この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- 台風19号災害で公費解体の開始が遅れた要因
- 長野県が公費解体の迅速化に向けて協定を締結した目的
- 協定締結によって期待される具体的な効果とメリット
長野県は、災害時の公費解体を迅速に進めるため、県内の解体工事業協会と協定を締結しました。台風19号災害では、解体着工までに約4カ月を要するなど、初動の遅れが課題となっていました。
この記事では、公費解体が遅れる主な理由や過去の災害との比較をもとに、今回の協定締結の目的と期待される効果について解説します。
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ニュースの概要
- 発生場所:長野県
- 報道日:2026年3月18日
- 事案:災害時の公費解体の遅れを受け、長野県は解体工事業協会と初の協定を締結。人材育成と連携強化により、倒壊家屋の撤去など復旧の初動を迅速化する体制構築を進める。
被災した家屋などの公費解体をスムーズに進めることを目的に、県は、初となる協定を県内の業界団体と結びました。
激甚化する災害…、復興にはスムーズな復旧作業が必要です。しかし、例えば2019年に千曲川が決壊した長野市では、公費解体が始まったのは発災から4カ月後でした。県は17日、市町村が公費解体を円滑に実施できるよう県解体工事業協会と協定を締結。協会からの呼び掛けで実現しました。
公費解体の開始が遅れる原因
2019年の台風19号災害で、長野市で公費解体の開始まで4カ月を要した理由は主に以下の4点にあると推測されます。
- 所有者特定と権利調整の難航
公費解体は個人の財産を公金で解体するため、所有者全員の同意が必要です。相続未登記の物件や、県外居住の所有者との連絡調整に時間を要しました。 - 罹災証明書の発行待ち
公費解体の申請には「全壊」「大規模半壊」などの判定が記された罹災証明書が必須ですが、被害が広範囲に及んだため、調査と発行に時間を要しました。 - 仮置場の確保と運用計画の遅れ
解体で発生した廃棄物を運び出す「仮置場」の選定と、そこから再資源化施設へ送るルート構築が整うまで現場作業を開始できませんでした。 - 業者選定のプロセス
協定がない状態では、自治体が個別に業者を公募・選定し、契約を交わす必要があります。この事務手続きが遅れの要因となりました。
他の災害事例との比較
公費解体は、所有者同意や罹災証明の発行、仮置場の確保などに時間を要し、着工まで数カ月かかるのが一般的です。
過去の災害で、発災から公費解体が本格化した時期の比較表です。
| 発生日と災害名 | 発生日 | 解体開始時期 | 経過期間 |
|---|---|---|---|
| 東日本大震災 | 2011年3月 | 2011年6月~ | 約3カ月 |
| 熊本地震 | 2016年4月 | 2016年7月〜 | 約3カ月 |
| 能登半島地震 | 2024年1月 | 2024年3月〜 | 約2カ月 |
| 大分市佐賀関大規模火災 | 2025年11月 | 2026年1月~ | 約2カ月 |
運営者 稲垣過去の災害では公費解体の開始時期は約2〜3カ月が目安です。比較した場合、長野市の台風19号災害(約4カ月)はやや遅いといえます。
特に近年の災害では約2カ月と短縮傾向も見られ、事前の体制整備や手続きの効率化が進んでいることがうかがえます。
いずれの災害でも一定の準備期間は不可欠であり、迅速化には平時からの連携体制の構築が重要といえます。
協定締結の目的
今回の協定締結は、発災から解体着工までの待機時間を短縮し、復興をより早く進めることを目的としています。
平時から解体業者の施工体制を把握し、緊急時のルールを定めておくことで、2019年の台風19号災害で課題となった「行政手続きの遅れ」と「作業員・重機の確保難」を解消し、被災者の生活再建を加速させることが狙いです。
協定締結によるメリット
今回の県と業界団体の協定により、以下のメリットが期待されます。
- 即時動員体制の構築
平時から協会加盟業者の重機保有台数や作業員数を県が把握し、発災直後に必要な人員や機材を適正に配置できます。 - 事務手続きの簡略化
個別の業者公募を待たず、協会を通じて一括で業務委託や業者の斡旋が可能になり、契約手続きに要する時間を短縮できます。 - 適正な処理品質の確保
協会が窓口となることで、不適切な処理や不当な価格吊り上げを防ぎ、法に基づいた適正な解体・廃棄物処理を担保できます。 - 資材・人員の広域融通
特定の地域に被害が集中した場合でも、協会を通じて県内全域から作業員や重機を応援に回す体制が整います。
まとめ
本協定は、災害復興の第一歩となる「解体」を、行政と業者が連携してスムーズに進めるための土台といえます。
これまでの事例から、解体工事の体制だけでなく、事前の連携体制が被災者の生活再建のスピードに大きく影響します。今後は、平時からの訓練や情報共有を通じて、この協定の実効性が一層高まることが期待されます。
なお、公費解体については次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

