前の点検や補修を怠っていたなど「管理の不備」が認められれば、所有者の責任とされることがあります。
  • 被害内容によって賠償額が高額になる場合がある
    建物への被害だけでなく人身事故に及んだ場合には、数千万円から数億円規模の賠償に発展するリスクもあります。

実際に、2020年に神奈川県逗子市で発生した斜面崩落事故では、遺族に対して総額で約1億110万円の賠償が生じています。

出典:朝日新聞

 神奈川県逗子市で2020年、マンション敷地の斜面が崩れ、市道を歩いていた女子高校生(当時18)が死亡した事故で、遺族が当時のマンション管理会社側に損害賠償を求めた訴訟の判決が15日、横浜地裁であった。小西洋裁判長は、斜面の上部で亀裂を把握していたのに措置を取らなかったとして、管理会社側の賠償責任を認めた。

 遺族はマンションの所有者側も訴えていたが、判決は、6月に両者が和解したことを踏まえ、事故に伴う損害額から和解金約1億円を差し引き、管理会社側に約110万円の賠償を命じた。

引用:マンション管理会社に責任 遺族「家族の救いに」 斜面崩落死亡事故|朝日新聞

万が一の崩落による責任を回避するためにも、できるだけ早い段階で擁壁の現状を把握しておくことが重要です。

解体や補修を検討すべきタイミング

解体や補修を検討するタイミングは、「耐用年数」と「劣化のサイン」の両方を踏まえて判断できます。

擁壁の耐用年数

国税庁の定める「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づき、擁壁の法定耐用年数を種類別にまとめました。税務上の区分では、擁壁の耐用年数は約30年〜50年とされています。

擁壁の種類法定耐用年数
練石積み・コンクリートブロック積み擁壁約30年~40年
鉄筋コンクリート擁壁(RC擁壁・L型擁壁)約30年~50年
空石積み擁壁約30年~40年
増積み擁壁約30年~50年
二段擁壁約30年~50年
張出し床版付擁壁約30年~50年

1970年代以前に築造された擁壁における注意点

1971年の建築基準法施行令改正前に築造された石積み擁壁や無筋コンクリート造の擁壁は、現在の安全基準に適合しない「既存不適格」の可能性が高いのが実情です。

たとえ税務上の耐用年数が残っていたとしても、物理的な安全性や資産価値は別問題であり、必要に応じて専門家による調査・判定が求められます。

出典:建築基準法施行令

第百四十二条 第百三十八条第一項に規定する工作物のうち同項第五号に掲げる擁壁(以下この条において単に「擁壁」という。)に関する法第八十八条第一項において読み替えて準用する法第二十条第一項の政令で定める技術的基準は、次に掲げる基準に適合する構造方法又はこれと同等以上に擁壁の破壊及び転倒を防止することができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いることとする。
一 鉄筋コンクリート造、石造その他これらに類する腐食しない材料を用いた構造とすること。
二 石造の擁壁にあつては、コンクリートを用いて裏込めし、石と石とを十分に結合すること。
三 擁壁の裏面の排水を良くするため、水抜穴を設け、かつ、擁壁の裏面の水抜穴の周辺に砂利その他これに類するものを詰めること。
四 次項において準用する規定(第七章の八(第百三十六条の六を除く。)の規定を除く。)に適合する構造方法を用いること。
五 その用いる構造方法が、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて確かめられる安全性を有すること

引用:建築基準法施行令|e-Gov法令検索

目視で確認できる劣化のサイン

以下は、国土交通省の「我が家の擁壁チェックシート」で示されている代表的な劣化のサインです。次の項目にひとつでも当てはまる場合は、解体・補修を検討し始めても良いかもしれません。

  • ひび割れ部分の段差:ひび割れを境に壁が前後・上下にズレており、段差が確認できる。
  • つなぎ目のズレ:壁のつなぎ目に、2cm以上の前後のズレがある。
  • つなぎ目の開き:壁のつなぎ目が、上下または左右に5mm以上開いている。
  • 角の開き:角の合わせ目が、目視ではっきり分かるほど大きく開いている。
  • 全体の膨らみ:擁壁全体が前方へ膨らみ、石やブロックの間に隙間ができている。
  • 全体の傾き: 擁壁全体が明らかに前へ傾いている。
  • 錆(さび): ひび割れ部分から茶色の「錆汁(さびじる)」が流れ出しており、鉄筋の腐食が確認できる。

より詳しい確認方法については、以下のページをご覧になってください。

目視だけでは判断できない擁壁

ただし、次のような擁壁は構造上のリスクが高く、外見だけで安全性を判断できません。

  • 空石積み擁壁
  • 増積み擁壁
  • 二段擁壁
  • 張出し床版付擁壁

これらに該当する場合は、目立った異常がなくても専門家に調査・判断してもらうことをお勧めします。

擁壁の解体費用はいくら?

擁壁の解体費用は構造の種類や現場条件によって異なりますが、一般的には1m2あたり約5,000円〜3万5,000円が目安とされています。

なお、掲載している解体費用相場は、一般社団法人あんしん解体業者認定協会を通じて実際に施工された工事実績に基づくものです。

擁壁の解体費用相場

スクロールできます
構造の種類1m2あたりの費用相場該当する擁壁
鉄筋コンクリート造約1万7,000円~3万5,000円RC擁壁、張出し床版付擁壁
コンクリート造約1万4,000円~3万円練石積み・コンクリートブロック積み擁壁
石造約5,000円~2万円空石積み擁壁

※ 増積み擁壁は下部構造、二段擁壁は各段の構造に応じた費用区分となります。

見積もりのチェックポイント

擁壁の解体費用は、撤去作業だけの金額ではありません。仮囲いの設置・養生・重機の搬入・廃材の処分費など、安全に工事を行うための費用も含まれます。

そのため、これらの項目が見積もりに適切に計上されているかを事前に確認することが大切です。

① 廃材処分費

解体によって発生するコンクリート塊や鉄筋、石材は、産業廃棄物として適切に処理する義務があります。自分の土地に埋めることは廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で禁止されており、運搬費と処分費が見積もりに明確に含まれているかを必ず確認しましょう。

出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律

第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

引用:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov法令検索

② 山留め(やまどめ)・地盤安定化費用

擁壁を撤去すると背後の土砂が崩落するおそれがあるため、工事中は仮設山留めを設置し、解体後も土留めや地盤補強によって斜面を安定させる必要があります。これらの費用が含まれていないと、隣地の地盤沈下やトラブルにつながる可能性があります。

③ 諸経費および公的手続き費用

公道に面した工事では、道路使用許可の条件として交通誘導員の配置が求められるのが一般的です。また、粉塵や騒音を抑えるための養生シートや防音パネルの設置も必要となる場合があり、これらの仮設・養生費が見積もりに含まれているかを確認しましょう。

④ 残土処分・埋め戻し費用

擁壁を撤去すると大きな空間が生じるため、不要な土を運び出す残土処分と、跡地を平らに整えるための埋め戻し・転圧が必要になります。これらが含まれていない場合、工事後に追加費用が発生することがあります。

⑤ 現地条件による割増費用(手壊し・回送費)

前面道路が狭く大型重機が入らない場合は手作業による解体が必要となり、人件費が大きく増える傾向があります。また、重機を現場に搬入するための回送費が別途かかることもあるため、現地条件を踏まえた費用設定になっているか確認が必要です。

擁壁の解体費用実例

以下は、一般社団法人あんしん解体業者認定協会を通じて実際に行われた工事の見積実例です。

擁壁の解体費用実例 見積書の画像
スクロールできます
項目数量単位単価金額(税抜)
接道面擁壁撤去37.20m29,500353,400

この事例では、接道面に設置されたコンクリートブロック積み擁壁37.20m2を解体し、総額35万3,400円(税抜)となりました。単価は1m2あたり9,500円です。

なお、これはあくまで一例であり、解体費用は擁壁の高さや劣化状況、施工条件などによって異なります。

擁壁解体の流れ

擁壁を解体する際、一般的には以下の3ステップに沿って工事が進められます。

  1. 所有者・擁壁の状態確認
  2. 届出・手続きと近隣への配慮
  3. 擁壁の解体工事

それでは、各ステップについて順を追って解説します。

ステップ1:所有者・擁壁の状態確認

まずは、誰の土地にある擁壁なのか、そして安全に解体できる状態かを確認します。

  • 所有者の確認
    擁壁が境界線上にある場合は民法第229条により、隣地所有者の同意が必要です。勝手に壊すとトラブルの原因になるため、必ず確認しましょう。
  • 地盤と擁壁の状態チェック
    土砂の崩れや擁壁の亀裂など、危険がないかを事前に専門家に診てもらいます。不安がある場合は、自治体の相談窓口に問い合わせてみるのもよいでしょう。
出典:民法

第二百二十九条 境界線上に設けた境界標、囲障、障壁、溝及び堀は、相隣者の共有に属するものと推定する。

引用:民法|e-Gov法令検索

ステップ2:届出・手続きと近隣への配慮

宅地造成規制区域内で高さ2mを超える擁壁を解体する場合は、原則として法律で届出が義務付けられています。手続きを正しく行うことが、安心の第一歩です。

  • 除却届の提出
    宅地造成規制区域内で高さ2mを超える擁壁を解体する場合は、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)第21条第3項に基づき、工事着手の14日前までに自治体へ「除却届」を提出する必要があります。なお、一定の条件を満たす場合は届出が不要となるケースもありますが、その具体的な要件や運用は自治体ごとに異なります。トラブルを避けるためにも、事前に管轄の自治体へ確認しておくことをお勧めします。
  • 近隣への周知
    工事中は騒音や振動が出るため、事前に工事日程・安全対策・緊急時の連絡先を説明して理解を得ておきましょう。
出典:宅地造成及び特定盛土等規制法

3 宅地造成等工事規制区域内の土地(公共施設用地を除く。以下この章において同じ。)において、擁壁等に関する工事その他の工事で政令で定めるものを行おうとする者(第十二条第一項若しくは第十六条第一項の許可を受け、又は同条第二項の規定による届出をした者を除く。)は、その工事に着手する日の十四日前までに、主務省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。

引用:宅地造成及び特定盛土等規制法|e-Gov法令検索

ステップ3:擁壁の解体工事

解体中は、周囲や土地の安全を守ることが最優先です。

  • 現場の安全確保
    仮囲いや防音シートを設置したり、落下物防止策を実施したりすることで作業中の事故を防ぎます。
  • 山留め(土留め)の設置
    土砂の崩落を防ぐため、背後の土を支える「山留め」を設置してから、上部から順に解体を進めます。

擁壁の解体工事実例

初田 秀一 現場解説

一般社団法人あんしん解体業者認定協会 理事・解体アドバイザー

初田 秀一 (はつだ しゅういち)

解体アドバイザー歴15年、相談実績は11万件以上。お客様の不安を笑顔に変える現場のプロフェッショナル。「どんな些細なことでも構いません」をモットーに、一期一会の精神でお客様一人ひとりと向き合い、契約から工事完了まで心から安心できる業者選定をサポート。この記事では現場のリアルな視点から解説を担当。

これまで11万件以上の解体相談に対応し、擁壁の解体現場にも数多く立ち会ってきた「あんしん解体業者認定協会」の初田理事に、擁壁解体の様子について伺いました。

擁壁の解体工事実例 施工前後の現場写真
運営者 稲垣

こちらの現場では、家屋と一緒に擁壁が解体されたようですね。

理事 初田秀一

はい。老朽化した木造住宅の解体にあわせて、敷地内のブロック擁壁も撤去しました。高さは2m未満でしたが、住宅と同様にひび割れや経年劣化が見られたため、将来的な安全性を考慮して同時に解体することになりました。

運営者 稲垣

高さが2m未満の場合、手続きや工程は変わるのでしょうか。

理事 初田秀一

法的な届出の対象にはならないケースが多いですが、だからといって作業が簡単になるわけではありません。建物解体後に作業スペースを確保し、背後の土の状態を確認しながら、上部から順に慎重に撤去しました。

運営者 稲垣

高さに関わらず、安全確保が最優先ということですね。

理事 初田秀一

はい。高さが2m未満であっても背後に土がある以上、土砂崩落のリスクはゼロではありません。特に劣化が見られる場合は無理に一気に壊さず、順序を守って撤去することが基本です。

【FAQ】擁壁の解体費用に関するよくある質問

擁壁の所有者がわからない場合はどうすればいいですか?

まずは法務局で「公図」や「地積測量図」を取得し、擁壁がどの土地にあるのか、または境界線上に設置されているのかを確認します。

擁壁が境界線の内側にある場合は、その土地の所有者が擁壁の所有者となるのが一般的です。一方で境界線上に設置されている場合は、民法第229条により、原則として隣地所有者の共有物と推定されます。

ただし、設置目的・構造・過去の経緯によっては共有ではなく、特定の土地所有者の所有と判断されることもあります。

図面だけで判断できない場合や隣人との認識が異なる場合には、土地家屋調査士などの専門家に依頼して境界を確認してみましょう。

擁壁の解体工事に使える補助金や助成制度はありますか?

多くの自治体では、危険性のある擁壁の改修や撤去を対象とした補助・助成制度を設けています。

制度の内容は自治体ごとに異なりますが、工事費の3分の1〜3分の2程度(上限額あり)が補助されるケースもあります。

なお、これらの制度は原則として工事着工前の申請が必要です。事後申請は認められないケースがほとんどのため、擁壁の解体を検討し始めた段階で、早めに自治体の担当窓口へ確認しておきましょう。

擁壁はDIYで解体できますか?

小規模な花壇などを除き、擁壁のDIY解体は安全面・法律面から現実的に不可能です。

擁壁は土地の崩壊を防ぐ構造物であり、解体には周辺の安全確保が求められます。多くの地域では撤去に行政の許可が必要で、発生するコンクリートは産業廃棄物として適正処理が義務付けられています。また、解体中や解体後に隣地へ被害が出た場合、所有者が高額な賠償責任を負う可能性もあります。

そのため擁壁の解体は個人で行わず、専門の解体業者や土木業者に相談することを強くお勧めします。

擁壁を解体せずに補修や補強で済ませられますか?

はい。擁壁の状態によっては、解体せずに補修や補強で対応できる場合があります。

とくに予算や工期に制約がある場合には、補修・補強は現実的な選択肢となります。劣化の内容や範囲によって適した工法は異なりますが、一般的には次のような補修・補強方法があります。

  • ひび割れ補修
    擁壁のひび割れ部分に専用の補修材を注入する「注入工法」により補修します。構造物の広範囲にひび割れが及んでいる場合にも対応可能で、費用の目安は1mあたり約3万円〜です。
  • 水抜き穴の設置・増設
    水抜き穴がない、または数が不足している場合に、機械で穴を開けて設置します。背面水圧を逃がす効果があり、1箇所あたり約3万円が目安です。
  • 石積み擁壁の補強工事
    間知ブロック積み擁壁や空石積み擁壁では、モルタルや特殊充填材を注入して補強する工法があります。狭い場所でも施工でき、作り替えより費用を抑えられる点が特徴で、1m2あたり約4万〜10万円が目安です。

ただし、補修・補強工事を行うにあたっては、既存の擁壁の種類や劣化状況を正確に把握することが前提となります。そのため、まずは専門家による診断を受けることが大切です。

擁壁の解体工事に交通誘導員は必要ですか?

道路状況や工事内容によりますが、公道を使用する工事では、原則として交通誘導員の配置が必要です。

工事のために重機を道路上に設置したり車両が道路を占有したりする際は、同法第77条に基づき警察署から「道路使用許可」を受ける必要があります。この際、同条第3項の規定により警察署長は安全確保のための「条件」を課せるため、交通量や道路幅に応じて誘導員の配置が許可の必須要件となります。

出典:道路交通法

第七十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、それぞれ当該各号に掲げる行為について当該行為に係る場所を管轄する警察署長(以下この節において「所轄警察署長」という。)の許可(当該行為に係る場所が同一の公安委員会の管理に属する二以上の警察署長の管轄にわたるときは、そのいずれかの所轄警察署長の許可。以下この節において同じ。)を受けなければならない。

(中略)

3 第一項の規定による許可をする場合において、必要があると認めるときは、所轄警察署長は、当該許可に係る行為が前項第一号に該当する場合を除き、当該許可に道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができる。

引用:道路交通法|e-Gov法令検索

また、施工業者には事故を未然に防ぐための注意義務があり、その一環として、専門家による交通誘導が重要な安全対策とされています。

出典:民法

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法|e-Gov法令検索

まとめ:擁壁の状態を確認し、計画的に対応しましょう

擁壁の維持管理は所有者の財産だけでなく、周囲や隣人の安全を守るための重要な責任です。トラブルや事故を防ぐために、今後の対応を考えるうえで押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

  1. 崩落時の法的責任を理解する
    擁壁が崩落した場合、所有者が民法第717条に基づき賠償責任を負う可能性があります。
  2. 国土交通省のチェックシートでセルフ診断する
    劣化のサインを確認し、必要に応じて早期の対応を検討します。

少しでも不安を感じた場合は、解体業者・土木業者に現地調査を依頼したり、自治体の相談窓口に相談してみましょう。

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