この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
三重県南牟婁郡御浜町で、解体工事に伴い発生した産業廃棄物約2トンが第三者の土地へ不法投棄されたとして、元請け・下請け業者の男2人が逮捕されました。書面契約を行わないまま処理が委託されていた点も明らかになっており、元請け側の管理責任のあり方が問われています。
本記事では事件の概要に加え、不法投棄が起きた背景や原因、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)上の責任と罰則について解説します。
- 不法投棄が行われやすい場所と犯行の背景がわかる
- 解体工事で不法投棄が起きる構造的な理由がわかる
- 不法投棄に適用される廃棄物処理法の罰則内容がわかる
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ニュースの概要
- 発生場所:三重県南牟婁郡御浜町
- 報道日:2026年2月25日
- 事案:三重県御浜町で解体工事に伴う産業廃棄物約2トンが不法投棄されたとして、無許可処分を受託した下請け業者と、書面手続きなしで委託した元請け業者の男2人を廃棄物処理法違反の疑いで逮捕。土地所有者の通報で発覚した。
【南牟婁郡】無許可で産業廃棄物の処分を受託したなどとして、紀宝署と県警生活環境課は24日、廃棄物処理法違反の疑いで、紀北町船津、解体業岡橋拓容疑者(34)と多気町色太、解体業中村洸太容疑者(34)を逮捕した。
岡橋容疑者の逮捕容疑は令和6年11月18日ごろから同21日ごろまでの間、請け負った家屋の解体工事で発生した産廃の運搬や処分を、書面上で手続きせずに下請け業者である中村容疑者に委託した疑い。
不法投棄をした背景
今回の現場となった三重県南牟婁郡御浜町は、山間部や海岸線が入り組んだ自然豊かな地域です。

第三者の敷地に産業廃棄物が投棄されていたことから、おそらく以下のような場所が狙われたと考えられます。
- 人目につきにくい山林や農道:夜間の交通量が極端に少なく、目撃されるリスクが低い場所
- 管理が行き届いていない遊休地:所有者が頻繁に見回りに来ない土地
これらの場所は、不法投棄を行う悪質な業者にとって、まさに「犯罪の温床」となりやすい条件が揃っています。犯行の瞬間を目撃されるリスクが極めて低く、かつ投棄物が発見されるまでの時間を稼げるため、証拠隠滅に好都合だったからといえます。
なぜ不法投棄をしたのか
不法投棄をした最大の理由は、処分費用の削減です。
現在、産業廃棄物の処分費は高騰しており、とくに今回のような解体現場から排出される混合廃棄物(がれき類・木くずなど)は、分別に手間がかかるため処分場での受け入れ単価が高くなります。
正規のルートで産業廃棄物を処分すると数万円〜十数万円の費用がかかるため、その処分費用を抑える、あるいは利益として得る目的で、人目につかない場所へ不法に投棄した可能性が高いと考えられます。
不法投棄をした場合の罰則
1. 実行犯(下請け業者)への罰則
他人の土地に産業廃棄物を投棄した場合は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、第16条(不法投棄の禁止)および第14条(産業廃棄物処理業の許可)違反が問われる可能性があります。
これらに違反した場合は、第25条に定められた罰則の対象となります。
- 罰則:5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科。
また、法人(会社)の業務として行われた場合には、第32条(両罰規定)が適用され、本人だけでなく法人に対しても3億円以下の罰金が科される可能性があります。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
(投棄禁止)
第十六条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。(産業廃棄物処理業)
第十四条 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。罰則
第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一 第二十五条第一項第一号から第四号まで、第十二号、第十四号若しくは第十五号又は第二項 三億円以下の罰金刑
2. 元請け業者への罰則
不法投棄を直接行っていない場合であっても、関与の状況によっては第26条に基づき責任を問われることがあります。
- 罰則:3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、またはその併科。
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第二十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第六条の二第七項、第七条第十四項、第十二条第六項、第十二条の二第六項、第十四条第十六項又は第十四条の四第十六項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理を他人に委託した者
二 第九条の二、第十五条の二の七、第十九条の三(第十七条の二第三項において準用する場合を含む。)、第十九条の十第一項において読み替えて準用する第十九条の四第一項又は第十九条の十第二項において読み替えて準用する第十九条の五第一項の規定による命令に違反した者
三 第九条の五第一項(第十五条の四において読み替えて準用する場合を含む。)の規定に違反して、一般廃棄物処理施設又は産業廃棄物処理施設を譲り受け、又は借り受けた者
責任の所在はどうなるのか
元請け業者は「知っていた」のか?
元請け業者は「不法投棄される危険性を認識していた」、あるいは「法を守る気が最初からなかった」と断定できます。
推測される関係性
今回の報道内容によると、元請け業者は書面による正式な手続きを行わずに処理を委託しており、業界でいう「口約束による丸投げ」に近い状態だったと考えられます。
このようなケースでは、「安く処分してもらえるのであれば方法までは問わない」「マニフェスト(産業廃棄物管理票)を発行すると責任の所在が明確になるため避けたい」といった意識が働いていた可能性も否定できません。
さらに、2トンの産業廃棄物を、正規の処分ルートを持たない無許可業者へ依頼していたとすれば、元請け業者側も適正に処理されないおそれを認識していた可能性が高いと考えられます。
元請け業者が「知らなかった」で済まされない理由
たとえ元請け業者が「下請けが勝手に捨てるとは思わなかった」と主張しても、罪から逃れられません。
廃棄物処理法では、元請け業者(排出事業者)に対し、以下の排出事業者責任を定めています。
- 処理能力の確認:委託する業者が、その廃棄物を処理する許可を持っているか確認する義務
- 契約の締結:書面による委託契約を結ぶ義務
- マニフェストの交付:廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかを確認・管理する義務
出典:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
第十二条 7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
運営者 稲垣今回のケースでは、逮捕容疑にある通り「書面での手続きをしていない」時点でアウトです。
許可証の確認もせず、契約書も交わさず、マニフェストも交付していないのであれば、元請けは不法投棄の実行行為こそ行っていないものの、「不法投棄を誘発した張本人」として同等の社会的・法的責任を負うことになります。
まとめ
今回の事件は、解体工事で発生した産業廃棄物の処理を、正式な契約や手続きを行わないまま委託したことが発端となり、不法投棄へと発展したケースといえます。処分費用を抑える目的で不適切な業者へ依頼した結果、下請けだけでなく元請け業者も責任を問われる事態となりました。
解体工事を依頼する際は、価格の安さだけで判断するのではなく、産業廃棄物の処理方法を明確に説明できるか、適正な手続きを行っているかを確認することが重要です。
適正処理を徹底している解体業者を選ぶことが、不法投棄の防止だけでなく、施主自身のトラブル回避にもつながります。
なお、優良な解体業者の選び方については、次の記事にて詳しく解説していますのであわせてご覧ください。

