この記事の案内人・編集長
稲垣 瑞稀
- エムエム建材が発表した新サービス「STELLAR HUB」の全容
- 解体で出る金属スクラップの「トレーサビリティ(商品の生産から消費までの過程を追跡すること)」がなぜ重要なのか
- 新サービスが解体費用の見積もりや施主に与える具体的な影響
- 今後の解体業者選びで、施主が重要視すべきポイント
大手鉄鋼商社のエムエム建材が、金属スクラップの行方を追跡・管理する新サービスを3月から開始すると発表しました。
解体工事を依頼する方にとって、解体費用の見積もりや信頼できる業者選びの基準が変わるかもしれない重要なニュースです。
本記事では、この新サービスがなぜ今必要なのか、そして施主にとって具体的にどんなメリットや影響があるのかを専門家の視点でわかりやすく解説します。
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ニュースの概要
- 報道日:2026年2月13日
- 事案:大手鉄鋼商社の「エムエム建材」は、解体工事などで発生する金属スクラップの取引情報を追跡できる新たな資源循環プラットフォーム「STELLAR HUB(ステラ・ハブ)」のサービスを3月から開始すると発表しました。
エムエム建材は12日、解体工事などで発生する鉄を中心とした金属スクラップの取引情報が追跡できる資源循環プラットフォーム「STELLAR HUB(ステラ・ハブ)」のサービスを3月から開始すると発表した。金属スクラップの資源循環の透明性と信頼性を高めるため、サプライチェーン全体のデータを取得・共有。NTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)と共同してトレーサビリティ(追跡可能性)を確立させる。
引用:エムエム建材、金属スクラップのトレーサビリティ確立へ。新サービス来月開始・第三者認証で鋼材への展開も|Yahooニュース
このサービスは、スマートフォンアプリなどを活用し、金属スクラップが「どこで発生し」「誰が運び」「どこで加工されたか」といった流通過程(トレーサビリティ)を記録・管理するものです。
運営者 稲垣STELLAR HUBでは、金属スクラップの資源としての価値を確立することを目指しています。将来的にはこの仕組みを活用して、リサイクルされた鋼材のブランド化も視野に入れているそうです。
なぜ金属スクラップの追跡が必要なのか
なぜ今、STELLAR HUBのような、商品の生産から消費までの過程を追跡するサービスが必要とされているのでしょうか。考えられる理由は以下の3つです。
法律による義務化
2025年11月に新しい法律(再資源化事業等高度化法)が施行されました。これにより、建物の解体で出たゴミを単に処理するだけでなく、「資源としてどう有効活用したか」を証明することが求められるようになりました。
(廃棄物処分業者の責務)
引用:資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律|e-Gov法令検索
第六条 廃棄物処分業者は、その再資源化事業等の高度化及び再資源化の実施に必要な措置を講ずるよう努めるとともに、再資源化の実施の状況の開示に努めなければならない。
「電気炉」での鉄作りにおける品質確保
CO2排出量を減らすための取り組みとして、従来の「高炉(石炭を使用)」から、鉄くずを電気で溶かす「電気炉」への転換が進んでいます。電気炉で高品質な鉄を作るには、銅などの不純物が混ざっていない「素性の確かな鉄くず」が必要です。そのため、どこで解体され、どう分別されたかというデータが重要になります。
不透明な取引の解消
これまで解体現場から処分場までの廃棄物の流れは、紙の伝票や電話でのやり取りが主で不透明な部分がありました。デジタルで管理することで、不法投棄や異物の混入を防ぐ狙いがあります。
NTTドコモビジネスとの連携内容
鉄鋼商社のエムエム建材は、システム開発と通信環境の確保のためにNTTドコモビジネスと協力しています。
データ形式の統一
解体業者、運送業者、処分場などがそれぞれ異なる方法で記録していたデータを、NTTドコモビジネスのシステム(CEMPF)を使って統一し、一括管理できるようにします。

画像引用:金属スクラップの資源循環トレーサビリティを行うプラットフォーム「STELLAR HUB™」サービス提供を開始|NTTドコモビジネス
現場からの通信環境の提供
解体現場はWi-Fiなどの設備がないことが多く、粉塵も舞う過酷な環境です。そのため、携帯電話の通信網(5G/LTE)を使い、スマートフォンや重機のセンサーから遅延なくデータを送信できる仕組みを整えています。
解体工事を依頼する施主への影響
この新しい仕組みは、解体工事を発注する施主にとってどのような影響をもたらすのでしょうか。そのメリットと注意すべき点、2つの側面から解説します。
メリット
- 証明による安心感
解体工事で出た廃材の処理がデータで残るため、業者が適正な処理を行い不法投棄などをしていないかが明確になります。さらに、愛着ある家の一部だった金属がどのようにリサイクルされ、新しい製品へと生まれ変わるのかを追跡できる「透明性」は安心感につながります。 - 買取価格上昇の可能性
出どころが確かで不純物の少ない金属スクラップは高く評価される傾向にあります。STELLAR HUBの導入により透明性が担保されることで、従来よりも有利な条件で買い取られ、結果として解体費用の負担軽減につながるかもしれません。
注意点
- 業者の限定
サービス開始当初は、このシステムに対応できるIT機器の扱いに慣れた解体業者しか選べない可能性があります。解体業者によって見積もり金額や対応に差が出ることが予想されます。 - コストと工期の増加
システム利用料や、現場での細かい分別作業が必要になるため、解体費用が上がったり工事期間が延びたりする可能性があります。
運営者 稲垣今後、STELLAR HUBを導入した業者へ依頼する際は、その手間やコストが見積もりに反映される可能性があるため注意が必要です。ただし、施主として重視すべきなのは、金額の安さだけではなく業者が資源リサイクルにどれだけ真摯に取り組んでいるかという点です。その選択が結果として経済的かつ環境的なメリットにつながると思っています。
サービスの今後の展開
2026年3月のサービス開始以降、以下のような展開が計画されています。
最初はエムエム建材の取引先を中心に始めますが、段階的に他の商社や業者も利用できる業界共通のシステムにしていく予定です。
将来的には「来月この場所でこれくらいの鉄くずが出る」という情報を事前に公開し、鉄鋼メーカーがそれを予約購入できる機能の実装を目指しています。これにより、資源の需給調整を効率化します。
欧州などで進む環境規制に対応し、日本の鉄鋼製品が輸出される際、環境に配慮して作られた製品であることをデータで証明できるようにします。
FAQ
どのような企業が対象ですか?
金属スクラップを出す建設(解体)現場や工場、それを回収・加工する業者、鉄を作るメーカー、そしてその鉄製品を使う企業が対象です。
データの信頼性はどのように守られますか?
NTTドコモビジネスのシステムを使い、関係する企業全体でデータをまとめて管理します。
また、外部の機関による認証を受ける予定で、データの正しさを客観的に保証できるようにします。
鉄以外の金属(銅やアルミニウムなど)も対象になりますか?
当面は鉄が中心ですが、将来的には銅やアルミニウムなど、他の金属への対応も検討しています。
まとめ
今回のニュースが解体業界と施主に与える影響について、要点をまとめます。
- 価値の転換:エムエム建材の新サービスにより、解体で出る金属スクラップは「ゴミ」から「資源」へと価値が変わります。
- 施主のメリット:スクラップの価値が正当に評価されることで買取価格が上昇し、解体費用を抑えられる可能性があります。
- 業界の進化:解体業界は、単なる「壊す工事」から、品質の良い資源を供給する「資源を生み出す工事」へと進化しつつあります。
- 新たな判断基準:今後の業者選びでは、価格だけでなく資源循環への取り組み姿勢やトレーサビリティへの対応が重要な判断基準の一つとなります。
これからの解体工事は、安く安全に壊すだけでなく「いかにして価値ある資源を次世代に残すか」という視点が重要になります。この変化を正しく理解し未来を見据えた業者選びをすることが、あなたの資産を守ることや持続可能な社会へ貢献することにつながります。
