この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
大分市佐賀関で発生した大規模火災から半年が経過し、あらためて被害の大きさと延焼の速さが注目されています。消防庁の調査では、延焼速度は能登半島地震で発生した輪島朝市の火災と同程度とされ、強風や住宅の密集といった条件に加えて空き家の管理状況も拡大要因の一つとして指摘されています。
こうした火災は特定の地域だけの問題ではなく、住宅が密集する全国各地で起こり得る課題です。そのため、空き家の管理や対策の重要性についてもあらためて関心が高まっています。
本記事では、空き家が火災時にどのように延焼を広げる要因になるのか、その理由や対策などを解説します。
- 大分市佐賀関火災の延焼拡大の要因と、空き家がどのように影響したのかがわかる
- 空き家が火災時に延焼を広げやすくなる具体的な仕組みがわかる
- 全国で進む空き家対策と、管理・活用・解体といった現実的な対応の方向性がわかる
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ニュースの概要
- 発生場所:大分県佐賀関
- 報道日:2026年5月12日
- 対象:佐賀関漁港近くの住宅密集地
- 事案:消防庁の調査で大分市佐賀関の火災は輪島と同程度の速さで延焼し、強風・密集住宅・管理不十分な空き家が火災の延焼拡大の要因となったと判明。これを受け全国の密集市街地で空き家対策と火災予防が強化される方針である。
消防庁が3月に公表した調査報告書によると、出火地点から風下方向への延焼速度を計算したところ佐賀関火災では時速34メートルと推定され、輪島火災(時速35メートル)と同程度だった。横方向の延焼速度(時速19メートル)も輪島火災とほぼ同程度だった。
(中略)
報告書を受け消防庁は3月、密集住宅市街地での空き家の火災予防対策をまとめたガイドラインを作成。延焼の拡大を招く可能性のある管理不十分な空き家について、各消防本部が抽出・把握し、所有者に改善指導するなどの内容を盛り込んだ。
大分市佐賀関火災で浮き彫りになった空き家の火災リスク
2025年11月に大分市佐賀関で発生した大規模火災では、約200棟が焼損する大きな被害が発生しました。
消防庁の調査によると、当時は風速10m/sを超える強風と乾燥注意報が重なり、木造住宅が密集した地域条件も影響して延焼速度は令和6年能登半島地震で発生した輪島火災とほぼ同水準だったとされています。
運営者 稲垣これは、管理不十分な空き家が多い地域にて強風・乾燥・木造住宅の密集といった条件が重なることで、「震災級」の延焼被害が発生し得ることを示しています。
| 項目 | 大分市佐賀関火災(2025年11月) | 輪島火災(2024年1月) |
|---|---|---|
| 延焼速度 | 主延焼方向:34m/h 横方向:19m/h | 主延焼方向:35m/h 横方向:21m/h |
| 延焼面積 | 12,563m2 | 29,399m2 |
| 焼損棟数 | 196棟(うち空き家:全焼44棟、半焼以下5棟) | 約240棟 |
| 主な加速要因 | 空き家の放置、強風、乾燥、木造住宅の密集 | 地震による建物倒壊、断水、木造住宅の密集 |
【参考資料】
- 令和7年11月18日に発生した大分市大規模火災に係る消防庁長官の火災原因調査報告書資料1|総務省消防庁
- 令和7年11月18日に発生した大分市大規模火災に係る消防庁長官の火災原因調査報告書資料2|総務省消防庁
- 令和6年能登半島地震に伴い石川県輪島市で発生した大規模市街地火災に係る消防庁長官の火災原因調査報告書|総務省消防庁
- 令和6年能登半島地震に伴い石川県輪島市で発生した大規模市街地火災に係る消防庁長官の火災原因調査の結果|消防研究センター
空き家が延焼を加速させる主な理由
空き家が火災の延焼を広げやすい理由は、主に次の3つです。
火の粉や熱気が建物内部へ侵入しやすい
まず、建物の劣化により外部から火の影響を受けやすくなる点が挙げられます。老朽化した空き家では、窓ガラスの破損や外壁のひび割れが見られることが多く、そこから火の粉や熱気が入り込み、内部へ燃え広がるリスクが高まります。また、条件が重なると建物全体が一気に燃え広がる「フラッシュオーバー」が発生しやすくなります。

残置物が大量の燃料になる
木造空き家は長年放置されることで乾燥が進み、非常に燃えやすい状態になります。さらに室内に残された畳・家具・古紙・衣類などが大量の燃料となり、火災の勢いを強めます。
また、庭に放置された枯草・木材・廃材・生活用品なども延焼を広げる要因となり、飛び火による火災拡大につながる可能性があります。


初期消火が行われにくい
住宅火災では、火が小さい段階での初期消火が被害軽減の重要なポイントです。しかし空き家は無人であるため火災に気づかれにくく、消防隊が到着した時には周辺へ延焼しているケースも少なくありません。
運営者 稲垣空き家は管理不足によって放火や老朽化した配線による電気火災などが発生しやすく、火災そのもののリスクも高まりやすいとされています。
統計データから見る空き家増加の実態
2024年4月公表の『令和5年住宅・土地統計調査』(総務省)によると、全国の空き家数は900万戸と過去最多を更新し、空き家率も13.8%と過去最高となりました。
特に課題となっているのが、「賃貸用・売却用ではない放置空き家」の増加です。その数は385万戸にのぼり、2018年から37万戸増加しています。放置空き家には旧耐震基準時代に建てられた建物も多く、腐朽や破損が見られるケースも少なくありません。

また、2024年公表の『空き家所有者実態調査』(国土交通省)によると空き家発生の57.9%は相続がきっかけとしており、相続後に遠方へ住むことで管理が難しくなるケースも増えています。

空き家の対策として進む法整備
2023年12月に施行された改正空家等対策特措法では、管理不十分な空き家への対応が強化されました。
「管理不全空家」の新設
これまでは、倒壊の危険性が高い「特定空家」が主な行政指導の対象でした。しかし改正後は、その前段階にあたる「管理不全空家」という区分が新設され、放置すると危険につながる空き家に対しても自治体が早い段階から改善指導できる仕組みへと拡充されています。
管理不全空家に対する税制措置適用
管理不全空家として勧告を受けた場合は、固定資産税の住宅用地特例が解除される可能性があります。これまでは主に「特定空家」が対象でしたが、改正後はより早い段階から税制面で適切な管理・売却・解体を促せるようになりました。
行政代執行の円滑化
所有者不明空き家への対応手続きも簡素化され、緊急時には自治体が迅速に介入しやすくなっています。また消防庁は、空き家周辺の延焼防止対策についても火災予防条例の指導対象として扱うべきとの考え方を示しており、今後は全国的に空き家の防災管理がより重視されるとみられています。
出典:空家等対策の推進に関する特別措置法
第十三条 市町村長は、空家等が適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認めるときは、当該状態にあると認められる空家等(以下「管理不全空家等」という。)の所有者等に対し、基本指針(第六条第二項第三号に掲げる事項に係る部分に限る。)に即し、当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導をすることができる。
2 市町村長は、前項の規定による指導をした場合において、なお当該管理不全空家等の状態が改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときは、当該指導をした者に対し、修繕、立木竹の伐採その他の当該管理不全空家等が特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な具体的な措置について勧告することができる。
空き家火災を防ぐために各地で進む対策
空き家火災のリスクが全国的な課題となる中で、対策は「所有者による管理」「利活用の促進」「必要に応じた除却」という流れで段階的に進められています。建物を放置しないことに加え、地域の中でどう循環させていくかという視点が重要です。
所有者による日常的な管理
空き家火災を防ぐためには、まず所有者による基本的な管理が欠かせません。
使用していない空き家では、漏電やガス漏れによる火災を防ぐために電気・ガスを停止することが有効とされています。また、不審者の侵入や放火を防ぐため建物の施錠管理を徹底することも重要です。
さらに、庭や敷地内に放置された枯草・木材・廃材・生活用品などは飛び火によって周囲へ燃え広がる原因となるため、定期的な撤去や清掃が求められます。こうした日常的な管理の有無が火災の発生や延焼の広がりに大きく影響します。

空き家の利活用による管理機能の回復
自治体では、空き家を放置せず活用につなげる取り組みも進められています。
栃木市ではリフォーム補助金を活用した空き家バンク制度が進められており、移住者や子育て世帯などへの活用が広がっています。また、徳島県神山町では空き家をサテライトオフィスとして活用することで、地域に人の流れを生み出す取り組みも行われています。
建物に人の出入りが戻ることで定期的な点検や管理が行われやすくなり、防犯・防災の両面で効果が期待されています。
防火空間の整備による延焼対策
神戸市では空き家解体後の土地を小規模公園や空地として整備し、「防火空地」として活用する取り組みが進められています。
木造住宅が密集する地域では、一度火災が発生すると短時間で周囲へ延焼するおそれがあります。そのため建物のない空間を意図的に確保し、火の広がりを抑えるとともに消防活動のスペースとしても活用する考えです。
老朽空き家の解体によるリスク低減
老朽化が進み、管理や活用が難しい空き家については解体によって火災リスクそのものを減らす方法も有効です。
特に木造住宅が密集する地域では空き家が火災時の燃料や飛び火の中継地点となる場合があります。こうした建物を事前に除却することで延焼拡大のリスクを抑え、地域全体の防災性向上につながります。

まとめ
佐賀関火災では強風・乾燥・木造住宅の密集といった条件が重なった中で、管理不十分な空き家の存在が延焼拡大の一因となりました。空き家は放置された状態が続くほど火災時のリスクが高まり、周囲への延焼要因にもなり得ます。そのため、空き家は個別の管理だけで完結する問題ではなく、状態に応じて適切に整理していくことが重要です。
運営者 稲垣維持や活用が難しい場合には早い段階での解体を含めて判断し、リスク要因を減らしていく対応が求められます。特に老朽化が進んだ空き家では解体を進めることで火災時の延焼の起点を減らし、地域全体の安全性向上につながります。
